第5話 返せるもの、高校入学前日、後半
うーんー!!
体を起こした顔は2枚目でどこかの俳優かホストを思わせる男性が寝袋から出てくる。
「うん?見つめられると照れるんだけどな」
見つめてたら変なことを言い出した。女性だったら黄色い声で弁解するんだけど、とりあえず無視する。
「鉄心くんおひさー降りよ降りよー」
凛花さんの声に導かれるまま時雨さんを無視して、洋平さんにお礼を言い駐車場に出る。
「で、みんな集結してどうしたんですか?」
「あーもう私と鉄心くんのデートでしょう?忘れたの」
「デートって洋平さんたちは?」
約束もしてないしもう30超えてることは言わないで置いた。目元がキツくなったから。
「あーあれねボディガードよ」
「男3人付きとは物騒ですね」
「ボディガード?俺は女の子に守られて生きてるがその裏の顔は自宅警備員だから任せて」
へらへら笑いながら時雨さんが車から出てくる
普通にヒモじゃん、言ってて悲しくならないのかな時雨さん。
「お?時給とか出るなら俺やるぞ」
そういうのは洋平さん
「はぁー今日何しに来たかサプライズはわかりますけど困惑してますよ鉄心くんが」
光秀さんが話を切るように言う
「サプライズですか?」
「そう、みんな1人を除いては仕事があるので前日にここにくることになりました」
「俺には愛するハニーがいるんだそ?」
時雨さんが答え冷たい視線を受けてもへらへら笑ってる。本当にメンタルおばけな人だ。
ここにいる人、1人遅れているがそういっちゃんの友達で俺と特別歳も近くなくはないが、それでも友人の中では若い人達だろう、
どういう経緯で仲良くなったかは聞く人には聞いたが全員そういっちゃんに恩義を感じてる人たちなのは間違いない。
「そそ、思いで作りと高校入学祝いのプレゼント選び、俺はドライブに誘って目的地では俺たちと回る。高校の青春は一瞬で一生モンだからな」
友達ができたあとは遊びに誘ってみろよと言葉は続き洋平さんは笑ってる。毎回ではなく、人も違うが1人で暮らしてる俺に時折りこうやって遊びに連れていってくれたり、サプライズと称して色んなことを教えてくれる。楽しいだけじゃなく時には相談なども乗ってくれる。
「そうだね高校といえば恋人だもんね余り前みたいに会えなくなるかもだもんね凛花寂しいわ」
と凛花さん
「友人だからな鉄心くんは、宗一さんの息子でもあるが仕事や進学など今後どうするかも決めたほうがいいぞ準備は大切だ」
と光秀さん
「女を忘れさせるのは女だけ、もし女性関係で困ったことがあったら話聞くよ」
とクズなこと言ってるのが時雨さん
「沢山の転機があるだろからな高校は、あ!沢山の天気といえば今日は快晴!買い物日和だな!ははは
」
とバカなこと言ってる洋平さん
「遅くなった、プレゼントを買いに行くのはこれからか?」
そんな和の外から声が聞こえる。かぶっていたヘルメットを取り、顔を見せるのは鍛え上げられた筋肉、髪は目が隠れるほどの長さ、顔はどこまでもボーとしている優男風のイケメンに見えなくもない顔の高島さん下の名前は誰も知らないが声をかけてきた。
「高島遅いぞー、乗せてやるて言ったのに」
洋平さんがブーブ言う。
「風を浴びたくてな……それに長野は空気がうまい……プレゼント買ったあとおやき買っていいか……それかおやきプレゼントで欲しい……?」
俺を単調な口調でボーとした瞳の高島さんが聞いてくる。長野といえばおやきで有名なのは知ってるがそこまでか
「ささみんな集まったところで行くよーアウトレットアウトレット!久しぶりだねここにくるの」
「え?とみんな来たことがあるんですか?」
「宗一さんに連れられてな今はないと思うがあの人別荘借りて、小さい船も持っててよく釣りとかここ見にきたんだよ」
どこか懐かしい目をしてる洋平さん
「あととっておきの場所!」
と笑顔の凛花さん
「まだ酒とか飲んで冗談が言えてた頃鉄心が高校生になったら軽井沢連れてきて好きなもん買わせてやるんだとかな」
微笑みながら答えてくれる光秀さん
「俺きたことないおやき土産でもらったくらい」
と高島さん
本当に不思議な縁、この人たちもそういっちゃんつながりで年齢も近いが学校は一緒だったとかではなく、出身地もみんな違う。宗一さん主催の飲み会や集まりの時に知り合ったとのことだった。
それからアウトレットを順番に見て回ることになり、みんなからプレゼントをもらったその話についてはもらったものが生きてくる時に話をする。
お昼をみんなで食べ、まだ見てないところを回って談話したり、転勤の子という流行りの映画を見たりなどし、洋平さんの車に乗った俺はどこかさらに長野の山奥へ行っていた。
「えーとどこに行くんですか洋平さん」
疑問に思い聞く
「あーすごい景色のいい場所天気もいいしきっと綺麗だぞ」
そう言われた直後後ろから目隠しをされる。
「そーだよサプライズだから目隠ししていこうね」
甘い洗剤の匂いがする腕が視界を塞ぐ。
「えーといつまでこれで」
何回もカーブする道を降りながら聞く
「いつまでも♡」
男の甘い声は同性からしたらきめえと思いながらそのまま揺れて車は止まる。
「ふぁーついたね鉄心くんっあれ?何してるの時雨」
先についてた凛花さんの声。
「背後霊かな?サプライズにと思って」
バカねぇなどと、車を降りた後も目隠ししてる時雨さんと会話してる。
「もういいでしょ話しなよ」
コンクリートの足場から芝生のような感触に変わり そうだねとじっとりしてきた手から解放される。
視界が光に順応するのに時間がかかるが目の前に広がる景色に素直な気持ちが言葉に出る。
「綺麗だ」
そこには町の中にぽっかり空いた池が、夕日が落ちるのと相まって幻想的な光景になっている。
「綺麗でしょ?宗一さんがね、教えてくれたんだ私が自暴自棄になってた時にね、こんな綺麗な景色あるんだって教えてくれた言葉もそうだけど目で心で本当に綺麗なものて何かを教えてくれたの」
惚れそうだったわと凛花さん、多分年齢40ぐらい差があるけど、おじさまとか言ってるし。
「きっと鉄心くんにも見せたかったんだろうな宗一さんは感動を共有したい人だから、自分が感動したものを誰かと見に行くのが好きな人だった」
「本当にすごいです。まるであんたの名前はみたい」
ツンデレなヒロインとツンツンな主人公が入れ替わるツンツンしていた話だが転勤の子の前作で世界中で大ヒットした作品だ。
そうなんだよでも宗一さんの方が先なとか、作者が長野出身なんじゃなかったけど、おやき売り切れて閉まってたなど後からきた高島さんの声が聞こえる。
プレゼントももらって、こんな綺麗な景色も見せてもらって、それ以前に小学生の時や中学の時親友が亡くなった時仕事を休んでまで励ましてくれた人たちこの人達に何が返せるんだろう。
「何が返せるんだろう」
最後の方は、思いが口に出てしまっていた。
みんな振り返り目を合わせ光秀さんが答える。
「何も返さなくていいんだよ、損得で動かないのが友人」
「いつかわしの見た風景や経験、もらったものを誰かに伝えてやってほしい」
「わしの欲しいものは目に見えん、だが紆余曲折し合ってそれが見える時がある。その時心の奥底で僅かでも誰かわしのことを覚えてくれてたらそれ以上の喜びはない。わしの欲しいものを誰か見つけてくれるから」
光秀さん、洋平さん、時雨さんが答えてくれる。
「……宗一さんが繋げてくれた縁だな。大切な友人の……息子を大切に思うのは普通のこと」
と高島さん
「そーだよ!まだまだね!あそこに無料の足湯あるし、山に登る途中にねよくcmで使われる道路あるし冬はスケートも楽しいんだからっ」
と凛花さん
「俺たちはこのメンバーでこの景色を見れたことが本当に嬉しい、この場にいてくれてありがとうな鉄心」
みんなの言葉を代弁して洋平さんが、何も言えず泣きそうな俺に伝えてくれる。まるでそういっちゃんの言葉みたいでそこから涙腺が崩壊した。
そこから慰められ、足湯を満喫したり夕ご飯をみんなで食べたりしていたらすっかり夜になり、寝ていた俺は気づけば家の朝いた部屋で寝ていた。
まるで夢見たいだったが、周りに置いてあるプレゼントと、ケータイのLINEにある。「楽しかったよまた行こうねー」「今度は釣りだな」などグループクズ仲間に沢山のメッセージが残っていて夢じゃないんだと思った。送られた写真を見てると、顔を落書きされた少年と時雨さんがピースしている写真が最後に載ってる。
まさかと思いながら無言でちゅんちゅんと小鳥が囀る朝、鏡を見て1人で叫ぶ。
「あのクズがぁあああ!!」
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