第4話 残したもの、高校入学前日、前半
ブルルルシュー
明日入学式を迎える朝、車が家の目の前に止まった音がする。
「邪魔するぞー」
玄関とは違う縁側から空いている窓に手をかける音がし、ギシギシと廊下から音がし部屋の前に止まる。
「おはよういい朝だな」
ファァとあくびをし布団から起こした体で入ってきた人を見る。
ツーブロックに黒く焼けた肌、漁師のような笑顔の洋平さんがいた。
「朝て言っても日も出てないんですけど玄関から入ってきて下さいよ」
今の時刻は4時少し前、普通の人は起きてない時間だ。普通の人は
「釣りはな場所取りが大事なんだよー宗さんからもいつでもドアは開かれてるとかなんとかって」
言葉の通りこの人は宗一さんの友達、友達と言っても洋平さんは30代後半だから年齢はかなり離れているがどこで知り合ったか分からないが、そういっちゃんが施設に自分で入ってからよく顔を見せにきて釣りやドライブに誘ってくれてる。いい人だ。けど
「朝が早すぎるんですよ洋平さん」
「あとあそこは立て付け悪くて閉まらないんですそれ知ってて入ってきてるでしょ?」
「男はつまらんことは気にするな俺もよく宗さんに拉致されて気がつけば軽井沢で釣りしてたわ」
それはそれですごいな。
「ははは、じゃあ行くぞ?」
着替えと言う前に立派な腕に包まれて車の中で今コーヒーと、もらったサンドイッチを食べている。
「はぁー拉致ですよ未成年ですよ、強引ですよ」
ふざけながら気だるそうに聞いてみる。
「惚れたか?だが男に生まれたことが運の尽き、いや俺に捕まったことが運の尽きだな」
笑いながら冗談を言ってくる、別にこの人のこういうノリは嫌いじゃない。独身が何か言ってるけど
「独身がとか思ったのか?俺は1人身が好きなんだよツレがいない分お前とこうやって遊べるし釣りにもいける」
心読むなよと思いながら車に揺れる。
「こんな子ども連れて楽しいですか」
眠さが残りながら恨み文句で答えてみる。
「子どもというよりダチだよお前は、寝起きが悪いとこもかわいいぞははは」
強引に左手で頭を撫でてくる。だめだこりゃと思いながら行き先を聞いてみる。
「でどこ行くんですか?」
「うん、明日入学式だろ?そわそわしてるかなってちょっとドライブに誘ったそれだけだ」
急に真面目になって話したかと思ったがそれは
「ノープランなんですか?はぁー」
適当なのは知ってるが、行き場所を決めてないらしい。
「俺はドライブに誘っただけだ、でも行く場所は決まってる」
憎まれ口でも聞いてやろうと横顔を見ると真剣な顔をしてるのでそれ以上は何も言わなかった。
そのまま高速道路に乗って、長野行きで降りる。
「軽井沢に拉致されたとか言ってたけど本当に長野とは…」
すっかり日も上り人も道に増えてきてるのが見える。
すると、軽井沢と書かれたアウトレットの駐車場で止まる。
「着いたぞあいつらはいないな全く集合時間を守れないとは」
「あの、ここで何するんですか?」
「お!きたかきたか」
俺が答える前に洋平さんが窓を開ける。
「なぁ洋平よう、まだ30分ぐらい早いんだけど」
「そう言うな光秀、それに凛花も来たか、あとは」
すごく紳士的な格好のインテリイケメンのような光秀さん、まだ眠そうな色気ただようお姉さんの凛花
「高島は10時頃になると連絡きたぞ、時雨は?あいつまたどこかの女のところでも」
「うううん、おはよーついた洋平?」
「後ろの席はシートが横倒しになって釣り道具やらキャンプ用品やらある中の寝袋がしゃべりだした」
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