第2話 小学生編2女は度胸、男は度胸と愛嬌

「あー山崎くんこんにちは」

大きな青い瞳と白い肌屈託ない笑顔で俺に挨拶をしてくれる葵ちゃん。


「こんにちは葵ちゃん」

俺も気さくに話せる相手に不思議と笑顔になる。

先ほどの大人たちと比べて幾分か気兼ねなく話せる相手のため学校のことや母親がいなくなったことなどもその時はたわいなく話して仲を深めていった。


「それでも御幸がね!」

コンコンと話している間ドアがノックされドアが開き先ほどの親戚の1人から声をかけられる。


「鉄心くんきてくれるかな」

すごく高い目線で、めんどくさそうにやや怒っているような口調で声をかけられる。コクリと頷き彼についていく


先ほどの居間には職員と親戚一同がソファーに座りこちらを見ている。


「鉄心くん君はここにいる誰かのおうちがいいかな?それとも施設に行くのはどう?」

連れてきてくれた大人が聞く。


「今いた施設じゃなくてお母さんがもしも帰ってくるかも知れないだろう?それまで預かってくれる家見たいなものだよ」

何をいってるのかわからない俺に、言葉を噛み砕いて説明してくれる。だが親戚の視線と、玄関前の言葉から厄介者扱いされているのは子どもながらに理解できた。 


「鉄心くん!うちに来ればいいじゃん!」

考えて下を向いていると後ろから声が聞こえる。

「あれ?葵ちゃんそれに名前」

「お父さんが呼んで私が呼んじゃだめなの?」

「いやそうじゃなくて」 

「そうだぞ葵部屋から出てくるなお前葵を部屋に」

母親だろうか葵ちゃんを抱き上げ部屋へと連れて行こうとする。

「なんで鉄心くんそこにいるのに!ねぇ!!」

そのまま部屋へと連れてかれていった。


「ごほん」

親戚の誰かが咳払いをする。

「宮崎とこの子どもも気に入ってるだろうしあなたのうちで引き取るのはどうですか?」

「そうだな施設は可哀想じゃないか」

など顔も知らない親戚達から言葉が聞こえてくる。

「私は姉の子は引き取れませんあなた達も仲が悪いのは知ってるでしょ?」

「それでもねぇー学校も一緒で顔合わせくらいしてるし戻ってきた時にすぐに動けるのはあなたでしょ?」

「お言葉ですが、あなたの家も子どもが巣立ち夫婦とも働いているから経験もお金もあるのでは?うちは事業も立ち上げたばかりで娘も色々お金がかかるんです」

などと鉄心がいることもお構いなしに言い争いになる。きっといない時の光景なのだろう職員も頭に手を乗せ首を振っている。

「だから!無理なんですよ」

「何が無理なんですか!」

「それより母親はどこにいったのよ!」

さらに熱をまし愚痴り合いになっている。


その時


ピンポーン


あれだけヒートアップしていた場が静寂に満たされる。

 

「ちょっと出てきます」

そう言い残し葵ちゃんのお父さんが玄関へと向かう。


「………………」

静寂の中玄関先で誰かと話す声が聞こえる。少しして


「じゃまするぞ」

そう言い入ってきた人は、白髪混じりのオールバック、ガタイが良くラグビーをやっていたような180センチは超える体。

一重の鋭い目つきに、刻まれた皺が貫禄を出している。


「外にも聞こえる汚い声だったの、子どももいる場で大の大人が恥ずかしくないのか」

響く低音が静寂の中耳に残る。

周りを見渡し反論するのかと思ったら誰も反応しない。みんな一同めを伏せている。


「呼ばれきてみれば…話は玄関先から聞こえとった静江の子よお前うちにくるか?」

周囲を見てから言葉を発し、俺の目線になって優しい声をかけてくれる。


俺が突然のことで返答に迷っていると


「そ、それがいいですね」

「宗一さんのところなら」

親戚の1人と葵の父がそれに乗っかるように言う


「だまれ、お前らに聞いとらん。女は責任を追いたくない生き物なのは知っとる。だが口には気をつけろ何がいいのか言えるなら聞かせて見るがいい」

親戚の1人は反論しない。


「フン」


「悠次郎も男なら責任を取り預かるくらいのことは言えんのか、お前と姉とのことは知っとるだが子どもにそのことまで押し付けるな!」

その通りですと、顔を伏せながら呟く。


「それでくるのか来ないのか、男ならハッキリせんといけない時もある。それが今だ。時間をやるから気持ちを伝えてみろ、他の奴が言うのと自分で言うのでは言葉の価値が違うものだ」


それから数分迷いその中でも姿勢を低くして待ってくれている相手に伝える。

「僕をあなたの家に連れていってください」

すると皺だらけの怖い顔が笑顔になり


「よく言えたお前はできる子じゃの、ここにいるどの大人よりも偉いははは」

豪快に笑いだした。

その後職員と話すといい、俺は先ほどまでいた部屋へ行くよう指示される。


「あぅ鉄心くんうぅ聞いてよお母さんがね大人の話に子どもが口を出すなって!」

部屋に入り泣いている葵ちゃんの背中をさすりながら先ほどの疑問を聞いてみる

「それで葵ちゃんはなんで来てくれたのさっき」 


「うう、だって鉄心くんだって子どもだよ?私なら心細いもん」

「それにすごく悲しい顔してたそんな顔するなら住めばいいのにってそれなのにうぅええーん」

子どもながらクラスでもあまり話さず、さっき仲良くなった相手のことを本気で思ってくれていると感じたらそのあまりの心の綺麗さに不思議と涙が出てきた。


「うぅ、葵ちゃんありがとう本当にありがとう」

「なんで鉄心くんまでないてるの?ぅう」

それから2人で泣いていた。


泣き止み少しした後

「鉄心くんはどこのお家にいくの?」

「うん、宗一さんて人の家にいくらしくて」

「あ!宗一おじさんのところに行くの?なら今度遊びに行くね」 

「知ってるの??」

「うん!山のところで1人がで住んでるのお年玉と一緒にハガキくれてほら!」

「女は度胸、男は度胸と愛嬌」

そう書かれ飾られているハガキを見せてくれる。

子どもながらに何か変じゃないかと思いながらも話は弾んだ、その中で聞いたところによると今から行く家は

山にある大きな平家。宗一さんは若い頃に妻を亡くし1人暮らし、子どもには時には厳しく優しいが大人にはものすごく怖いらしい。 


「大丈夫かな?俺」

「大丈夫だよ!今度うちに泊まりにきなよ親戚なんでしょ?お母さん見つからなくて寂しいだろうしいっぱい遊ぼーよ!」 


それから少しして話が終わったのか宗一さんが部屋に入ってきて葵ちゃんとも再度話し親戚同士の会話になり、葵ちゃん家にも今度遊びに来ると約束、葵ちゃんのパパも葵ちゃんの熱意とパパ嫌いになると言う言葉が終止符となりみんなで笑いつつも、お開きとなり


施設へ荷物を取りに行くなど少し手続きをした後すっかり夜になっていたと記憶しているが俺はこれから自分が過ごす新しい家へと着いた。 


――――――――――――――――――――

作者余談欄

いつも読んでくださりありがとうございます!

よければハート等貰えると嬉しいですっ


御幸の名前は最後に伏線を回収していく予定です。

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