第9話 令和3年10月野菜の生育状況及び価格見通しについて

*********


野菜の生育状況及び価格見通し(令和3年10月)について


目的

産地の出荷判断と消費者の購買行動の最適化。

野菜の供給及び価格の安定を図る。



方法

農林水産省による東京都中央卸売市場への聞き取り。

14品目の野菜の生育状況、出荷及び価格見通し。

東京都中央卸売市場外への流通物も同様の傾向。



◎今月のおすすめ


にんじん(10月前半)が、お買い得の見込みです!!



◎現在の生育状況


品目

・生育状況



根菜類(だいこん及びにんじん)

・だいこん、にんじんは生育が順調。



葉茎菜類(はくさい、キャベツ等)

・はくさいは生育が停滞傾向。

・キャベツ、ねぎは生育が順調。

・ほうれんそう、レタスは生育が遅延傾向。



果菜類(きゅうり、なす等)

・きゅうり、なすは生育が遅延傾向。

・トマト、ピーマンは生育が順調。



土物類(ばれいしょ、さといも及びたまねぎ)

・ばれいしょ、たまねぎは小玉傾向。

・さといもは、生育が順調。




◎今後の生育、出荷及び価格見通し


注)見方について


主産地( )書きは令和2年10月の入荷シェア

出荷見通しは(平年(直近5か年平均)比)

上・出荷見通し 10月前半/後半

下・価格見通し 10月前半/後半

「平年並み」とは平年との比率が80%以上、120%未満のこと



品目  : だいこん

主産地 : 青森(40%)北海道(27%)千葉(19%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : にんじん

主産地 : 北海道(89%)

出荷  : 平年下回る/平年並み

価格  : 安値水準/平年並み



品目  : はくさい

主産地 : 長野(79%)茨城(13%)

出荷  : 平年を下回る/平年並み

価格  : 高値水準/平年並み



品目  : キャベツ

主産地 : 群馬(59%)岩手(14%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : ほうれんそう

主産地 : 群馬(45%)茨城(21%)栃木(14%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : ねぎ

主産地 : 北海道(20%)青森(20%)秋田(18%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : レタス

主産地 : 茨城(62%)長野(23%)

出荷  : 平年を下回る/平年並み

価格  : 高値水準/平年並み



品目  : きゅうり

主産地 : 群馬(30%)埼玉(24%)福島(13%)茨城(10%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : なす

主産地 : 高知(34%)栃木(20%)群馬(17%)茨城(14%)

出荷  : 平年を下回る/平年並み

価格  : 高値水準/平年並み



品目  : トマト

主産地 : 北海道(16%)千葉(13%)福島(12%)熊本(12%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : ピーマン

主産地 : 茨城(47%)岩手(24%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : ばれいしょ

主産地 : 北海道(100%)

出荷  : 平年を下回る/平年を下回る

価格  : 高値水準/高値水準



品目  : さといも

主産地 : 埼玉(54%)千葉(13%)

出荷  : 平年並み/平年並み

価格  : 平年並み/平年並み



品目  : たまねぎ

主産地 : 北海道(98%)

出荷  : 平年を下回る/平年を下回る

価格  : 高値水準/高値水準



野菜の生育状況及び価格見通し(令和3年10月)について

https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai_zyukyu/attach/pdf/index-117.pdf



「へいタクちゃん! これってどうなのYO!」

「んー、今月の育成状況と価格の見通しの話?」

 野菜の生育状況及び価格見通しの令和3年9月分を見たこと、そして大将と一緒にデータを収集・分析したことを伝え、でも結局よくわからなかったので餅は餅屋、野菜のことは農家に聞けというわけで卓の元を訪れたのだった。


「にんじんがお買い得かぁ……」

「やっぱりウマ育成ゲームの影響かな!」

「え、そんなのあるんだ」

「にんじんハンバーグって言ってにんじんを丸々一本ハンバーグに突き刺す料理があるぞ」

「一本でもにんじん……なんちゃって」

「おっとタクちゃんからコテコテのギャグが飛び出すとは」

「はわわ、忘れてっ」

「忘れてちょうだいってのが持ちネタの漫才師が昔いたな」

 松竹だったなような気が。

 あとどうせスルーされるからと大河はこの時言わなかったが、ウマ育成ゲームの新シナリオではにんじんBBQが行われているため網の上一面ににんじんが焼かれている光景も描かれている。

 もちろんにんじんの価格には影響しない。


「うーん、どちらかというと『ばれいしょ』と『たまねぎ』の高値水準が気になるなぁ。にんじんも含めて、どれもほぼ北海道産が占めてるし」

「確、カ、に……。同じ北海道でも広いから一概には言えないけど、どれも根菜類だし、土の中で育つから作り方も似たような感じだし。方やにんじんは豊作で、じゃがいもや玉ねぎは小玉傾向で不作ってのはどうもなぁ」


 今更ながらの話だが、ここでいう『ばれいしょ』とはいわゆるじゃがいも全般のことで、出荷量で言えばメークインが多い。

 野菜の名称に関しては「正式名称として一応こっちが採用されている」くらいの感覚で、きくなと春菊、大葉と青じそ、スナップえんどうとスナックえんどうみたいなものだと思えばいい。

 なすとなすび、かぶとかぶらは京言葉とか諸説あるので気にしないでいい。

 言われたら余計と気になる?

 今川焼きの名称とかお好み焼き対広島焼きとか、食べ物は奥が深い。



「少し整理してみようか。条件は違うけど、東京と大阪の市場を比べてみよう」



*********


東京都中央卸売市場    大阪市中央卸売市場


令和2年10月の産地     21/09/30の産地


品目  : だいこん      ○

青森(40%)          北海道

北海道(27%)         岩手県

千葉(19%)          青森県


品目  : にんじん       ○

北海道(89%)         北海道


品目  : はくさい       ○

長野(79%)          長野県


品目  : キャベツ       ○

群馬(59%)          群馬県

岩手(14%)          長野県



品目  : ほうれんそう    ×

群馬(45%)          岐阜県

茨城(21%)          茨城県

栃木(14%)          北海道


品目  : ねぎ        ○

北海道(20%)         北海道(64%)

青森(20%)          鳥取県(8%)

秋田(18%)          兵庫県(8%)


品目  : レタス       ○

茨城(62%)          長野県(90%)

長野(23%)          茨城県(8%)

              群馬県(2%)


品目  : きゅうり      ×

群馬(30%)          福島県

埼玉(24%)          北海道

福島(13%)          宮崎県


品目  : なす        ×

高知(34%)          山梨県(39%)

栃木(20%)          徳島県(25%)

群馬(17%)          高知県(11%)


品目  : トマト       ○

北海道(16%)         北海道(45%)

千葉(13%)          岐阜県(25%)

福島(12%)          群馬県(9%)


品目  : ピーマン      ×

茨城(47%)          青森県

岩手(24%)          兵庫県


品目  : ばれいしょ     ○

北海道(100%)         北海道


品目  : さといも      ×

埼玉(54%)          愛媛県

千葉(13%)          宮崎県


品目  : たまねぎ      ×

北海道(98%)         北海道(67%)

              兵庫県(33%)


大阪市中央卸売市場の割合は気になるものだけ調査して記載。


産地における割合(依存度)が高い場合は「○」、低ければ「×」

例)トマトは東京の場合、北海道が16%に対し、大阪は45%なので産地依存度が高い

たまねぎは東京が北海道98%に対し、大阪は北海道67%と、東京ほど依存しておらず

産地の育成状況を参考にしないため「×」とする。



「これは野菜の産地の話だな」

「そゆこと」

「○と×の意味はどうなってるんだ?」

「例えばさっきの話にもあった『ばれいしょ』は東京大阪どちらも北海道から仕入れてるよね。だから東京の市場における仕入先の育成状況を、そのまま大阪に当てはめても問題ない、ってこと」

「なるほど。同じ仕入先だから、天候不順があれば全国的に供給が減って価格が上がるって話になるんだな」

「そうだよー。んで、きゅうりは東京が群馬が1位、埼玉が2位、福島が3位、と続いているのに対して大阪は福島が1位、次いで北海道、宮崎と続いてるよね。つまり東京におけるきゅうりの育成状況とは群馬や埼玉のことで、福島や北海道、宮崎については重視していない。だから関西に出回るきゅうりは説明どおりに例年並みとは限らない、ってことで×を付けてるんだ」

「なるほど……ってことは、気になるのは玉ねぎだな……」


 たまねぎについては、大阪の場合は北海道が全体の2/3、兵庫が1/3を占めている。

 近畿圏の人間にとっては常識であるが、玉ねぎといえば淡路島である。

 淡路島には玉ねぎのクレーンゲームまで存在する。

 1回500円くらい。普通に買った方が安いじゃねぇかというツッコミはなしだ。


「これは主観的な話だけど。北海道産のたまねぎは飲食店へ卸されて、兵庫県産のたまねぎは店頭に並んでいる感じがするね。そして北海道産は確かにちょっと小ぶりだ」

「野菜は重さが基準って話だったよな。つまり北海道産は小さな玉をたくさん寄せ集めて売ってるわけだ」

「そう。だけど基本的に小さな玉の寄せ集めって売れないんだ。小さくても売れるのってみかんときゅうりくらいじゃない? よく知らないけど」

「関西人風に言うと「知らんけど」ってやつな」



「ふむ、なんか色々と話してみたけど、わかったようなわからんような……」

「とりあえず、今月はにんじんが本当に安いのかどうかを後で検証してみたらいいんじゃない?」

「それはやる予定だ。後はどっちも高値水準になってるばれいしょとたまねぎだな。先月も似たような感じの推移って書いてあった気がする」

 ちなみに先月はばれいしょが高値水準、たまねぎは平年並みである。



「うおお、やることが増えてきたな。思った以上に奥が深いかもしれん」

「相場は経験と知識、そして最後はやっぱり己のカンってよく言うよね」

「俺のカンはまだあと3つ残している……」

「じゃあそれロンで」

「ギャーウラ乗ったーっ!?」

 美味しい話には裏がある……知らんけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る