第4話 9月2日の市況を解説します

「うーん。何から伝えればいいのか」

「わからないまま時は流れて」

 浮かんでは、消えていく。

 ――ありふれたトマトだけ。


「水に沈むトマトって甘いわけじゃなくって、ただ中身が詰まってるだけだよ」

「まぁ、美味しいトマトって詰まってるから沈むわな」

 iPadに画面が表示されるまでの間、用水路でトマトを洗いながらそんな会話を続けていた。

 ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

 このトマトとも、合縁奇縁、一期一会である。



*********


大阪市 市況情報

https://www.city.osaka.lg.jp/shijo/category/3051-1-5-0-0-0-0-0-0-0.html


>本場・東部市場

2021年1月8日


>南港市場

2021年9月某日


>大阪府中央卸売市場

2021年1月8日



 更新が行われていないような日付となっているが、各ページ毎日更新されているので安心されたし。

 一番上の、



>本場・東部市場



 から、大阪市中央卸売市場の市況情報のページに飛ぶ。

 さらに一番上の『日報 種類別取扱高』から移動する。

 そこには本場・東部を選ぶラジオボタンと、野菜・果実・水産物の種類を選ぶセレクトボックス、その下には日付を選択するプルダウンメニューがあって、『一日の取扱高を、野菜、果実等の種類別/品目別に表示します。』とある。



「とりあえず2021年9月2日(木)の野菜を見よっか~」

「色々と聞きたいんだけど、いいか」

「どうぞ」


「じゃあまず、なんで9月1日じゃなくて2日?」

「それはねー、ただ市場がお休みだから」

 単純な理由だった。


「市場って基本的には『水曜・日曜・祝祭日』は休みなんだよ。だからその日は野菜を持ち込めないんだ」

「なるほど……確かに日曜は休みのイメージあるけど、水曜もか」

「昔ながらの食堂や料亭なんかは、市場の休みに合わせて定休日を設けているところも多いんだ~。月曜や木曜が休みのお店も、同じような理由だね。市場が休みで仕入れられない、だからお休みって感じ」

「はえー」


「では次の質問どうぞ」

新都ニート新聞の出雲です。これから閲覧するデータは『大阪市中央卸売市場』のものらしいのですが、上記を見る限り、大阪中央卸売市場なるものも存在しているようです。違いは一体なんでしょうか。あと『本場・東部市場』という用語に関しても説明願います!」


「えっと~、大阪って府と市が仲悪くって、昔からそれぞれで同じ機関を持ってたりするんだよね。大阪府立大学と大阪市立大学とか、図書館もそうだね。美術館とかコンサート会場とか、二重行政が云々ってお話だけど、それは置いといて」

「絶対ややこしくなるから正解」


「まず『本場ほんじょう・東部市場しじょう』ってのは場所が違うだけ。本店と東支店と言い換えても良いかもね。もう一箇所、南支店こと南港市場は主に肉を扱っているから、今回は説明を省くね。そして府立と市立の違いだけど、大阪市中央卸売市場は当然大阪市内にあるよね。だけど大阪府中央卸売市場は茨木市にあるんだ」

「イバラギ?」

茨木いばらき

「茨城はイバラギ?」

「茨城も茨城いばらき

「千葉」

「……千葉?」

茨城イバ~ルァキィー

「わかってるじゃん」

 これ、何の時間? と問うことなかれ。

 昔から変わらぬやり取りである。


「でね」

「はい」

「大阪中央卸売市場は大阪万博以後に北大阪の人口が増加したから、その対応のために作られたんだって。だから同じ中央卸売市場だけど、大阪市中央卸売市場の方が中央卸売市場としての役割をより果たしている……と言えるのかな」

「中央卸売市場、とな」

「ああそうか。市場には中央卸売市場と地方卸売市場があってね。名前の通り、中央卸売市場の方が規模も大きく、よりたくさんの商品が集まってくるんだ。単純に都市部と地方ってイメージでもいいんだけど」

「なるほどな。単純に場所によって呼び方が違うくらいに考えてたらいいか」

「いや、もう少し詳しく言うと国の許可を得たのが中央卸売市場、都道府県知事が認定したのが地方卸売市場でね。これは市場法っていう法律によって決まってるんだ。他にも図書館は図書館法、博物館は博物館法によって定められており――」

「へいタクちゃん。そろそろ市況見ない?」

「あっ、ゴメンね」

 彼は賢いがゆえに話が脱線することが多々ある。



 *********


大阪市中央卸売市場【日報】種類別取扱高 (本場)



【数量:kg 金額:円】        相対販売

_品目_ 合計数量  産 地 単位 高値 中値 安値

だいこん 92,330(kg) 北海道 10kg 1,080 *,972 864

______,____岐阜県 10kg 1,620 1,296 864

______,____岩手県 10kg *,648 *,*** 432

.........

......

...



「市況欄など一部省略しています」

「スマホで見たらどうなっているのか、考えたくないな」


「まず、この表から読み取れることは、9月2日に販売された大根は約92トンってことだね。そして取り扱い数量の多い順に北海道・岐阜・岩手と続いているよ。販売単位は全部10kgだから同条件だね。販売方法は相対販売のみで、せり販売はしていないみたい。高値、中値、安値のいずれをとっても岐阜県産が一番高くて岩手県産が一番安い、と」

 卓は客観的な情報を次から次に口にする。

 単語としての意味はわかる。

 北海道産に岐阜県産、岩手県産の大根が販売されたのだろう。

 数字は 金額:円 となっていることから、間違いなく日本円での売買が成立している。

 エクアドルの市場の話をしているわけではないことは自明の理だ。

 複数の数字が羅列していることから、何らかの条件により価格が変動しているということは想像できる。

 とは言え。


「で?」

「で? って、こっちのセリフだけど」

「うん、それもそうだ。ごめんね」

「いいよ~」

「野菜の女神様や!」

 だが男である。



*********


<日報の作成方法について>

①総販売量の多い順に産地(県・国)を選定

②産地で総販売量の多い単位(量目)を選定



「って書いてあるから、たくさん売れた順に載せてますよってこと」

「その基準って、重さなのか? それとも金額?」

「んー、多分重さだろうね。野菜の基準はとにかく量目、つまり重さなんだ。か、じゃなくてか、が重要視される。食料自給率なんかでもそうだけど、金額ベースじゃなくて数量ベースのはず。どれだけ収穫できるかが大切だからね」

「そうか、高く売れたって量がなきゃ意味がないもんな」

「うん。例えば水菜なんかは――」



*********


品目    みず菜

数量    4,635kg

産 地 茨城 福岡 北海道

単位 0.2kg 0.15kg 0.2kg

高値 119円 130円 ***

中値 ***  119円 119円

安値 *97円 *86円 ***



「一応コンパクトになったかな」

「正直なところ、どっちにしても罫線がないと見づらい問題」

「カクヨムで取り上げること自体が間違っているのでは?」

「あいにくセイロンティーは間に合っているよ」


「売れた産地の順に茨城、福岡、北海道と続いているけど」

茨城イバ~ルァキィー

「まさか1話の中で2回もやるとは思わなかったなこのネタ」

「俺も驚いてる」


「福岡は0.15kgなのに対して北海道は0.2kgだ。だけど福岡の方が前に来ているってことは、ひと袋の重さは福岡の方が軽いのにたくさん売れたんだよ。もちろん合計金額はどちらが多いかわからない。だけど中値がどちらも119円だから、単純に考えて福岡産は150gで119円に対して北海道産は200gで119円。福岡産は割高にも関わらず北海道産より売れてるってことは、商品価値――つまりブランド力が高いんだろうね。茨城産は高値が119円だから、やっぱり福岡産は高くても売れるような何かがあるってことか……」


「ストップ、ストップだ」

「どうしたの?」

「俺のような素人には高値・中値・安値の意味すらわからん」

「そっかぁ。えっとね、市況の説明欄の続きに――」



*********


③選定した産地・単位(量目)の販売価格(税込)を次の定義で表示

 高値:最も高い販売価格

 中値:最も総販売量の多い販売価格

 安値:中値未満の総販売量の多い販売価格



「って高値とかの説明があるんだけどー」

「つまり……どういうことだってばよ……」

「さっきのみず菜の市況が解説に適しているから、これをもう一回使って説明するね」



*********


品目    みず菜

数量    4,635kg

産 地 茨城 福岡 北海道

単位 0.2kg 0.15kg 0.2kg

高値 119円 130円 ***

中値 ***  119円 119円

安値 *97円 *86円 ***



「まず茨城産。高値が119円で、中値はなし。安値が97円」

「うん」

「価格帯が二つしか無いから、茨城産のみず菜はこのどちらかの値段で売れたってことになるよ」

「ふーん。どっちの値段が多く売れたのかはわからないのか」

「この表だけじゃあわからないけど、ある程度は調べられるよ。とりあえず今は用語の説明だから、それはまた後で」

「教え方もこなれてきたなぁ」


「次に……北海道産にしようか。中値が119円だけ」

「さっきの話から考えるに、価格帯は一つしかなかったってことか?」

「おー、よく出来ました~。そのとおり、北海道産のみず菜は全部119円で売れたってことだよ」

 卓は大河の頭をよしよしと撫でる。

「やれば出来る子だからな、俺は」


「で、最後に福岡県産だけど。高値が130円、中値が119円、安値が86円」

「まあ高値はわかる。一番高い価格だわな。安値も安いんだろうよ。中値だよ問題は。こいつナンなの? 平均価格? 中央値?」

「上に説明もあるんだけどな……どっちも違うよ」

「そもそも中央値ってナンなの!?」

 パイ生地を回すような仕草を取る。

「知らないのに使ってたの? ナンじゃないよ! 食べられないよ!」

 大河氏、突っ込んでもらえてご満悦。

「ニュースでよく耳にするから有名なのかなって」

「じゃあ、ちょっと脱線するけど中央値について説明するよ」



「よく出てくるのは所得に関する話題だね。所得の平均は400万だけど中央値は250万、みたいな感じで」

「あーそうそれ。なんか計算方法が違うんだろうなって思うんだけど、調べるのは面倒で意味わかってないんだよなー」


「例えば年収が900万の人、250万の人、50万の人がいたとします」

「たったの250万か……雑魚め」

 ニートが何か言っている。


「三人の合計値は1200万だから、平均値は400万。これはわかるよね」

「普通の人なら見逃すほどの素早い計算、俺でなきゃ聞き逃しちゃうね」

 ニートが何か言っている。


「中央値っていうのは中央、つまり対象人数のうち真ん中にいる人の数字ってこと。今回なら三人だから、上から二番目の人。これが百人なら上から五十番目の人。つまり今の例で言えば、中央値は250万」

「……なんだって」

「つまり平均所得というのは一部の高給取りが底上げしているだけで、本当に見るべきは中央値なんだ」

「つ、つまり平均値を見せて『日本は一億総中流階級』とか言っておきながら、中央値を見ると実は国民の多くは中流どころか下級もいいところってオチか! これは全部、ただの悪い夢だ。そして二度と覚めることはないのさ! ハハハハハッ!!」

 大河は土手に生えていたひまわりの花を引っこ抜いて駆け回る。

注)畑の周りに生えている花は農家さんが育てているものですから勝手に抜いてはいけません。


「落ち着いた?」

「オスカー・ワイルドごっこは案外疲れるな。もうやめておこう」

 根っこごと引き抜いたひまわりを植え直す。

注)根を引き抜いた植物は植え直したとしても弱っていてすぐ枯れてしまいます。植物の生命を弄ぶのはやめましょう。


「えーっと、何の話してたんだっけ」

「ひまわりの種は食用として食べられるけど、軽減税率の対象にならないのはおかしいって話だろ?」

「え、あれ? うーんと、そうだっけ。まあ柚子も食用と飾り用で税率は違うし、鯉だって食用と観賞用じゃ違うから、ひまわりの種も分けるべきなの、かなぁ……?」

「何言ってんだよひまわりの種はハムスター用の餌に決まってんじゃん」

「そっかぁ、ごめんね」

「構わんよ」

「しのびないねぇ」

 なぜかニート大河の方が上から目線になっていた。



*********


③選定した産地・単位(量目)の販売価格(税込)を次の定義で表示

 高値:最も高い販売価格

 中値:最も総販売量の多い販売価格

 安値:中値未満の総販売量の多い販売価格



「話を元に戻しますと」

「今1000字で終わるような話を5000字にまで引き伸ばしてるんだよな……」

「だって作品にしないと誰も読まないし」

 作品にしたところで誰も読まないという真実を考えてはいけない。


「中値というのはだね。農家が価格の参考にするのもこの数字。みず菜なら119円かーって感じ」

「安値の『中値未満の総販売量の多い販売価格』ってことは、もしかしたら他の価格帯で販売してる商品もあるってことか?」

「そうだよー。そもそもここに載っているものは上位の量目・産地だけだから、実際には大根にしたってみず菜にしたって他の量目・産地でも販売されていると思うな」

「ああそうか、確かに載っているのは上位三つだけだな……」


「多分だけど、福岡県産みず菜にしたって150gと200gは別集計になると思うから、仮にどちらも存在して同じくらい数量が出たら、福岡県産の150gと200gの両方とも載ってるんじゃないかな。同じ産地のものは一つしか載せない、もしくは一番多い量目にまとめるみたいなルールだったらわかんないけど」

「それって、どっちも存在するのか?」

「存在はするだけろうけど、どっちも仕入れるかと言われたら答えはノーかな」

「農家なだけに」

「……? うん、農家だよ」

「続けて、どうぞ」


「詳しくは知らないけど、市場で流通する野菜って基本的にJAの野菜だから。つまりJAが農家さんに『一袋150gでみず菜作って』って規格を決めてるの。絶対にこれって決まってるわけじゃないけど、全国的に一袋の大きさや重さって同じようなものでしょ」

「んー、つまり福岡じゃ150gのみず菜が主流ってことか。……それじゃ答えになってないぞ。どっちも存在はするんだよな」


「そう。規格――出荷規格を決めるんだけど、つまりするんだ。極端に言えば『中央(県外市場)に卸すのは150g、地方(県内市場)には200g』みたいに。実際にどう振り分けられているかは知らないけど、あくまでイメージとしてね。それで、野菜不足で何でも良いから欲しいって時ならいざ知らず、通常時ならわざわざ別パッケージを複数仕入れたって管理が大変だし、スポットで仕入れた商品は売りにくいから敬遠される。誰だって『いつもの』商品の方が安心するよね」

「なるほどなー。言われると納得」

「だからより正確に言えば、『9月2日の大阪市中央卸売市場本場においては』福岡県産のみず菜は150gが主流だった、ってとこかな。季節によって出回る産地は変わるから。だいたい何でも旬の産地があるんだよ」



「ていうかさ、そもそもなんで同じ商品で値段が違うわけ?」

「おっ、良いところに気付いたね」

「市場って言うとあれじゃん。『はいこのキャベツ1玉100円から~』みたいな売り方やってるじゃん」

「そうそう、ね」

「だから価格帯が複数あるってこと?」

「ざんね~ん。そうじゃないんだなーこれが」

 卓はニヤニヤと嬉しそうに笑う。

 ようやくこの質問が来たとばかりに話したそうにウズウズしている。


「へいタクちゃん、なんか目がギラついて怖いんだけど」

「いやー、ずっと待ってたんだよね、その質問。市場って競り売りが基本でしょみたいなこと言われるのを今か今かと待ち焦がれてたの♪」

「何なのその告白待ちの女子みたいなテンション」

 だが男である。



「大阪市中央卸売市場【日報】種類別取扱高に再び目を向けますと、価格の上は『せり』と『相対あいたい』に分かれております。あ、最初の表ではせり販売がなかったから省略してるけどね」

「例えば大根の次、人参はせりも相対も価格が入ってるな」

「せりは漢字で競り、簡単に言うとオークション形式だね。他の人と競い合って値段が上がっていって、一番高い金額を提示した人から順番に買っていくの。市場といえば一般的にこれをイメージするよね」

「じゃあ、相対ってのは?」

「相対はんだ。スーパーのキャベツ1玉100円みたいに、当人同士が納得して売買する販売方法。今はこっちが主流かな」

「つまり大阪の値引き交渉文化は駄目だと衰退してきたって話か」

「いや、それとは関係ないよ。むしろ相対の方が……っと、また話が逸れるところだった。そもそも理由だったね。大根で言えば相対販売のみだから、人と競って金額が変わったわけじゃないってのはわかるよね」

「むむっ、確かに……たし蟹」

 なんで言い直したの? 待ちだったが、ついぞその言葉が発せられることはなかった。



「ここからは市況を眺めているだけじゃわからないお話だけど」

「おっと、ここだけのお得情報来ちゃうのか」


「規格の話があったけど、野菜には等階級が存在しているんだ」

「まーた聞き慣れない単語が出てきたぞ……知恵熱出ちゃう」

「知恵熱ってのは本当は」

「先生、市況線が脱線事故を起こしそうなので軌道修正をかけます」

 軌道修正と言うよりは緊急停止ボタンで無理やり止めている。


「等階級、つまり等級と階級ね」

「京浜急行?」

 それは京急。

「地の文にツッコまれた!?」

「?」

 そろそろ真面目にやらないと話終わらないので。

「あっハイ」


「等級は野菜の品質。出来の良さ。秀・優・良とかね。特選とかキズとか、細かく言えば色々あるけど、基本的には農家が勝手に決めてる」

「割と自由な感じなのね」

「そして階級は大きさ。3L、2L、L、M、Sみたいな感じ。これも農家が勝手に決めてる。一応JAが規格は出してるよ。だけど統一規格じゃないから、ある商品が秀のLとして出荷されても、別のJAの規格で言えば優のM相当だったみたいなことはまれによくあるね。いや、まれじゃなくてよくあるね」

「服のサイズがこんな感じだよな。ユニクロのLサイズはちょっときつめ、GUのLサイズはちょっと余裕がある、みたいな」

 ちなみに個人的な感想なので異論は受け付けません。


「この市況では等階級に関しては記載がない。だけど現実には複数の等階級で野菜は出回っているはずなんだ」

「ふむ……っ、まさか」

「そう、相対販売で同じ量目・産地にも関わらず値段に差が生まれるのはこの等階級の違いによるものだったんだー」

「な、なんだってーっ!」


「……え、本当に? だって大きさが違うんなら重さも違うんじゃないの」

 思わず大河は素に戻ってしまう。

「最初に言ったように、野菜はとにかくなんだ。スーパーじゃあ大根は一本いくらで売られているけど、農家は一箱10kgになるように入れて出荷するんだ。同じような品質と重さのものを選んで、だから一箱の中に6本入りや7本入り、果ては10本12本入りまで様々だ。でも、全部10kgで出荷する」

「えっマジで。そんなことが出来るのか!?」

「出来るのかじゃなくて、やるんだよ」

「イエスか、農家……」

「うん、農家だからね」



「早足で説明したし、まだまだ説明が足りてないところもたくさんあるけど、わからないことがあればいつでも聞いて~」

「おう、ありがと」

「中値が載ってない野菜の価格でどちらがより多く売れたのかを調べる方法については、長くなるからまた後ほどー」

「わざわざ改めて説明してくれてありがとう。忘れないようにしなくちゃな」


「ところで今日来たのは、仕事がなくなったから本当に農家を目指そうとか思ってるわけじゃないの~?」

「うぐっ、タクちゃん鋭いってば」

「だってそうでしょ? 新都ニート新聞の出雲さん?」

「あ」

 自分でバラしていたことを、彼は気付いていなかった。

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