第2話 満月

さらに時をさかのぼる。僕の親は春の終わりに亡くなった。交通事故だった。親が運転していた自動車が故障して亡くなった。幸いに事故に巻き込まれた人はいなかった。人為的な原因による故障と発覚した。防犯カメラに犯人が映っていてすぐに逮捕された。ニュースサイトに犯人の名前とともに被害者の両親の名前が公表された。その後、僕が自分の家がお金持ちで高級車を自慢し、蔑む態度をとっていたため犯人に狙われたのではと報道された。ニュースサイトのコメント欄には「傲慢、人を侮辱した態度が原因。息子が両親を殺したも同然。」など僕に対する批判的なコメントが多く書き込まれた。僕は外に出るのが億劫になり、家に引きこもった。

ある日のすっかり晴れた雲ひとつない夜の空に満月が浮かんでいた。あの日もこんな月夜だった。僕は満月を見ながら考えた。なぜこんなことになったのか、なぜ苦しいのに批判されないといけないのか。満月が話す人の顔に見えてやたらと腹がたった。体の中から沸き上がるものを感じた。僕は月に向かって銃を打つみたいに指をさして「ばんっ」と言った。青い大きな球体が指から出た。窓をすり抜けて、屋根をすり抜けて月に向かって進んでいった。翌日、月のクレーターが増えたニュースが報道された。

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