第15話

 全く同時に俺の背後――つまり右腕の肘側へ向けて、衝撃波を相殺するための衝撃波が放たれ、俺自身が後ろへ吹き飛ぶことを防ぐ。


 前後へ向けて同時に発射された衝撃波が、俺を挟み撃ちにしようとしていた怪物どもを残らず吹き飛ばした。


 アニータに左側を任せたのは、俺の背後へ発射される衝撃波を回避させるため!


 これでも戦闘訓練の成績はイタリア軍の中でも上位ハイクラスだったんでね。


 自分のみならず、パートナーの位置、敵の位置、細かな状況を把握しながら戦う、上位ハイクラスの兵士だからこそできる技!


 吹き飛ばされた怪物どもは、頭蓋が割れるか、瓦礫の角に突き刺さるかして絶命。


 俺は今の衝撃波で一瞬怯んでいた残りの怪物たちを仕留めていく。


 ショックバンカーもパワードスーツのエネルギーで作動する。使用可能回数は全部で五発。


「――やめてください!」


 四発目で周りの怪物を蹴散らした俺が振り返ると、少し離れたところでアニータがそう叫びながら、スカートに噛み付いた怪物の頭を蹴って破壊していた。


 俺は辺りを見回して怪物がいないことを確かめ、アニータのもとへ。


「大丈夫? アニータ」


「はい。ですが、スカートが……」


 悲し気なアニータ。スカートの裾はズタボロだ。


「ごめんね、アニータ。残念だけど、噛まれた部分よりもう少し上の辺りに合わせて、スカートの布全体をぐるっとカットしよう」


 スカートは歩いたり座ったりする度、気付かないうちに人肌に触れるもの。怪物があの鋭い牙で噛みついた布に、どんな菌がついているかわからない。


 ロボットだからといって悪影響が無いとは言い切れないし……。


 だから噛まれた場所より少し上の部分から、スカートの布をカットして、菌による悪影響を予防する必要があるんだ。


 本当なら、布は包帯代わりにもなるから貴重なんだけど、この場合は仕方がない。


 俺は腰の小さなバックパックからサバイバルナイフを取り出し、作業に掛かる。


「そこに立って、じっとしてて?」


「はい……」


 ビリビリ、と布の割ける音が心苦しい。


「……終わった。これで大丈夫」


 と、しゃがんでいた俺はアニータを見上げ、そこで気付く。


 彼女の背後に現れたに。


「危ないッ!」


 俺は咄嗟にアニータを引き寄せて身を捻り、から彼女を庇う。


 背中に衝撃。


「ぐあぁッ⁉」


 俺は派手に吹き飛ばされ、十メートル以上離れた瓦礫の山に突っ込んだ。


 全身に鈍い痛みが走る。ふと横を見遣ると、数センチ先に鋭く尖った瓦礫の一部。危うく死ぬところだ。


 くらくらする頭を振り、俺はアニータがいる前方へ意識を集中する。


 完全に油断した。


 アニータもスカートに意識を向けていたからか、の接近に気付き遅れた。


 そのの正体は――、

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