第14話

 ご奉仕メイドロボットでしょ? 戦闘までこなせちゃうなんて聞いてないよ?


「――わたしは、ヘイボン様にご奉仕するメイドロボット!」


 瓦礫の山を越え、続々と現れる怪物たちに向かって、彼女は高らかに言い放つ。


「奉仕内容は、あんなことやそんなことはもちろん、身辺の警護も含まれます!」


 まるで格闘家のように両足を前後に開き、両の拳を胸の前で構えるアニータ。


 普段は健気で尊いメイドの子が、今このときだけは、頼もしい戦士に見えた。


 ――だけど!


「あいつらに言葉は通じそうにないね」


 俺は兵士だ。ロボットだろうと何だろうと、女の子を危険な目に遭わせるわけにはいかない。


「まぁでも、ありがと。おかげで助かったよ」


 アニータの肩に優しく手を置き、彼女の前へと出る。


「あいつらは俺が迎え撃つから、アニータは自分のことを守って? 無理しちゃダメだからね?」


「わかりました。ヘイボン様」


 パワードスーツ越しだけど、アニータの背中が俺の背中に触れるのがわかった。


 背中合わせで、俺たちは怪物の群れを迎え撃つ。


 獲物を前に痺れを切らしたか、三匹の怪物が動いた。


 俺は自分の正面から襲い来る3匹に、フルオートに切り替えたパルスライフルの全弾を見舞う。極力、背後に立つアニータの方へは回り込ませない!


 怪物はざっと見てあと十数匹。


 俺は弾切れになったパルスライフルを捨て、ヘルメットを外す。


 ヘルメットに備わるロックオン機能は、それに連動してアクチュエーターがパワー面でサポートしてくれるから便利だけど、自動制御で自由が利かないうえ、動きが単調で隙が生じ易い。


 だから俺のように抜群の戦闘センスを持つハイクラスな兵士は、ヘルメットをあえて外す。


 そうして、アクチュエーターを自分の意思で自在に操るんだ。


 俺が主力武器を背の格納部へ戻すと、チャンスとでも思ったか、怪物どもは一斉に飛び掛かってきた。


「アニータ! 左に回り込んだ敵をお願い!」


「はい!」


 俺はやむを得ずそう指示する。ここはアニータの戦闘能力を信じるしかない!


 俺は右腕の手首に装備したセカンダリー・ウェポン【ショックバンカー】を起動。


 腕輪のような形状をしたそれが、『キュィィィン』というチャージ音を発し――、


 俺の前と後ろから迫る複数の怪物が迫る!




「――ショックバンカーッ‼」




 俺の声で音声認識トリガーが作動。前方へ向けて、車をも容易く吹き飛ばす衝撃波が発射された。

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