第13話

「――うっ⁉」


 だが、俺は驚愕する。仕留めたはずの怪物が、むくりと起き上がったのだ。


「このッ! 焼却されたんじゃなかったのかよ⁉」


 こちらに牙を剥く怪物目掛け、更に三発撃ち込んだ。


 縦長の頭部を破裂させ、緑色の体液をぶちまけて、ようやく怪物は沈黙。


「――アニータ! 怪我はない⁉」


 振り返ると、その場に屈んでいたアニータが叫ぶ。


「ヘイボン様! 危ない!」


「え?」


 アニータが指差す方へ向き直る俺の眼前に、赤黒い牙のついた口腔こうこうが迫っていた。




 しまった!




 アニータは言っていたじゃないか。音は複数、、って。




「――っ⁉」


 俺は思わずパルスライフルを横向けて構え、防御姿勢を取った。だがその刹那――。


「グォオオオオオオ‼」


 という叫びを上げ、眼前にあった怪物の口腔が横へとスライド。そして、怪物の頬にグーパンを叩き込んだアニータが現れた。


 怪物は周辺の瓦礫を散らしながら転がり、痛みにもがいている。


「あ、アニータさん?」


 あまりの衝撃に尻もちをついた俺に、アニータは振り返った。その表情にいつもの笑顔はない。怒ったようにきゅっと口を引き結び、眉宇を引き締め、瞳がメラメラと燃え盛る炎のように赤く光って見える。


「ヘイボン様を、守ります!」


「え、ちょっ⁉」


 狼狽える俺が見つめる先で、地を蹴ったアニータは怪物に対して追い打ちを掛けた。


「はぁあああッ‼」


 気迫と共に、アニータはその美脚を空目掛け振り上げる。


 怒れるメイドの踵落としが、再び襲いかかろうと身構えていた怪物の頭部を粉砕した。


 可愛らしいロングスカートに隠れて見えなかったけど、アニータの足はめちゃくちゃスレンダーだった。


 なにこれ? 惚れそう。

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