第11話

「怪物と戦争状態にあった宇宙人たちは追い詰められて、最後の手段として地上を焼却したんだと思う。荒野の砂が波紋みたいな模様をしていたのは、きっと焼却のための爆発――衝撃波が原因なんじゃないかな?」


 さっきの宇宙人は逃げ遅れたか、あるいは……。


「では、宇宙人たちは自らを犠牲にして、怪物諸とも滅びたのでしょうか?」


 俺は更に読める単語を探した。すると、『地下』『避難』といった文字が。


「――いや、まだわからない。もしかすると、地下に避難して焼却を回避した宇宙人がいるかもしれない」


 俺の解釈がぜんぶ当たっていればだけど……。


「では、街に行ってみませんか? 街の地下に、避難シェルターがあるかもしれません」


 と、アニータ。


 彼女の言う通りだ。今はとにかく、生きていける環境が必要だ。街に宇宙人の生き残りが居て、意思疎通ができれば道が開ける。


「行く価値ありだね。水と食料も確保しなくちゃだし……それに、もしその怪物とやらがまだ生き残ってるなら、さっきの宇宙人の仇を討ってあげたい」


 俺はアニータと頷き合い、共に軍事施設を出た。



   ※



 件の街は、軍事施設から東へ一〇キロほど進んだ場所にあった。


【ポータル】の出現ポイントからではよく見えなかったけど、近づくにつれて、街全体が黒く焼かれ、無事な建造物が見当たらないことがわかった。


「ひどい状態ですね」


「俺も同じこと思ってた……」


 と、俺たちは街の入り口で呆然と立ち尽くす。


 正直、戦争禍にあったイタリアの街の方がまだマシだ。少なくとも、生活はできていたから。


 でも、ここは違う。


 街の構造こそ地球のものと似ているが、建造物の間を通る道にはもはや原型がどうだったのかわからないくらいに破壊された、椅子が剥き出しになった乗り物のようなものや、何らかの機械の残骸が山積みになって行く手を遮っている。


 これじゃ、仮に地下に避難所があったとしても、生き埋めになってしまっている可能性が出てくる。


 さすがにこんな惨状なら、『怪物』っていうのは排除されたと考えていいかもしれないけど、支払った対価はあまりにも大きい。


 さてどうしたものかと考えだしたそのときだ。


「ヘイボン様、音がします」


 アニータが俺の背をツンツンして言った。


「――マジ? どこから?」


「瓦礫で確認できませんが、通りの向こうからです」

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