第7話

 俺はヘッドマウントディスプレイで、パワードスーツの兵装をチェックする。


 背中に嵌めこむ状態で装備したパルスライフルの残弾はエネルギーマガジン一つ分のみ。アニータを担いで逃げるのに夢中で補給し忘れた。


 残る武器は、右腕に取り付けた腕輪状のショックバンカーだけ。衝撃波発射装置、波動兵器などと呼ばれる、爆風に似た強力な衝撃波を打ち出す近接武器。


「……戦いの準備ですか?」


 不安そうなアニータ。そうだよね。目覚めたら違う惑星にいて、ご主人様がどこの誰ともわからないやつで、しかも物騒な場所で物騒なものを構えてるんだから……。


「未知の惑星だし、一応ね。この世界の住人が友好的とは限らないし」


 こっちの緊張感が伝わらないよう、明るい表情で言う。


 プライマリ・ウェポンのパルスライフルを手に持ち、建物の入り口から中を伺う。


 途端、強烈な焦げの臭気が鼻を衝いた。「くさっ!」と思わず呻く俺だが、アニータの方はきょとんとしている。


 地球でいう電力的な、何らかのエネルギーが断たれたのか、あるいは明かりをさほど必要としない文明なのか、中は真っ暗。


「ここで待ってて?」


 振り向いてそう言い、俺はパルスライフルに取り付けられたライトを点灯。すると、


「わたしはヘイボン様にご奉仕する身です。奉仕内容は、あんなことやそんなことはもちろん、身辺の警護も含まれます」


 あんなことやそんなことが何なのかわからないけど、着いてくるつもりらしい。


「まぁ、しょうがないか。もし何かのトラブルではぐれたら嫌だし」


 俺はやれやれ、といった感じで肩を竦めて見せた。


 けど本当は、ちょっと嬉しいというかほっとした。正直、心細かったから。


 二人で縦一列になって建造物内部を進む。通路の両サイドには別の部屋へと続く出入口が設けてあり、ライトで奥を照らすと、何やら物物しい機械のようなものが壁に沿ってぎっしりと並んでいるのが見えた。各部屋の出入り口も、大型機材搬入を考慮してか、俺たち人間が使用する建物の標準的な出入り口よりも幅広だ。


 黒焦げの建造物に、黒焦げの機械。やはりただ事じゃないなにかが起きたんだ。床や壁も黒ずんでいるし、細かい破片のような異物が散乱した状態だ。

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