第5話 修行開始
翌朝、僕と師匠は宿屋をチェックアウトした。
そして僕の冒険者の仮登録をするために、冒険者ギルドに向かって行った。
ギルドに入り、受付で仮登録を済ませる。
その後僕達は、師匠が借りた一軒家へと向かった―――。
◇◇◇◇◇
町を出て道なりに進み、森の前に建っている一軒家にたどり着いた。
すると先に来ていたシオンさんが、家の中から出てきて僕達を出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、ご主人様、アルス君。室内の掃除や家具の調達などは、すでに済んでおります」
「ありがとう、シオン。それと、お疲れ様」
「いえいえ〜、これもメイドの務めですから」
師匠に労われ、シオンさんは照れたように両手を振った。
そして、シオンさんは一度咳払いをしてから続ける。
「コホン。……では、室内を簡単に説明致しますね」
そう言った彼女を先頭にして、僕達は家の中に入っていった―――。
◇◇◇◇◇
説明が一通り終わると、僕と師匠は外に出ていた。
「じゃあ、今日から冒険者になるための修行を始めるよ。まずは、魔法の使い方について……」
「師匠、質問していいですか?」
「いいよ、何でも聞いてくれ」
師匠のその言葉を受け、僕は挙げていた手を降ろす。
これは、昨日から感じていたことだけど……。
「いつになったら魔物使いの修行をするんですか?」
「ああ。魔法について教えた後に、実践形式で教えるよ」
「え……?」
……なんか今、さらりと言ったけど……。
実践ということは……戦うのか? 僕が?? 魔物と!?
驚いている僕に構わず、師匠は説明を続ける。
「昨日の続きだけど、『攻性魔法』には八つの属性があるけど、それとは別に四つの等級がある。『初級』『中級』『上級』『超級』だ。アルスの
その後、師匠が実演し、それを見て僕が実際にやってみる。
上手くいかなかった所は師匠が指摘し、その箇所を修正してから再度魔法を発動させる。
その繰り返しがお昼過ぎまで続いた―――。
◇◇◇◇◇
お昼休憩を取った後、僕と師匠、あと何故か付いてきたシオンさんの三人で森の中に入っていった。
先頭を歩く師匠が説明する。
「さて、お待ちかねの魔物使いの修行だけど……。魔物使いというのは読んで字のごとく、魔物を使役するジョブだ。使役する方法は二つある。まず一つ目は、『仮契約』だ」
とその時、僕達の前に薄い青色の体をした不定形の魔物―スライムが現れた。
師匠はそれに手をかざしながら説明を続ける。
「ちょうどいい。仮契約というのは、一時的に魔物を使役する方法だ。こういう風に……」
そう言うと、手の先から魔法陣が現れ、今にもこちらに襲い掛かってきそうだったスライムの体を包み込んだ。
魔法陣が消えると、スライムの敵意は無くなり、大人しくなっていた。
師匠がこちらに振り向く。
「これが仮契約だ。契約はいつでも、こちら側から解除できる。今のアルスでも出来るからやってみよう。もう一つは『本契約』だけど、実物を見せた方がいいね……シオン」
「はぁ〜い」
師匠に呼ばれて、シオンさんは師匠の傍に駆け寄る。
ここで、僕の頭には新たな疑問が浮かぶ。
……シオンさんは獣人族の魔族だったハズ……まさか!?
僕はある一つの可能性が頭をよぎり、師匠に質問する。
「師匠! 本契約って、魔族が相手でも出来るんですか!?」
「……驚いた。カンがいいね、アルス。アルスの言った通り、魔族相手でも本契約は出来る。ただし、これは非常に難しいことだ。今のアルスには無理だね」
「そうですか……」
僕の淡い期待は一転して、落胆へと変わった。
そんな僕を励ますように師匠は言う。
「まあ、鍛えていればその内出来るようになる。……っと、話が逸れた。本契約は魔族相手でも出来る。これは仮契約と違い、恒久的に使役する方法だ。契約も契約解除も、両者の合意がなければ出来ない。それと、使役している魔物、魔族は『従魔』と呼ぶ。説明は以上、後は実践あるのみだよ」
そう言って師匠は、森の中をさらに突き進む。
僕も急いで師匠の後を追う。
師匠に言われた通り仮契約の練習をしたけど、仮契約を交わしたのが十体目を越えたあたりから数えるのを諦めた。
……師匠、意外とスパルタなんですね。
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