第7話 テスト勉強
「いや~付き合ってくれてありがとね~」
花は野口との公園での練習後、ベンチに座りながら、楽しそうに野口に言った。
「はぁ…はぁ…部活後は中々しんどいな…」
野口もベンチに座って、うなだれながら、スポーツドリンクを飲んだ。
「まぁ、それだけ頑張ってれば、スタミナもついたっしょ!
バテバテの野口なら、私も結構抜けるし!
楽しいわ!!」
「…お前、絶対FWだったろ?」
「なんで分かるの?」
「…なんとなく…」
野口は半分あきれながら、花に言った。
花も一口スポーツドリンクを飲んだ後、野口に言った。
「そう言えば、もうすぐ期末テストだけど、野口って勉強はどうなの?」
「はぁ~いつもは普通よりちょっと上くらいだけど、今回はやべぇわ…
おかげ様で全然勉強出来てねぇからな。」
野口はため息をつきながら、皮肉っぽく花に答えた。
「えぇ~私のせいって言いたいの?
男らしくないぞ~」
「…お前は練習に付き合ってやってる人に対して、厳しすぎやしないか?」
「付き合ってやってるってなんだよ~
無理やりみたいで心外なんだけど~」
「ほぼ無理やりみたいなもんな気がするんだが…
まぁ、いいわ。
とにかく、テスト期間中は流石に勉強させてもらうからな。」
野口はここで言っとかないとテスト期間中も練習に付き合わされてしまうと思い、花に釘を刺した。
「まぁ、私は野口が部活やってる間は勉強してるから、多分大丈夫なんだけどな~
しょうがないか~」
「しょうがないって、お前、ホントにテスト期間中も練習するつもりだったのか…
言っといて良かったわ…
とりあえず、これでゆっくり勉強ができる…」
しんどそうな野口を見て、花はふと思いついて、野口に提案した。
「いつも練習付き合ってくれてるお詫びと言っちゃなんだけど、今度は私がテスト勉強に付き合ってあげるよ。」
「えぇ~小谷ってそんなに賢いの?
人のことは言えないけど、サッカー見た日、午前中の授業寝てばっかだろ?
不安なんだが…」
「…それを言われると返す言葉もないけど…
私には強力な助っ人がいるからね!
じゃあ、今度の土曜にでも私んちで勉強会しようよ。」
花は意気揚々と野口に勉強会の提案をした。
野口は少し考えた後、花に言った。
「…まぁ、いっか。
じゃあ、俺も助っ人呼んでいいか?」
「おぉ~いいよ~
女二人に男一人だとなんだかやらしい感じだしね。
丁度いいんじゃない?」
「…お前ってデリカシー無いよな…」
そうして、二人は勉強会の約束をしたのだった。
そして、土曜日、花の部屋に助っ人含めた4人が集まった。
4人は同じ花の部屋にある大き目の机を囲んで、それぞれ勉強道具を机の上に並べていた。
「よし!
では、早速、勉強会を始めたいと思います!」
花は勉強会の開始を高らかに宣言した。
野口はため息をついて、偉そうにしている花に言った。
「待て待て。
自己紹介くらいはやっといた方がいいだろ。
いきなりは色々聞きづらいわ。」
「そうかな?
まぁ、それなら…
じゃあ、加奈から紹介お願い。」
「また、適当に決めるね~花は~」
加奈は焦る様子もなく、花に笑いながら、言った。
そして、コホンと言って、加奈は自己紹介を始めた。
「始めまして…ではないと思うけど、とりあえず、皆と同じクラスの伊藤加奈です。
花とは幼稚園の頃からの幼馴染です。
割と勉強は得意な方なので、分からないところがあれば、どんどん聞いてください。」
「そうなんだよ~
加奈は口は悪いけど、勉強は本当に凄いから、いっつも教えてもらってるんだ~
だから、何でも聞いてよ~」
「なんで、お前が偉そうなんだよ。」
野口は呆れた様子で花に言った。
続けて、野口は連れて来ていた谷を紹介し始めた。
「こいつは谷浩介。
俺とは小学校からの付き合いで、ずっと一緒にサッカーしてるよ。
そんで、こいつ医者の息子で学年トップの成績だから、俺もいつも教えてもらってるよ。
ただ、変わり者だから、そこら辺はよろしく。」
「変わり者とは何だ。失礼な。
まぁ、よろしく…」
谷はクールに野口に突っ込みながら、挨拶した。
加奈は笑いながら、谷に言った。
「まさか、谷君が来るとは思わなかったよ~
成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能、学校でも憧れの的だもん。」
「そうなんだ。
全然知らなかった。」
花は加奈の言葉に対して、意識せずに谷に対して、失礼なことを言った。
野口は呆れて、加奈にボソッと言った。
「伊藤さん。
こいつって、本当に礼儀というかなんというか…そういうのが欠如してるよな。」
「そうなんだよ~
そこが花の面白いとこなんだよ~」
加奈は笑いながら、野口に言った。
谷は何も考えていない様子で、ボ~としていた。
「はい!
じゃあ、自己紹介も終わったし、勉強始めようか!!」
花は野口と加奈の会話を無視して、勉強会の始まりを再び宣言した。
「伊藤さんって、歴史得意?」
「まぁ、私、どっちかっていうと文系だから、得意だと思うよ。
どうして?」
加奈は突然の野口の質問に不思議そうに答えた。
野口は谷をチラッと見た。
「浩介って、理系でさ。
数学とかは分かりやすく教えてくれんだけど、文系科目はすげぇ感覚的でわかりづらいんだよ。
だから、できれば流れとかで教えてほしいなと。」
「なるほど。
そういうことなら…」
そうして、野口と加奈は歴史の勉強をし始めた。
花はそれを聞いて、それならばと谷に言った。
「それじゃあ、谷君に数学教えてもらおうかな。
で、早速で悪いんだけど、ここが分かんないんだけど…」
「どれ?」
花と谷は数学の勉強をし始めた。
そんな感じで野口は加奈に文系科目を教えてもらい、花は谷に理系科目を教えてもらうのであった。
「…う~~~ん。疲れた~~
でも、結構進んだね~
ちょっと、休憩しようよ~」
2時間ほど勉強を進めていると、花は伸びをして、一旦、休憩を皆に提案した。
「そうだね~
じゃあ、花なんかお菓子持ってきてよ~」
「相変わらず、遠慮ないな~
じゃあ、ちょっと待ってて。」
そう言って、花はお菓子を取りに行った。
「いや~伊藤さんは浩介と違って、歴史の教え方が分かりやすくて助かるわ~」
「…小谷はお前と違って、直ぐ理解してくれるから教えがいがあるわ。」
野口と谷は嫌味を言い合っていた。
「ははは。二人とも仲いいね。
期末テスト終わったら、夏休みだけど、二人はやっぱり部活ばっかりなの?」
加奈は笑って、二人に聞いた。
「そだな~ほぼ毎日部活だな。
合宿とかもあるし。
8月末には選手権予選も始まるしな。」
「そりゃ大変だね。
頑張ってね。時間空いてたら、花と応援に行くよ~」
3人が話しているとお菓子とお茶を持った花が戻ってきた。
「お待たせ~なんの話してたの?」
「夏休みの話だよ~
やっぱり二人は部活ばっかなんだって~
8月終わりに試合もあるみたいだし、二人で応援に行こうよ~」
「おぉ~いいねぇ~
思いっきり野次飛ばしてあげるよ~」
「…お前、野次って意味わかってる?」
野口は呆れて、花に言った。
しばらく、4人はお菓子を食べながら談笑していた。
「伊藤さんは夏休みはどっか行く予定あるの?」
野口がお茶を飲みながら、加奈に聞いた。
「私はおばあちゃんちに行くくらいで、後は塾の夏期講習かな。
花は夏休みどうするの?」
加奈は花に話を振った。
花はう~んと考えながら、話した。
「別になんもないな~
とりあえず、考えてるのはコサル行って、野口に練習付き合ってもらって…」
「夏休みまで、付き合わされるのかよ…
まぁ、最後の追い込みと思って頑張るか…」
野口は諦めたように呟いた。
すると、谷が久しぶりに口を開いた。
「…小谷はどっかチームに入らないのか?
昭義から結構上手いって聞いてるから、そんな暇なら入ればいいんじゃないのか?」
「そ、それはね~…なんてったらいいのか…」
谷の言葉に花ははっきりと答えられないでいた。
その様子を見て、加奈が笑って代わりに言ってあげた。
「今、花はチーム探してる最中なんだよ~
二人ともいいチーム知ってるなら教えてよ~」
花は加奈がごまかしてくれたのを見て、なんだか嬉しかった。
「女子チームは全然知らないな…
役に立てそうもないわ。」
谷は早々に諦めた。
野口は何かを考えている様子だった。
「良し!!じゃあ、休憩終わり!!
勉強しよう!!」
花はとりあえず話を終わらそうと勉強の再開を皆に促した。
そうして、勉強会は進んでいくのであった。
「お疲れ~今日は皆来てくれてありがと~
勉強はかどったよ~じゃあ、またね~」
「お邪魔しました~またね~花~」
「お邪魔しました。
こちらこそ今日は助かったよ。
またな。」
「お邪魔しました。」
勉強会が終わり、皆は挨拶をして、花の家を出た。
「じゃあ、俺んちこっちだから、またな。」
そう言って、谷は自転車に乗って、野口と加奈とは逆方向に向かってさっさと帰って行った。
野口はまだ自転車には乗らず、加奈に言った。
「伊藤さんは家近いの?
とりあえず、送るよ。」
「うん。すぐそこだから、大丈夫だよ。
それよりも少しだけ相談していい?」
加奈は野口に笑顔でありつつも、真剣な様子で野口に言った。
「相談って?」
加奈は少し迷いつつも野口に言った。
「…今日言ってた花のチームの話なんだけど…
探すの手伝ってあげてくれない?」
野口は真面目な顔で加奈に聞いた。
「それはいいけど、多分、何か事情があるんだろ?
小谷程上手い奴がチームに入ってないのは。
それは教えてくれないのか?」
「それは私からは言えない。
申し訳ないんだけど、本人から聞いて。
野口君にだったら、話すと思うから。」
加奈は野口の質問にすぐに答えた。
野口は自転車に乗って、加奈に言った。
「分かったよ。
まずは事情を小谷に聞いてみるよ。
女子チームに心当たりが無いわけじゃないから、まぁ、手伝えると思うよ。」
加奈は野口の言葉を聞いて、ニコッと笑った。
「ありがと。
野口君って、花の言う通りいい人だね。」
野口は照れながら、何も言わず手を振って、帰って行った。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます