二部 第六章の壱
「
セレスは一人走りながらそう言った
そして、待っていたカリーナと合流する
「タースは行ったのか」
「ええ、行ったわ。 きっとあの子に会いに行ったのね」
セレスは涙を堪えながら言う
「ペルセポネは?」
「先に行ってる」
「そうか、さすが先輩は行動が早いな」
セレスは青い空を見上げて言う
「始まってしまうんだな」
セレスの後に続けるようにカリーナも言う
「もう、止められないわ」
セレスは笑った
そして言った
「フッ、僕らも行こう。 全てを始め、終わらせるために」
セレスはカリーナに手を差し出す
その手をカリーナはそっとはね返す
「あれー?」
先に行くカリーナを追いかけるように、セレスも行く
「何だか妙な胸騒ぎがするわ。 イッくんは帰りなさい」
「そんな、ここまで来て帰れるわけないじゃないか!」
イクザクはヒカルに反抗した
それを見たヒカルはイクザクに優しく言う
「ここからは危険な目に多く遭うかもしれないの。 それでもあなたはついて行くというのね? 両親を残したまま、あなたは私について行くというのね?」
イクザクはしばらく考えていた
両親のことを考えているのだ
「両親を出すなんて卑怯だよ! そんなの、帰るしか無くなっちゃうじゃんか!」
ヒカルはそう言うイクザクを見て、大きく頷いた
「そう、それでいいの。 どんな人でも両親は両親。 あなたを愛していたはずよ。 そんな両親の事を放っておけるわけないもの」
ヒカルは馬車を呼び、イクザクを乗せる
馬車に乗ったイクザクに、ヒカルは言う
「短い間だったけど楽しかったわ。 両親のことを思いやれるあなたは、きっといい人になれる。 それじゃ、元気で」
そう言って、ヒカルはイクザクを送り出した
「絶対また会いましょうねー!」
イクザクは涙を流しながら手を振っていた
ヒカルもイクザクに負けないくらい、大きく手を振っていた
イクザクが完全に見えなくなるとヒカルは一人考える
「さてと、一体どうしたものか」
ヒカルは、何気なく崩れたビルに近づく
しかし、見えない壁に阻まれているようで前に進めない
それをヒカルは自慢じゃないが、持ち前の怪力で無理やり体をねじ込んで中に入る
中はビルの面影一つなく、真っ白な神殿だった
中に入ると自動的に転移する仕掛けなのかもしれない
「ここはどこだろう」
ヒカルはしばらく歩き回っていた
が、特におかしいところもない
神殿以外は
「入るしか、ないのかな」
ヒカルは覚悟を決め、神殿内に入る
神殿の中にはヒカルに読めない文字がビッシリと書かれていた
その中でも、女性が神らしき人物から何かをもらっている絵はヒカルにも見えた
神殿の奥部には一人の女の子がいた
背丈はヒカルと同じくらいで赤い髪に赤いドレス、全身真っ赤な子だった
その子はヒカルを見つけるとこう言った
「ああ、すっかり大きくなって⋯⋯じゃなくて、私と会うのは初めてよね。 私はイータ=カリーナ! 星の女神よ!」
ヒカルはこれをサラリと受け流してなるべく距離をとりながら話をする
「で、その星の女神さんが私に何の用ですか?」
「星の女神じゃなくて、名前で呼んで欲しいな。 あの子も私をそう呼んでいたから」
「あの子と言うのは?」
ヒカルはゴクリと唾を飲み込む
「もちろん、ショウのことよ」
サラリといいやがった、この女
「兄貴はどこにいる」
「この神殿の奥にいるわ」
カリーナは後ろの入口を親指で指して言う
「ここから先は行かせてくれないって訳?」
「まあ、邪魔されたくないからね。 それも少しの間よ?」
カリーナは、あくまで冷静に答える
ヒカルは、その態度が気に食わなかった
「兄貴を、ショウ兄ちゃんを返せっ!」
ヒカルがそういった時、地面に大きくヒビが入った
そのヒビは、カリーナの元まで届くほど大きなものだった
「この力の量! セレスが言ってたことは本当だったのね!」
「セレスもお前とグルだったのか!」
「グルとは、嫌な言い方だね。 ヒカル」
神殿の奥からセレスが出てくる
「そっちは大丈夫なの?」
「ああ、特に大きな問題もない。 目の前のこと以外は」
セレスはカリーナの質問に答えてからヒカルに話す
「別に君を騙していたわけじゃないんだ。 ただ、僕たちに協力してほしいだけなんだ」
「協力? 兄貴をさらった奴らに協力なんてするわけないだろ!」
さらに地面にヒビが入り、上から小さい欠片がパラパラと落ちる
「君な少し冷静になった方がいいね。 パーフェクトルーム改」
セレスの言葉一つで、ヒカルは立方体の中に閉じ込められた
ヒカルは力いっぱい壊そうとするが、傷一つつかない
「これはあの方の魔法を、さらにグレードアップさせたものだ。 君が中でいくら暴れようとも、つけた傷は瞬時に治る優れものだ。 しばらくそこでじっとしていてくれ」
そう言ってセレスはカリーナを連れて奥へと戻っていった
カリーナは奥へ行く前にヒカルをチラリと見た
「皆の者、揃っておるな」
小さな女の子が言った
『はい、揃っております』
ルピー、オリオン、セレス、カリーナが返事をした
「それでは始めよう。 世界と宇宙の改変を」
女の子の後ろには眠らされたショウが横たわっていた
アステルと戦った後と、全く同じ体型で眠っていた
これは、アステルが最後にかけた呪いのせいで昔の体型のままになっている
「一言、言わせてもらっても構わないでしょうか。
オリオンが一人立ちナターシャに聞く
ルピーは目を丸くして驚いている
「聞くだけ聞こう。 なんだ?」
「大変失礼なのですが、我々がしていることはこの世界のためになるのですよね?」
「もちろんだとも。 何度も言っておる通りこれは世界のため、そしてお主らのために必要な事だ。 それの何が不満だ?」
「⋯⋯正直に申し上げますと、我々を使ってナターシャ様は遊んでいらっしゃるのかと思いまして」
オリオンがそう暴露すると、ナターシャの目から涙が落ちる
「オリオンよ、お主が私をそんな目で見ていたとは。 私は悲しいよ」
オリオンは慌てて取り繕おうとする
その瞬間、オリオンの首は後ろに飛んでいた
頭を失ったオリオンの体は、ゆっくりと前に倒れた
それを見た三人は、目を見開いた
「他に不満がある者はいるか?」
三人とも首を横に振る
「よろしい」
ナターシャはニッコリと笑う
「一人欠けたが改めて始めるとする。 皆の者、準備にかかれっ!」
恐怖に背中を押された三人は颯爽と準備に取り掛かる
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