二部 第五章の壱

なりヤバい状況じゃない?  私たち」

 

 ヒカル達は暗い地下牢に閉じ込められていた

 なぜこうなったのか

 それは数時間前に遡る

 

 ヒカル達は次に行く街をアステローペに決めた

 アステローペは、ヴィーゼ唯一の未来都市らしく多くの人が集まっている

 

「なんか未来っぽい感じの街だね!」

 

 ヒカルは未来都市を初めてみたのか、少し感動している

 それよりもイクザクは、ヒカル以上に驚いていた

 

「近かったからここに来た訳だけど、ここにあるの?  上手く行きすぎて、私心配になってきたわ」

 

 ヒカルがセレスに細々と尋ねる

 

「うーん、あるのはあるんだけど⋯⋯ 困ったなぁ」

 

 セレスがいつもより自信なさげに言う

 

「この街には、星片がたくさんあるんだ」

 

「はぁ?」

 

 ヒカルは、思わず大声を出してしまった

 反応したイクザクに、慌てて誤魔化す

 ヒカルは小声でセレスに聞く

 

「星片がたくさんあるってどういうことよ」

 

「そのままの意味さ。 星片の気配が多いんだ。 だが、星片は五つしかないはず。 つまり、この多くの気配の中から、本物の一つを見つけ出さないといけないという訳だ」

 

 ヒカルは軽く絶望して、足がふらついた

 たくさんある星片の中から一つを探すなんて、それこそ途方もない時間がかかる

 だが、諦める訳にはいかない

 自分を守ってくれた、助けてくれた兄貴を救うためにも!

 

「たくさんあるなら、なおさら早く行動しないと。 行くよ」

 

 ヒカルの足は自然と早くなる

 

「イッくんは他の街に来るの初めて?」

 

 ヒカルは気を紛らわせようとイクザクに話しかける

 

「イッくんって⋯⋯ 家での仕事で忙しかったですから、他の街に行くなんてほとんどありませんでしたよ。 だけど、こういうのなんか新鮮で楽しいです」

 

 イクザクはニッコリと笑う

 その笑顔にヒカルは元気をもらった

 

「私もあんまり遠出する方じゃなかったから、こんなに未来っぽい街に来たのは初めてかも」

 

 お揃いだね とヒカルがイクザクに言う

 イクザクは、顔を真っ赤にして照れた

 こういうところを見ると、まだまだ子供だと思わされる

 

「ここだ。 この建物の中から星片の気配がする。 だが、危険な気配もしている。 十分気をつけよう」

 

 セレスが星片の気配を感じたのは大きなビルだった

 いくら見上げても頂上が見えないほどの高さだ

 入口には、二人の屈強な男が立っていた

 ヒカルはその男達と面識があったようだが、思い出せなかったので、サクッと二人とも倒した

 その様子をイクザクはガタガタ震えながら見ていた

 子供にはまだ早い光景だったか

 

「後で怒られても知らないからな」

 

 とセレスが再びため息をついた

 

 そうしてヒカル達はビルの中へと入る

 運が良かったのか、元からこうなのかは分からないが人に見つかることなく中に入ることが出来た

 

「くっ⋯⋯」

 

 入ってすぐにヒカルを頭痛が襲う

 

「星片が多すぎるんだ。 これも異変の仕業かもしれない。 ここに長くとどまるのは危険だ。 急いで本物を探さないと」

 

 その後も、ヒカル達は星片をいくつか見つけたが、どれも本物とは違い苦戦していた

 

「このままじゃキリがないわ!  なにか他の手を──」

 

 ヒカルがそう提案すると

 

「いたぞー!  侵入者だ!  捕らえろー!」

 

 入口の男達が伝えたのか作業服の男達が追ってくる

 マズイっ! 

 ヒカル達は必死に逃げる

 しかし、逃げている途中で地面がパカッと割れて、ヒカル達は地下牢に落ちてしまったというわけだ

 

「ハッハッハー!  見事罠にハマったな!  そこで大人しくしていろ!」

 

 男が上から覗き込むようにして言った

 回想終わりっ!

 

「ところで、ここはどこなんだろうね」

 

 ヒカルが何気なしに呟いた

 

「ここは昔、製薬会社だったそうだ。 だけど物理的に崩壊して新しく会社を建て直したらしい。 ちなみに、崩壊させたのは君のお兄さんだ」

 

 ヒカルは苦笑せざるを得なかった

 兄貴、こんなことまでやってたのか

 もしかしたら、私よりも強いのかもしれない

 

「さっきから二人でなんの話をしてるんですか?」

 

 イクザクが話に入ってくる

 そういえば、イクザクには話してなかったな

 兄貴を助けたら、この異世界ともサヨナラするんだ

 ヒカルはイクザクに、自分は違うところから来た

 そして、兄貴を助けるために来たことを伝えた

 

「えぇ!  ヒカルさんって異世界から来たんですか!

 スゲー!」

 

  イクザクが目をキラキラさせて言った

  その様子を見たヒカルは、エッヘンと言った風に大して大きくない胸を張る

 

「いや、連れてきたのは僕なんだけどなぁ⋯⋯」

 

 と、セレスは呆れ顔で静かに言った

 そのセレスをヒカルが光の速さでギロリと睨んだ

 

「⋯⋯。 ここは素直にさせておこう」

 

 その時、セレスが誰かの足音を感じて二人を静かにさせる

 

「静かにっ!  誰か来る」

 

 ヒカルとイクザクは、キュッと口を閉じ息を殺す

 

「あーあ、つまんねぇな。 外は今頃楽しいだろうに、俺だけ地下牢の監視とか、かったるくてやってらんねぇ⋯⋯ってお前!」

 

 ヒカル達を見た監視役の男は特別な反応をした

 

「お前はタースじゃないか!  あの崩落したビルの中よく生きてたな!」

 

 セレスが男を知ってるふうに言った

 

 

 

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