二部 第三章の弐
二人が森の中をゆっくりと進んでいると、大きく開けた場所に出た
「おかしい、ここのはずなんだが」
ここにあるのはヒカルにも分かる
しかし、この場所には何も無い
周りを森に囲まれた不思議な空間だ
「セレス、気をつけて! なにか来るよ!」
ヒカルがそう言った時、大きな地震が突然起きた
その地震とともに上から何かが降ってきた
ものすごい巨体に真っ白な毛並み、それに三つの首が付いている
それは三つ首のオオカミだった
ケルベロスというモンスターを知っているだろうか
それの白いバージョンだ
「三つ首の
ヒカルは白狼をヨシヨシと撫でていた
「キャーー! 可愛い! このフワッフワの毛並みとかもうたまりません! おすわりっ!」
バウッ
白狼はヒカルの指示に従い、おすわりする
その姿を見て、セレスは呆然としていた
「やめろっ! 私は──」
「お手っ!」 バウッ
白狼は、ヒカルの手の上に自分の手を乗せる
「この森を聖地として──」
「ふせっ!」 バウッ
白狼は、頭を下げ姿勢を低くする
「守って──」
「チンチンッ!」 バウバウッ
白狼は、大きな巨体を立ち上がらせた
白狼はそれはそれは見事な芸を三連発見せてくれた
見事な芸を終えた白狼は、三つの首から舌を出しながらゼイゼイと息をしている
「よくも私を弄んでくれたな!」
いや、あなたも結構楽しんでたように見えたんですけど、とセレスは心の中で思った
「ていうか、今現在あなた頭撫でられてますけど⋯⋯」
「よーしよしよし」
ヒカルは、白狼に臆することなくひたすら撫でている
「なぜだ! なぜこいつには、逆らえないんだ!?」
白狼は一人叫ぶ
「それはあんたがヒカルよりも弱いからじゃねぇのか?」
セレスは率直に言った
「私が貴様らよりも弱いだと? フッ 笑わせるな」
「尻尾を振りながら言われても説得力が全くないんだが」
セレスは白狼に言う
「振ってなどいないっ!」 フリフリ フリフリ
そうは言っても、体は正直なようだ
そろそろ遊びも終わりにしてもらおう
「ヒカルー! そろそろケリをつけよう! このままじゃいつまで経っても目的を果たせないままだ!」
「えー! まだ遊びたいよォー」
ヒカルは子供のように駄々をこねる
お前何歳だよ
「ワンちゃんは、もう疲れたって言ってるよ」
「誰がワンちゃんだァ!」
白狼が口から炎を吐き出す
それをセレスは軽くかわす
「こらっ! 人に攻撃したらダメでしょ! めっ!」
ヒカルが、白狼の頭をコツンと叩く
白狼は キュウン と鳴いて倒れた
ヒカル、なんて怪力だ
「なんでかしら、ちょっと動いだだけなのにお腹が空いてきたわ」
ヒカルは自分が倒した白狼をじっと見る
食べるのか? さっきまで可愛い可愛い言ってたヤツを食べるのか?
そんなことは知らないとばかりに、ヒカルは素早く白狼を解体しだした(もちろん魔法を当たり前のように使って)
もちろん、前のギルドでの経験を生かしたのか白狼の牙を残して後は全て食べた
全く、こいつの胃袋はどうなってんだ?
「食べたらレベルアップ! ちゃっちゃら〜 とかないわけ?」
「そんなのないよ。 君にそういう力はないから」
「私の力? 何それ、気になるじゃん」
「いや、なんでもない。 気にしないでくれ。 こちらの話だ」
セレスは何とか誤魔化す
いや、誤魔化せたのか?
「あ! あれが星片かな?」
さっきまで白狼がいた場所に何かが落ちていた
どうやら首輪らしい
おそらく白狼が付けていたのだろう
可愛いところもあるもんだ
ヒカルは首輪に触れる
「ヨシヨシ、お前はほんとにいい子だな」
「ワンッ!」
「おかーさん! こいつが噛んできたァ!」
「まぁ! 危ないわね! 捨ててきなさい!」
「私は犬だったはずなのに、どうしてこんなことに⋯⋯」
ウォーーン
「君に特別な力をあげよう」
「グッ! 私が、私でなくなる⋯⋯!」
「はっ! 今のは白狼の記憶?」
「さあ、僕にも分からない」
ヒカルは首輪に触れた時に、白狼の記憶らしきものを見た
元々、白狼は犬だったらしく、そこから飼い主を何かの拍子に噛んでしまい捨てられてしまった
それから森で一人寂しく鳴いていたら、誰かがやってきて白狼に変えたという話らしい
最後の人物は一体誰なんだ⋯⋯
そんなことを考えているうちに首輪は赤い宝石に戻った
色々と腑に落ちない点はあるが、なんだかんだで二つ目ゲットだ
この後、ヒカル達はエレクトラで一晩過ごしてからエレクトラを出た
その日からエレクトラに魔物が出なくなったのはまた別のお話
「あいつら一体何をしたんだ? そのおかげで魔物が出なくなって、住民達も一安心したからいいんだけど。 ま、とにかくありがとうだな」
アルはもうエレクトラに居ないヒカル達に向けて言った
第三章 [完]
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