二部 第一章の壱

んと最近なんか慌ただしいよねー」

 

「わかるー」 「ほんとそれなー」 「怖いよねー」

  

 女の子達が口々につぶやく

 それもそのはず、最近世界のあちこちで大きな異変が度々起こっているのだ

 

「真夏の国に雪が降りました!」

「速報です!  たった今、日本北部で震度七の地震が発生しました!」

「皆さん見えますでしょうか!  あれがハリケーンです!」

「カラスの大群が住宅地に入り込み、住民は非常に迷惑を感じています」

 

 テレビはこんなのばっかりでつまらない

 大好きなドラマも、ニュース速報のせいで潰れてしまった

 

「今度は南の方で地震だって」

「もぉー なんか色々とあり過ぎない?」

「なんか当たり前になってきてる感じ?」

 

 こんなのが当たり前だなんて勘弁して欲しいものだ

 と思ったのは咲春光さくらひかる

 高校一年生だ

 父とヒカルの二人で暮らしている

 高校の始業のチャイムがなる前に、こうやって話すのがヒカル達の日常だ

 

「ねぇ、ヒカルも何とかしてよー」

 

「何とかって、高校生の私達に何ができるのよー」

 

 ヒカルは友人の言葉を軽く流す

 

「よっしゃー!  フルコンきたー!」

 

 友人の女の子が声を上げて喜ぶ

 どうやら音ゲーをしていたようだ

 世界がこんななのに、ここはとてつもなく平和だ

 このまま何事もなければいいのに、と軽くフラグをたててしまった

 嫌な予感しかしない

 

 バチッ!

 

 教室の電気が突如消えた

 ほら、来た

 

「なになに、停電?」

「まだ外明るいのに?」

「外、めちゃくちゃ晴れてるし」

 

 急な停電に、友人達が少し慌てる

 教室のドアがガラリと開き、担任が入ってきた

 

「原因不明の停電のため今日は臨時休校とする!  気をつけて帰るように!」

 

『やったぁー!!!』

 

 教室内にいた全員がそう言った

 もうちょっと早かったら高校についてなかったのに

 皆はウキウキしながら教室を出ていく

 

「この後どーする?」

「カラオケとか行っちゃう?」

 

「あーごめん、私パス」

 

 ヒカルが申し訳なさそうに言う

 

「家に荷物が届くらしいから、それ受け取らないといけないの。 ほんとごめん」

 

「そっかー、残念」

「いいよいいよ!!  また今度行こ!」

 

「うん!  ありがと」

 

 ヒカルは友人達と別れた

 耳にイヤホンをつけて、ヒカルは歩いて帰る

 聞いているのは『星のカケラ』という曲

 ヒカルのお気に入りの曲だ

 

 家に着き扉を開ける

 相変わらず家には誰もいない

 それもそのはず、父は朝早くから夜遅くまで仕事で忙しいらしい

 どんな仕事をしているのかは一切知らないし、興味もない

 

「はぁーー」

 

 ヒカルは大きく息を吐き、自分のベッドにゴロンと寝転びテレビをつける

 今日こそはドラマを、と思っていたのだが

 

「本日もドラマを中止してニュースをお伝えします」

 

 ヒカルは大きくため息をつく

 また今日もか⋯⋯

 荷物が来るまで暇になってしまったヒカルは、ウトウトしだし眠りに落ちていった

 

 

 ピンポーン

 

 チャイムの音でヒカルは目を覚ました

 そういえば、今日荷物が来るとかいってたな

 ヒカルがいそいそと起き上がり、玄関に向かおうとする

 

 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン

 

 凄い勢いでチャイムが鳴らされる

 ヒカルは少し怖くなった

 本当に開けていいのだろうか

 開けたら、いきなり刺されたりしないだろうか

 そんな不安を押し殺しながら、ヒカルは扉を開ける

 

 扉を開けるとそこには作業服を着た男が二人立っていた

 格好からするに宅配の業者ではなさそうだ

 

「聞きたいことがいくつかあります。 ここではなんですので場所を変えてお話しましょう」

 

 作業服の一人がそう言った

 私に聞きたいこととは何だろう

 私、何かしたかな?

 ヒカルは咄嗟に考えるが全く思い浮かばない

 でも、困っている人を放ってはおけない

 

 ヒカルは作業服の男の後に続く

 

「あのー、どこに行くんですか?」

 

 ヒカルは男達に聞くが、一向に教えてくれない

 一体こいつらは誰なんだ?

 

 男がふと立ち止まり辺りを見回す

 

「ここら辺で大丈夫か」

 

「あぁ、ここなら誰にも見つからないはずだ」

 

 男は口々に言う

 分かってないのはヒカルだけだ

 

 男はヒカルの腕をグッと掴んだ

 いきなり掴まれてびっくりしたヒカルは思わず投げ飛ばした

 男は思い切り背中から落ちた

 

 なんかヤバそうな雰囲気かも

 何かを察したヒカルは急いでその場を離れることにした

 だが、もう一人の男に手を掴まれた

 

「聞きたいことがあると言ったでしょ?」

 

 さっきの男よりずっと力が強い

 振り解けない!

 そんな時だった

 

「その子を離せっ!」

 

 全身を黒いローブに身を包んだ人が男に言った

 その姿を見た男達は チッ と舌打ちをして逃げていった

 

「危ないところだった、全く。 知らない人にはついて行かないって習わなかったのか?」

 

 ローブの人はヒカルにそう言った

 

「でも、困っている人がいたら助けるのが常識でしょ?」

 

 ヒカルは負けじと言い返す

 

「⋯⋯それはいい。 こんなところで話しててもあれだから、君の家に戻ろう。 話はそれからだ」

 

 なんだかローブの人が仕切ってて嫌だ

 そんなことを思っていると、家に着いていた

 ローブの人は、自分の家とばかりにズカズカと入ってくる

 何様のつもりだ

 

「素直なのか、天然なのか⋯⋯。 君のお兄さん・・・・は、もう少し疑り深かったよ?」

 

「何を言ってるの?  私にお兄ちゃんなんて──」

 

 そう思ったヒカルを頭痛が襲った

 何、これ?  今までこんなこと一度もなかったのに

 

「思い出せないかい?  君には兄がいたんだよ。 それも、とてつもないほど妹思いの」

 

 これは言い過ぎか、とローブの人は付け足した

 

「そういえば名乗ってなかったな」

 

 ローブの人は、身につけていたローブを勢いよく脱ぐ

 ローブの中から出てきたのは、一人の少年だった

 だが、服装が最悪だった

 上半身は裸で、下半身には純白の布一枚しか身につけていない

 めくれば、ナニとは言わないが見えそうだ

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