第四章の弐 ~再会~
「ここが街なのか?」
隣街は街というよりかは村という言葉の方がしっくりくる
それぐらい周りが緑に包まれていた
「あれ、私ここ知ってる気が⋯⋯」
ナターシャがボソッと言った
そんなに思い出がないということは言っちゃあ悪いが大したところでは無いのだろう
プレアデスという人はこんなところでどうして店を構えているのだろうか
というか、この村に|(もう村と思うことにした)店なんてあるのだろうか
道なりに進んでいくと古ぼけた店を見つけた
近くで見てかろうじて『プレアデスの武器屋』と読めた
「ここか⋯⋯」
「廃墟の件を思い出しますね」
「ヘックシッ!」
ルピーさんがくしゃみをした
ショウが店の扉を恐る恐る開けると、ガタンッと音を立てて扉が外れた
おい、ナターシャ。 そんな目で俺を見るな
慌ててショウが直そうとすると、奥から牛頭の人が出てきて
「ああ、そのままで大丈夫だよ」
と優しく言ってくれた
怒られなくてよかった
ここにいるということはこの人がプレアデスさんなのだろう
「申し遅れたね、私はプレアデス。 一応ここの武器屋の営業をしてるんだけど、見ての通りさ。ハハッ」
中に入れてくれたプレアデスさんが残念そうに笑った
ショウとナターシャ以外に人は見当たらない
あまり上手く行ってないのだろうか
「あ、俺はサクラ ショウでこの子が」
「ナターシャ=フォリバーです」
ショウ達も自己紹介する
「あぁ、君が⋯⋯」
プレアデスさんがそう呟いた
ショウとナターシャの二人から何か感じとったのだろうか
「すまない、少し思うところがあっただけだ。 忘れてくれるとありがたい」
プレアデスさんは慌てた様子で言い、さらに続けて言う
「ところで、ここら辺ではあまりみない顔だけどほかの街から来てくれたのかい? それは疲れただろう。 今お茶を入れてくるから。 大したものは無いけどゆっくりしていってくれ」
そう言って奥へ戻っていった
店はボロいが武器はどれもピカピカに磨かれている
余程武器に愛着があるのだろう
しばらくして二つのカップを盆に乗せたプレアデスさんが戻ってきた
「お客様に言うのもなんだけど、そこら辺にある椅子を使ってもらっていいから」
ショウはそこら辺にあった椅子を手元に寄せて腰掛ける
が ガクンッ
ショウが座った椅子は壊れてもはやただの木屑と化した
この微妙な雰囲気どうしてくれるんだよ・・・・・・
「私の椅子で良ければ使ってくれ。 本当にすまない」
プレアデスさんが謝ってくる
ショウはプレアデスさんが差し出した椅子に座る 高い
「お茶を入れるなんて何年ぶりだろうか。 そんなに上手ではないんだが、どうかな?」
お茶の感想をショウとナターシャに聞いてくる
そう言われても、ショウはそこまでお茶に詳しい訳では無いのでなんとも言えないが と思いつつ口に含む
普通に美味しい
ヒカルに失礼かもしれないがヒカルの入れてくれるお茶よりも上だ
ナターシャも美味しそうな顔をして飲んでいる
そんなナターシャをプレアデスさんはボーッと眺めていた
「ところでショウ君と言ったかな? 武器とか持ってないようだけどどうやって今までやってきたんだい? 冒険者たる者、いつでもどこでも戦闘ができるようにって言われなかったかい?」
言われた覚えはないが
「武器なら創造魔法で出せますから。 こういう系統の魔法、俺得意なんです」
とショウは陽気に答えた
しかし、プレアデスさんは
「もうそんな便利な時代になったのか」
と呟いたあと、
「だが毎回毎回、創造魔法で武器を出すのも大変だろう。 良ければこの中から好きなのを選んでいくといい。 店はボロいが武器は一級品の物ばかりだから ナターシャちゃんも遠慮せずにどうぞ」
プレアデスさんはナターシャにも話を振った
「い、いえ 私は大丈夫ですから。 魔法使いなのに魔法を使うと皆さんに迷惑をかけてしまうので⋯⋯」
プレアデスさんが訳が分からないと言ったふうに首を捻る
「実は私、魔法使いなのに上手く魔法を制御出来なくて魔力が暴走してしまうんです。 だから、私にはもう魔法を使う資格なんて──」
「すまないっ! 本当にすまないっ!!」
ナターシャの話の途中なのにも関わらずプレアデスさんは頭を地面に擦り付けて土下座で謝っていた
今の話のどこにプレアデスさんが関係していたのだろうか
ナターシャは突然謝ってきたプレアデスさんに驚きながら言う
「謝らないでください! 別にプレアデスさんが私に何かしたわけじゃないんですから!」
「私を許してくれるのか?」
「許すも何も、私はプレアデスさんに何もされてないんです! だって私とショウさんは今日
その言葉を聞いたプレアデスさんは正気に戻った
「そうか、そうだったな。 取り乱してしまいすまない。 お詫びと言ってはなんだが、自動的に魔力を制御してくれる物なら置いてある。 普通に使う分には問題ないはずだ」
プレアデスさんはナターシャに一本の杖を渡した
何の変哲もない杖だが杖の頭に赤い宝石が埋め込まれていた
その杖を手にしたナターシャは泣いて喜んだ
そんなナターシャを見るプレアデスさんの表情はまるで自分の愛娘でも見ているかのような優しい顔だった
ショウも自分の剣を選びお金を払おうとすると断られた
「こんなところにまで足を運んでくれた礼だと思ってくれればいい」
と言うので仕方なく引き下がった
「剣術も教えているんだがどうかな? もちろん代金は取らない」
ここまでしてもらって剣術までも教えてもらうのもなぁ、と思ったがヒカルのことを思い出しお願いする
「もっと腰を低く! 脇を閉めて! そこで一歩前に出て突く!」
プレアデスさんとショウの剣術特訓は三時間も続いた
「もう日が暮れる。 ここまでにしておこう。帰る時には真っ暗かもしれないから足元に気をつけて。 それから──」
プレアデスさんは一拍ためていう
「ありがとう」 と
プレアデスさんが誰に、どういう気持ちでその言葉を放ったのかは分からないがショウ達はプレアデスさんに頭を下げて別れを告げた
「行ったぞ」
プレアデスはそう言った
「本当にいいんだね?」
店の後ろで身を潜めていたカリーナがプレアデスにそう告げる
「ああ、最期にあの娘に会えてもう思い残すことは無い」
プレアデスは満足そうに言った
「そう、わかったわ」
カリーナはプレアデスの胸に手を当てて、力を込める
すると、プレアデスの体がスっと消えた
「本当、バカな男ね。 あの娘が苦しんで欲しくないからって自分の持つ全ての魔力を使うだなんて⋯⋯」
カリーナはプレアデスが消えた空を見上げて言った
そして、そのまま空へ飛んでいった
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