第一章の弐 ~遭遇~

「ったく・・・・・・ あいつらは何者だったんだ?  ヒカルを連れて何をするつもりなんだ?」

 

 ショウは何も出来なかったことを後悔しつつ肩を落として家に帰る

 家の鍵を開けながらどうやったらヒカルを助けられるのかを考えていた

 だが、助けると言ってもどこへ行ったかすら分からない

 ショウは大きくため息をつく

 

「ん?  鍵が空いてる?」

 一瞬ヒカルかと思ったが、目の前でさらわれたのを思い出しガッカリする

 ならば、泥棒か?

 しかし、ここら辺は犯罪者や変態とかあまり見ないけどなぁ

 何かあっては遅いと思ったショウは警戒しながら玄関を開ける

 出かける時に、電気は消したはずなのに今はリビングの電気がついている

 それに性別までは分からないが人の気配もする

 ショウは用心のためと玄関に立てかけている金属バットを手にし、リビングに近づく

 ショウが大きく深呼吸をする

 リビングに入るなり、ショウは近所の迷惑など考えずに大声を上げて金属バットを振り上げる

 

「うわああああああああぁぁぁ!!!!」

 

「きゃあああああああああぁぁ!!!!」

 

 ショウの声に驚いたのかは知らないが女の声がした

 だが、女だからといってショウは油断しなかった

 ショウは周りを見回し声の主を探す

 ふと、目の前にはショウと同じくらいの女の子がいた

 燃えるような赤い瞳と髪を持ち、真っ赤なドレスに身を包んでいる

 まるで全身で太陽を表しているかのような子だ

 チラチラ見える脚が少しエロい

 女の子がショウに気づき話しかけてくる

 

「今、私のこと変な目で見てたでしょ」

 

 図星をつかれたショウは慌てて誤魔化す

 

「い、いや別に・・・・・・」

 

 女の子は怪訝そうな顔をしていたが、何を思ったか大きく息を吐く

 

「ふぅーー まぁいいわ。 それより今手に持っているバットってまだ使ったりするのかしら?」

 

 そう言われてショウは金属バットを見る

 その金属バットは所々がベコベコで斜めに折れ曲がっていた

 ショウはそれを見なかったことにして静かに床に置く

 

「んんっ。 それはともかくお前は誰だ?  ここに当たり前のようにいるがここは俺の家だ。 不法侵入で訴えるぞ」

 

 ショウはその女の子へ少し強めに言う

 しかし、女の子はそんなの知ったこっちゃないという顔で

 

「用があるからに決まってるじゃん!  用がなければこんなとこになんか来ないわ!」

 

 こんなところとか言うなよ

 悲しくなるだろ

 ショウは心の中でそう思った

 

「そうね、こんなところって言ったのは謝るわ」

 

 なんだ、意外と素直じゃないか

 てか、俺の心の声を読むな

 

「もういい。 で、だ お前は誰なんだ?」

 

 これ以上話すのも嫌になってきた

 

「よくぞ聞いてくれた!  我が名はイータ=カリーナ!  星の女神である!」

 

 は?

 ショウは思わず呆然とした

 そして、スマホを取りだし|(119)に電話をかける

 

「ちょ、ちょっと!  さりげなく|(119)に電話かけるのやめてくれる?  決して怪しいものじゃないから」

 いや、まず人の家に上がり込んでる時点で十分怪しいんだけどな

 

「だからといっていきなり私は女神です、って言われてはいそうですか。それは凄いですねって納得できる人がいてたまるか!」

 

 ショウが勢いよく反論する

 そんなショウを見てもカリーナは何処吹く風だった

 

「あら、そんなことないかもしれないわよ?  地球上いや宇宙上に探せば何人かはいるはずよ」

 

 こいつ、なかなかめげないなぁ

 

「そんなに女神女神言うなら証拠のひとつでも見せてみろよ!  あぁ?」

 

 ちょっとヤンキー口調になってしまった

 ショウがそういうと、カリーナは真顔でもはや原型を留めているのが奇跡なぐらいボロボロな金属バットを指さす

 

「ま、まぁ 元々長い間使ってたからな。こうなってもおかしくはないだろう」

 

 そうショウは思ったが、確かに金属バットがこうも簡単にグニャグニャになるなんて現実にはありえないことだろう

 しかし、これだけで信じるほどショウは甘くなかった

 そんなショウを見たカリーナは呆れたというように首を横に振る

 

「そんなに信じたくないのだったら仕方ないわね。 あなたの願いを何でも一つだけ叶えてあげるわ。 それだったら信じてくれるかしら?」

 

「そ、それなら信じるかもな」

 

 結構食い気味に言われてショウは頷くことしか出来なかった

 それからショウは小一時間ほどウーン ウーンと唸って『大量のお金が欲しい』と言った

 

「ものすごくありきたりだけど、それでいいなら」

 

 と、カリーナは呆れた顔をしながら指をパチンと鳴らす

 その瞬間、ショウの部屋はお札でいっぱいになった

 ショウが大喜びする姿を見たカリーナはすごい憐れむような目で見てくる

 

「んんっ、わかったよ。 これで君が女神だということを信じるよ」

 

 これ以上こいつには変な印象を持たれたくない

 そうショウが言うと、カリーナが大きくため息をついて話す

 

「さて、私のことを女神だと信じてくれたことだし本題に入るわ。 本当は、もっと早く入りたかったんだけどね」

 

 カリーナがショウの方をジトーっと見つめる

 ごめんって・・・・・・

 

 

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