茶の香りと出会い2
生徒は僕を含めて3人。
1人は少しチャラそうな男子生徒。と言っても髪型は校則違反にならないスポーツ刈りで割と普通の生徒。でもなんて言うか雰囲気がチャラ層というかなんというか。まぁ、人は見かけで判断してはいけないと言う。だからもしかしたら彼はチャラくないかもしれない。
そしてもう1人は真面目そうな女子生徒だ。綺麗に手入れされた長く綺麗な髪。隣の男子生徒と色々話しているけど一体どういう関係なのだろう。
「それではまずは菓子を頂くとしようか」
「「「えっ?」」」
すると先輩方が菓子の乗った皿を運んできた。今回の菓子は春らしい桜の様な
上生菓子とは一番上等な和菓子の事でありよく大きなお茶会などに出てくる。その お菓子がまさか部活で頂けるなんて。
「さぁ、遠慮するな」
「分かりました」
僕は皿を持ち、上生菓子を半分に切った。
「ほう、そんな事まで知っているのか」
僕の切り方は断面は自分の方へと向けて切ったのだ。
「一通りのマナーは学びましたので」
「そうか」
「あ、あの……」
「ああ、すまない。菓子を食べる時は上生菓子の場合半分に切って食べるんだ。その時の切り口は自分の方向に向けて食べ物のがマナーなのだ」
「へぇ~、そんな学ぶがあるんだな」
「私、そこまで知らなかった」
「まぁ、これから学んで行けばいい」
そう、ここは茶道を学ぶ為の部活。急がなくても自然とマナーを覚えていく。そんなに心配するような事じゃない。
そして菓子を食べ終えた僕たちに茶が運ばれてくる。
それぞれ点てたであろう先輩方が自分たちの目の前の茶を置きだした。
「今日は特別に私が点てた茶だ。しっかり勉強しろよ」
僕は進藤先輩の茶を受け取った。
「は、はい。ありがとうございます」
先程の先輩たちの反応を見るからに進藤先輩が褒めたり茶を出すことはとても珍しい事なのだろう。そんな貴重な体験を出来るなんて。
「お点前頂戴いたします」
口に含むと茶の香りが一気に広がり、先程食べた菓子の甘味と茶の苦みが程よくマッチしていてより茶の美味しさが引き立てられる。
僕が点てるお茶とは全然レベルが違う……。
「ありがとう、ございました」
こんなにレベルが高い先輩に僕はなんて粗末なお茶を……。
「取り敢えず今日は初日だ。本格的な活動は明日からする」
そういって先輩たちは器具などを片付け始める。
「それと3人ともこれは入部届だ。本気でやりたいなら明日書いて持ってくるといい」
入部届……。
僕は鞄からペンを取り出し、名前を書き先輩に渡す。
「明日までなんて待てません。ぜひこの後の活動にも参加させてください! 」
「意欲が高いのは結構だが参加を許す事は出来ない」
「ど、どうしてですか!? 」
「ハンコ。親御さんにちゃんと許可をもらってからなら許す」
そういわれて僕は入部届に目を通す。
注意:保護者からのサインとハンコを上記に記載の上、部活動に入部を決定します。
「それではまた明日、ここで待っているぞ」
「は、はい……」
興奮した頭を冷やし、僕は入部届を鞄にしまう。
そして茶道部の部室を後にした。
……は、恥ずかしい~。少しでも早く上手くなりたいからって張り切って出したらあんな事言われるなんて。というかそれぐらいちゃんと気づくべきだろ僕。
他の2人も「まじかこいつ」みたいな顔してたし。あー、恥ずかしくて死にそう。
「なあ、折本」
振り返ると先程一緒だった2人んも姿が。
「な、何ですか」
もしかしてお前痛い奴だなとか言われたりする?
「お前凄い奴だな」
「えっ? 」
「ごめんな、急に。あ、
「わ、私は
「おい学校ではその呼び方禁止だろ」
「ご、ごめん」
成程、幼馴染だったのか。さっきの様子もそういう事か。
「まあ最初は本当に付いてきただけだたんだよ。でもよ先輩たちの姿見てると何て言うか格好いいと思っちまってよ。だから上手くなりたいって思ったんだ。でもみて分かると思うけど俺たち初心者でよ、色々教えてくれねーか?
「私からもお願いします。ちょっとでも早く上手くなりたいので」
教えてほしいか。でも僕もそこまで上手ではなし、つい1カ月前に始めたばかり。どちらかと言えば僕も初心者なのだが……。
「最低限必要な事なら……」
「そうか! 助かるぜ折本」
その後2人と連絡先を交換し、図書室へと向かった。理由は勿論茶道について教える為である。
■■■
「それにしても凄いやるきのある1年生でしたね」
「ああ、あれだけやる気があるならすぐに上達するはずだ」
「それにしても進藤さんが他人に茶を振る舞うなんてどういう風の吹き回しですか? 」
「副部長、君は私の事をなんだと思っているんだ? 」
「お茶以外は興味がない人ーー」
「良し今後君には茶を出さない様にしよう」
「う、嘘です! 」
「はぁ。それで何故私が茶を振る舞ったかだったな。それはだな」
「それは……」
「昔の私の似ていたからだよ」
「昔の進藤さんに? 」
「そう、純粋で真っすぐな彼の姿が」
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