第5話 〔歌〕ヲ歌イマス

「いちごちゃん! 何処どこに行くの!?

 危ないから帰ってきて!!」


 

 きらりの祖母がさけんだけれど、〔いちごちゃん〕は【ベヒモス】のもとへと走っていった。

 〔戦闘用〕ではないと言っていたが、やはりロボット。力は人間よりもあるらしい。成長しすぎて太いつるをのばしている作物さくもつたちを、なんなく引きちぎりながら〔いちごちゃん〕は進んでいっていた。



(わたしのせいだ! 

 『めからビームをだして!』といったから

 いちごちゃん、いっちゃった!!

 いちごちゃんが こわれたら どうしよう!?)



 きらりは、泣きそうになりながら〔いちごちゃん〕が走っていった方へと、足をみ出した。



きらり

 コラ! お前まで行くんじゃない!!」



 父、〔井中いなかひろし〕がさけぶも、大きくそだった作物さくもつたちが邪魔をして、走って追いかける事ができなかった。



「くそっ!

 庭や駐車場まで、野菜がえてる!!」



 きらりは5歳の体の小ささをいかして、野菜の根元ねもとのあたりにできている隙間すきまを進んでいった。






「アナタハ 何者ナニモノデスカ?

 タダノ〔ゾウサン〕デハ ナサソウデス」



 まず、〔いちごちゃん〕は、植物の成長をうながす能力を持ったゾウに質問してみた。



ワレハ【ベヒモス】。空腹ヲ満タス者。

 人ハ、我ヲ【悪魔】トモ、〘豊穣ほうじょうの神〙トモ言ウ』


「ソウデスカ。

 デハ、モトイタ世界へ帰ッテクダサイ。

 〔マスター〕ガ、怖ガッテイマス」


『ダメ。

 オ腹イッパイニ ナラナイト 帰ラナイ。

 オ腹イッパイニナッタラ、アノ魔法陣デ、帰ル』



 そう言って【ベヒモス】は、そこから少し遠くにあるアイドルをまねいての10万人コンサートの会場のステージを指差ゆびさした。

 どうやら、あの舞台に【ベヒモス】がもといた世界に帰るための魔法陣があるらしい。

 〔いちごちゃん〕は、しげ作物さくもつをかき分け、ステージへと急いだ。






 2つの横長よこなが噴水ふんすいの後ろに、大きなステージはあった。


 〔いちごちゃん〕はそこに、焼けげた魔法陣を確認した。

 ライトの真ん中に魔法陣があるので、照明が偶然ぐうぜん魔法陣をえがいてしまったのだろうと推測すいそくした。



「コレヲ【ベヒモス】の近くに照明しょうめいを使ってえがいて、魔法陣の中に移動させたら、すべて解決」



〔いちごちゃん〕はステージのそでから舞台裏に入り、何やら機械が沢山たくさん置いてある所にたどりついた。

 そして、耳の後ろをパカッとけて、ワイヤレスで電波を飛ばすための小さな機械を差し込んだ。



『博士ガ 作ッテクレタ プログラム。

 歌ヲ歌ッテイル間ハ、自由ニ照明ヲ動カセルシ、体モ軽クナル。キットデキル』



 歌う曲は何でも良い。アイドルが歌う予定だったものを適当に選ぼうとしたら、1つの曲が目に止まった。


 [ツンデレ☆ラブビーム]

 それは〔ビーム〕という言葉がついている歌……。



「……目カラ〔ビーム〕ヲ出セレバ、〔キラリ・マスター〕ガ、キット笑顔ニナル……」





 20:21

 山の中の、異様いよう作物さくもつしげった田舎町いなかまち

 10万人ライブのために設置された特設ステージにライトがともる。


 【ベヒモス】におびえた町の人達は、家の中からライトアップされた広場の方向を見た。



 ♪チャラリラリンリン リラリラ ララ〜♪



 前奏ぜんそうとともに、〔いちごちゃん〕は踊りながら遠隔操作で【ベヒモス】の近くに、照明で魔法陣をえがこうとした。



(ハ! ダメデス!!

 平面ガアリマセン!

 作物サクモツウエニ、魔法陣ヲカケマセン)

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