四 幼い狙撃手
時が経ち、僕は中学に上がった。
それと同時に、その年だと友達との遊びも増えるだろうとのことで、両親からのサプライズで携帯を貰った。
中学では友達もある程度でき、早速貰った携帯で友達登録をした。僕の席の前の彼は拓海という。
「ゲーセン行こうぜ!」
彼は非常にうるさかった。
「前にも言ったけど、僕は無駄遣いは避けたい。お金は大事だ」
毎月貰えるお小遣いは大切に使いたい派だ。財布に幾らか入れてるとはいえ、使うつもりは到底なかった。
「えー、つまんねーの。何か好きな遊びとかねーの?」
「―――射的?いや、射撃ゲームかな」
その言葉に反応し、拓海は目を輝かせた。
「射撃!?ってことはFPSだよね!?俺もそうなんだよ!一緒にやりに行こうぜ!」
・・・ふむ。
すると彼は僕の腕を掴み、強引に連れて行く。
「これにしよう!」
拓海が選んだゲームは、館に取り残された二人組がゾンビに襲われそうになるが、手持ちの武器を駆使して脱出を図る、と言うもの。一人称FPSゲームだ。
彼の顔が驚嘆する表情に変わるのに、そう時間はかからなかった。
弾を外すことはほぼなく、ノーダメージクリア。
「―――お前、大会優勝者か?」
「いや、大会優勝者はもっと強い」
去年の夏から、猛練習した。あの人に近づくために。射的を上手くなろうと調べていくうちに、ビデオゲームに行き着いた。
毎日練習すれば、こんなものである。
「歴戦の猛者みたいな顔してるぞ・・・」
「気のせいだよきっと」
それから僕らは暫くゲームを楽しんだあと、解散した。家は反対方向なので、彼とは反対の道である。
今はまだ春。そろそろ夏に入ろうとしている時期だ。風は暖かく、空は少し曇っている。
去年の夏。あの日の彼女の狙撃姿が脳裏から離れない。あの姿を目指して、今まで練習を積んできたのだから。しかし・・・。
「このままでいいのだろうか」
正体のわからぬ少しの不安が、僕の中で渦巻いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます