第伍話
俄に騒がしくなって、
「おぉい、いるかァ! 情報屋ァ!」
荒々しい男の声が響く。
ここは大宅市の廃工場である。元々は大企業の工場だったが、神秘都市化によって従業員がいなくなり、最終的に放棄された廃屋。その最奥部で彼女は寝起きしていた。
瓦礫に隠れた壁の向こうで、声の主がこちらの反応を伺っているのがわかる。
時計を見る限り、時刻はまだ朝の5時。こんな非常識な時間に訪ねてきたのは初めてだな、などと思いながら道を塞ぐ巨大な瓦礫――勿論わざと置いてある――を退かし、男の前に姿を見せる。
声は一人だけだったが、男には連れがいた。声の主には覚えがあったが、連れの男には見覚えがなかった。
「こんな時間に何か用かな、
曽我は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「緊急で情報が欲しい。金なら払う」
「……分かってると思うけど、無いものは売れないよ」
「ある分だけでいい。売ってくれ」
何やら相当焦っているらしい、ということは伝わった。なにか一つでも取っ掛かりが欲しいというような、藁にもすがる気持ちが透けてみてとれた。
「曽我、本当にこんな小娘が腕利きの情報屋か?」
連れの男が口を開いた。
「どう見てもただのガキだ。裏社会に精通してるようには見えねえ。そんな無防備なカッコで、俺達の周りを嗅ぎ回れるもんか?」
そう言われて瑠依は己の出で立ちを思い起こした。なるほど薄着ではある。全て黒で統一した、キャミソールにミニスカート、そしてニーハイブーツ。武器を隠すところもないし、防御力もほぼ皆無だ。瑠依自慢の長身とスタイルの良さとて、物理的な武器にはなり得ない。
「そうやって油断した奴が喰い物にされていくんだって、お前も知ってんだろ」
瑠依が何か言う前に、曽我が答えた。曽我は彼女のお得意様というやつの一人で、これまでにも何度か対立した組織やらの情報を何度か売っている。ここで彼女の機嫌を損ねたくないのだろう。
「見た目なんて、僕の仕事には何の関係も無いな。今後とも情報屋の
言いながら名刺を渡す。
「ついでに、もし僕が本当にただのガキだとするなら、こんなところを生活拠点にはしない。危険すぎる」
瑠依の言葉に、連れの男は舌打ちした。
「だからこそ有能には見えねえな。なんでこんなところに住んでやがる」
「その質問はつまり、僕からその情報を買おうってことかな」
男はもう一度舌打ちした。瑠依は小さく笑った。
「冗談だよ。こんな情報には1円の価値もない。ただの趣味でここに住んでるってだけのことだからね」
瑠依はそう言いながら手近な瓦礫に腰を下ろすと、改めて曽我の方へ向き直った。
「欲しい情報ってのは?」
「これについて、全て知りたい」
そう言って曽我がスーツのポケットから出してきたのは、四角い箱のような物体だった。それは掌に収まるサイズで、何かの機械のようにも見えた。
「エーテルガジェット……」
思わず呟いた。途端に男二人の顔が明るくなる。
「やっぱり知ってたな。これは何だ? どうやって使う?」
曽我が早口に尋ねた。瑠依は眉を寄せた。
「その質問に答える前に、こちらから一つ質問がある。それに答えられないなら情報は売れない。これ、どうやって手に入れた?」
険しい声で質問すると、男二人は顔を見合わせた。
「……
「右に同じだ」
瑠依の態度の変化に困惑した様子で、男達は答えた。
「……そうか。それは、極めて危険なモノだ。体内に
「魔人?」
「そう。魔獣化した人間。並外れた力を持つが、理性が失われる。当然、敵性として神衛隊に処分されることになる。だから、エーテルガジェットは特別な許可の無い人による使用が禁止されている」
男達は再び顔を見合わせた。
「じゃ、どうやって使うんだ?」
曽我が尋ねるも、瑠依は肩をすくめた。
「その情報は売れないな」
連れの男が立ち上がり、スーツの内から拳銃を抜いた。
「調子に乗るなよガキ」
「おい止せ
曽我が制止するのと、瑠依が動くのは同時だった。瑠依が虚空に手を伸ばし、何かを掴むような動作をすると、名護の首が掴まれたように上へ持ち上げられた。
「さっき曽我さんに言われたでしょ。油断した奴が喰い物にされるって。聞いてなかった? それとも自分のことだとは思わなかった?」
掴んだ手を横へサッと払い、名護を投げ飛ばす。名護は瓦礫の山に突っ込み呻き声を上げたが、瑠依はそちらに見向きもしなかった。こんなのはよくあることだ。敢えて注目するようなことでもない。
「もし僕がそれの使い方を話したら、何かあったときに僕にも責任が及ぶ。だから僕は売らない。危険なものだと忠告はした。後は自分でどうにかして」
曽我に向かってそう言うと、瑠依は立ち上がって手を振った。もう帰れ、という合図である。
「おい、代金だ」
曽我が来たときから手にしていたジュラルミンケースを掲げる。しかし、瑠依は興味を示さなかった。受け取らないほうが後々面倒事に巻き込まれる恐れが少ないという考えもあった。
「要らない。情報を売ったというより、忠告しただけだから」
再度ひらひらと手を振りながら、寝所へ戻った。
四時間後、再び瑠依は目を覚ました。
元は事務室か何かだったと思しき部屋を改装、或いは改造し、秘密のアジトと化している。建物の他の部分は完全な廃墟だが、この部屋だけは綺麗に整えられていた。
曽我も名護も勿論いない。静まり返っている。
布団代わりに掛けていた黒いコートに袖を通し、ドライビング用の黒いハーフフィンガーグローブを嵌める。
寝室の横に積み上げられた瓦礫をぐるりと回り込んだその後ろに、一台の大型オートバイが停めてあった。勿論、ただのバイクではない。瑠依が手ずからカスタマイズした特別なもので、ガソリンではなく瑠依の
瑠依は躊躇わずに跨り、エンジンをかける。脚を露出した状態でのバイクの運転は安全上勧められない行為だが、瑠依は気に留めない。ヘルメットを着用することすら稀だ。あくまでも彼女が特別なのであって、いくら神秘都市であっても、他の者が同じことをすれば当然罰せられる。
スロットルを回し、勢いよく発進。マシンから服装まで黒尽くめで、ヘルメットは着けず脚剥き出しの少女となれば、明らかに不審者だ。そんな状態でバイクを乗り回す奴はいない。そも違反である。
だが、瑠依の能力によって、誰も彼女に注目しない。透明になっているわけではないし、誰の目にも止まらぬ超スピードというわけでもない。道行く全て人から普通に見られている。だが、それがおかしいということを意識出来なくなる。そうやって何をしてもそれが普通だと認識されることで、瑠依は様々な場所に入れるし、様々な情報を得られるのだ。
だから武器を携行する必要もないし、服装が奇抜でも露出が多くても問題はない。尤も、武器に関しては他の理由もあるのだが。
「こんな便利な能力、使わなきゃ損だよ、茉莉花ちゃん」
走りながら呟く。勿論、誰かの耳に届いたとしても、その意味を考えられる者などいない。
見るからに危険な格好だが、彼女の躯は交通事故程度で動かなくなるほど柔ではない。運悪く激しく怪我したとしても、即座に回復させられる能力も持っている。そもそも汎ゆる乗り物を乗りこなす能力を持っている以上、バイクによる怪我の心配は無用、するだけ無駄というヤツだ。例え濃い霧が立ち込めている今でさえも。
コートをはためかせ、髪を靡かせ疾走するマシンは、やがて舗装された道路から外れて山中に入った。アスファルトで舗装されていないというだけで道は道なので、別段無理のあることではない。
その終着点は、城だった。場違いな洋風の城。それがそこにあることは認識できるが、それを異常と思わせない城。まさに、瑠依が自分に使用した能力によって守られていた。
誰に咎められることもなく、瑠依はその中へと入っていった。
奈以亜瑠羅は、円卓の間で書類作成に勤しんでいた。先の戦いで失った部下の補充のため、用意した人材を神衛官にするための書類である。
現在、この城に住んでいるのは瑠羅一人。他の人物がいる筈はない。
だが、足音がした。隠す気のない、堂々たる足音が。
「……誰だ」
ゆっくりと立ち上がり、ホルスターから拳銃を抜く。こちらの方が剣よりも脅しには向く。
ドアがゆっくりと、ひとりでに開く。
そこに居たのは、見覚えのある女だった。
見た目には十七、八頃に見えるが、間違いなくもっと上だろう。背は女性としては高い方で、恐らくは例の
「『オブシディアン』……」
名前は知らない。知っているのはコードネームだけだ。
最後に会った時と見た目には殆ど変わっていない。黒いキャミソールに黒いミニスカート、黒いニーハイブーツと露出度高めの服を着ている癖に、その上から黒いロングコートを羽織るセンスが、瑠羅は嫌いだった。見せたいのか見せたくないのかどっちかにしろよ、と。見せることを意識したお洒落なキャミソールを着てるのも気に入らなかったし、男ウケを狙ったようなわざとらしいプリーツスカートにもうんざりした。何年か前に流行った韓国アイドル風のやつではなく、セーラー服か何かのスカートを思い起こさせるようなやつだ。自分もスカートを履いてはいるが、それはあくまで邪神的利便性のためであって、男に媚びるためではない。
話を女に戻すと、背中にかかる程長く癖のある黒い艷やかな髪もやはり殆ど変わっていない。一方の瑠羅は彼女と同じ黒髪ロングなのが嫌でセミロングにしたうえ赤いインナーカラーも入れているので、あの頃とはだいぶ印象が違っているだろう。
あの時と違ってバイクに乗ってきたからか、手には滑り止めと思しき半指のドライビンググローブを嵌めていた。これも黒い。何でもかんでも身につけるもの全て黒いものに拘るせいでコードネームが『
ちなみに彼女と出会う前は瑠羅も同じようなものだったが、彼女と被るのを嫌って今は赤に拘っている。
「そうだよ。久し振りだねえ、奈以亜瑠羅ちゃん。君が神衛官になる時に会って以来だから、六年振りかな? あ、そうそう。僕、今はこう名乗ってるから」
コードネーム『オブシディアン』の女はコートのポケットから名刺を取り出し、瑠羅へ向けて投げつけた。
「『情報屋 夢見川瑠依』……ふざけてるのか?」
「まあね。奈以亜瑠羅だって似たようなものだろう?」
「……否定は出来ないけど。それより、どうやってここまで入って来た? 侵入者に気付かない程怠けてるつもりはないんだけど」
瑠羅が尋ねた。瑠依は笑った。
「君がこの城を隠しているのと同じ方法で、自分を隠して入って来た」
「は?」
「まあまあ、そういうこともあるよ。しかし、しばらく見ない間に出世したねえ。二つ名なんて貰っちゃって。『赤の女王』だっけ。良かったねえ。僕の『
「!」
瑠羅は引き金を引いた。類稀なる射撃技術によって、狙い過たず瑠依の眉間に命中したが、弾丸が瑠依の顔を傷つけることはなく、そのまま落下した。
防御の魔術でも似たようなことは出来る。だが、瑠羅は本能的にそれが自分の持つものと同じ能力であると分かった。
得体の知れない怒りと焦りに駆られて、仮面を剥ぎ取った。その下の目は赤く染まり、邪神の力を一部引き出しているのは明白だった。だが、瑠依がかき上げた前髪の下から覗く右眼もまた、赤く輝いていた。
思わず舌打ちする。
「チッ。やっぱりそういうことか」
瑠依は頷いた。
「君は確か、化身として『自分の周囲で死んだ者の存在を奪って自分のものにする』という力を持っていたね。僕が持っている力は、『化身が持つ力を己のものにもする』というもの。勿論君の力も使えるし、君が収集した力もまた使用可能というわけだ」
瑠依は楽しそうに語った。
「『或るナイアルラトホテップの化身が出来ることなら、コレに出来ないはずはない。』そう言われ続けて僕は創り出された。だから君と違って、ヒトとして産まれてすらいない化身だ」
瑠依は一歩踏み出した。
「ヒトとして産まれ、大した力も持っていなかった君と、最初から化身として生み出され、汎ゆる化身の力を自由に行使出来る僕、どちらの方が化身としての格が上だろうね」
「お前が本体に一番近い化身だと言うつもりか」
「いいや、そうは言わない。あくまでも本体に最も近いのは君、正確には君と同化したアレだ。僕は言うなれば『最も強大な化身』さ」
瑠依は笑い、瑠羅はまた舌打ちした。
「で、何しに来た。正体を明かしにわざわざ来たのか?」
「惚けるなよ。君、アレ解放しただろ」
瑠依の口調に殺気が乗った。当然瑠羅は気付いているが、一切反応を示さなかった。
「僕が君を親衛隊に入れた時、アレを解放したら処分すると宣告しておいたはずだ。本体に最も近い化身だからと言って、僕の邪魔をすることは許さないと、あの時僕は明言した。そして君はそれを了承した。契約を反故にすることは許されない」
「そうか。じゃあ早速殺し合うか?」
瑠依は頭を振った。
「いいや。今日はもう帰る。今回はあくまで警告だ。昨日の件については事情を聞いている。だから見逃してやる。でも、次は容赦しない。同じ状況であってもだ。くれぐれも僕を失望させるなよ」
そう言うと瑠依はクルリと踵を返し、円卓の間を出て行こうとした。
「……じゃあ、その時は
瑠依は部屋の入口で立ち止まり、首だけで振り返った。
「楽しみにしてるよ、本体に最も近いだけの化身」
それだけ言い残し、瑠依の姿は消えた。
「チッ。相変わらず嫌になる程そっくりな奴。中身だけ見ればほとんど
瑠羅は呟き、疲れ切った様子で椅子に座り込んだ。
「……泣けるぜ」
そう呟くやっとだった。
気の毒にもくたびれてしまった瑠羅とは対称的に、瑠依の心は軽かった。尤も、吹き荒れた嵐の方が疲れるのであれば、初めから吹き荒れたりなどするなという話である。
瑠依にとって、瑠羅は倒すべき相手だった。化身同士の思惑が交錯してしまうことは残念ながら儘あるが、これもその一つと言えるだろう。本体に最も近い化身であるからこそ、瑠依の目的にとって邪魔なのだ。
厳密に言えば、それは瑠羅ではなく、彼女の中のホテップなのだが、それを排除するためには彼女諸共処分するしかないと考えていた。
だが、それは今すぐではない。彼女にしても昨日の事は想定外だったのだろうというのは想像がついた。その上瑠依としては、自分の写し身とも言える瑠羅を殺したいとは思わない。だから今回だけは警告だけで見逃すのだ。次はもう瑠羅にも言い訳の余地がないし、瑠依自身の責任問題にもなってくるので処分するが。
今すべきことは出来たという満足感に浸りながら一般道へ戻ったところで、魔術による念話を受け取った。
『瑠依、近頃エーテルガジェットについて聞きに来た奴がいなかったか?』
若い男の声。瑠依のパートナーである、朝凪
「今朝早くに来たよ。よく知った顔と、頭の悪そうな新顔と二人。それが何かは教えたけど、使い方は教えなかった」
『教えなかったならいいが……それは名護という男じゃなかったか?』
「まさにソイツだ。何かやらかしてくれたらしいね」
『お前の上客だった、曽我という男を殺した。エーテルガジェットを使ってだ』
「は?」
瑠依は思わずバイクを停めた。運転に割く頭が勿体ないと思うほど、理解の範疇になかった。
「……取り敢えず、名護を止めないと。現場は?」
『旧コンビナート。周辺は封鎖済みだが、正確な位置までは把握出来ていない』
「それで十分だよ。後は僕がやるから、雅義は安全の確保を第一に」
『分かっている』
交信は終わった。
瑠依は進路を変えて再び発進した。
旧コンビナート地帯。かつて魔術師でない人もこの街で生活していた頃はコンビナートとして稼働していたが、今は瑠依が拠点にしている廃工場と同じような有様である。だが建物だけは立派に残っているため、裏社会の人間達が利用していると言われている。
そんな地域の比較的大きな施設、恐らくはこれも工場の一つだったと思われる建造物の中で、名護は立ち尽くしていた。足元には曽我の死体。左肩から腹部にかけて大きく裂けていた。その顔には驚きが張り付いて固まっている。
名護の両腕は、肘の辺りから剣のようになっていた。
「だから言ったのに。極めて危険なモノだって」
背後からの声にハッとして振り返った。
「情報屋……もう嗅ぎ付けたか」
瑠依は今朝会った時の服の上から丈の長いコートを羽織っており、その下に武器を隠しているという可能性がある。そのため迂闊に近寄らず、その場で声をかけた。
「なんで殺したの? 相棒だったんじゃないの?」
「俺に相棒なんざ必要ねぇ。それをコイツはいつも相棒ヅラして付き纏ってきやがった。俺達が二人で一人だとか抜かしながらな」
「それが疎ましくなって殺したってことね。馬鹿だなあ。君達は二人で一人なら上手くやれただろうに」
瑠依は笑った。
「何だと?」
「だってそうだろう。曽我さんは、頭は回ったがあまり戦闘力が高くない。一方君は力もあって凶暴だが、頭が足りない。互いに足りないものを補い合える関係というのは素晴らしいものだ。二人で一人の片方が死んだら何が残る? 半人前が一人だ。そうだろう?」
「言わせておけばァ!」
名護は猛然と飛び掛かり、剣と化した腕を振るった。瑠依は難なく躱したが、瑠依の立っていた地面は深く抉れた。
「うわぁ、酷いパワー。この格好じゃちょっと手に余るな」
瑠依は呟き、指を鳴らす。その途端コートの下の服が原型を失い、形を変えてまた服を編んだ。神衛隊のものにも似た、黒い軍服の如き服を。
「その制服、情報部だと! まさか!」
「何かおかしいかな?」
驚く名護と対象的に、瑠依の声は冷ややかだった。
「そうか、連盟情報部に所属する者が情報屋をやっていたのか。機密情報の漏洩、重大な違反。クク、これはスクープだな」
「スクープにはならないね。僕は特別だから。それに、その状態でペラペラと噂話が出来ると思う?」
名護は黙り込んだ。瑠依の動揺を狙おうとして失敗したらしい。
瑠依はベルトに着けられたホルスターから専用の魔力剣を抜いた。瑠依の黒い魔力で形作られた刃が赤く熱を帯びる。
「茉莉花ちゃんなら、もっと雑にやるんだろうけど――」
同時に動き出す両者。だが瑠依の動きは名護のそれより圧倒的に速く、たちまちのうちに彼の左腕を斬り落とした。
落ちた腕を蹴り飛ばし、残った右腕に刃が刺さる。怯んだところで剣を突き刺した。心臓へ一突き。
無事に駆除したことを確認すると元の服装に戻り、雅義へ念話を送った。
「終わったよ。やっぱり低級魔人になりかかってた。天使級にも満たない半端者だったけどね」
『完全体ではなかったのか』
「うん、持ち合わせの魔術神経との相性が悪かったみたい。いや、この場合は寧ろ良かったのかな。兎に角、不完全でも十分な殺傷能力を持ってたよ。まあ、持ってなくても殺すことに変わりはないんだけどさ」
『痛めつけて取り上げたくらいでどうにかなるほど甘い依存じゃあないからな。治療法もないし』
「キチッと処分しておかなきゃ後が面倒だ。二度とあんなのは御免だね」
瑠依は苦笑いした。
『同感だな。ところで、今回も瑠羅名義で処理を?』
「あぁ、うん。お願い」
『……いくら瑠羅がお前の代わりとはいえ、彼女に正体を明かした今としては、このやり方は見直した方がいいと思うが』
「そうかもね。そのあたりのことは後で話そう。そっち寄って行くよ」
『分かった』
念話が終了すると同時に、瑠依のバイクが廃屋へ入って来た。瑠依はひらりとそれに跨ると、軽快にスロットルを回した。
根本的に人でなし 竜山藍音 @Aoto_dazai036
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