第2話 銃と弾
そこには綺麗に磨かれた長い銃が4丁置いてあった、カーマの身長は小さくは無いが私達の中で1番下だ、そのカーマ程ありそうな細長い銃はギラギラと私達に恐怖心を与えた。
「王都の伝令が派遣の件と同時にこれを持たせて欲しいと言っていてな」
司祭はゆっくり恐る恐る長い銃を取り出し
机に並べた、私達は意外な物の登場に全員一言も声がでなかった。
「これはどうやら
「こんな物私達には必要ありません!」
カフリ様は立ち上がり驚きと恐怖を隠せないでいた。
「まぁ聞いてくれ」
恐怖と疑問で興奮している私達を慰める様司祭は続け、50発程の弾薬を出した。
「これは
「ですがノーブス司祭、この様な物を使ってしまっては私達は...」
「何、人を撃つ訳ではない人に憑く悪魔を撃つ物だ、使わなければどうと言う事はない、しかし私も君達が心配なのだ、お守りとしてでも持っていてはくれぬか?」
その後も何度か同じやりとりをしたが不明の地へ行く事、信仰心を持つ私達にしか使えない事を考慮し持っていく事にした。
「それと旅は長くなるだろうと1週間分の食糧と馬車を一台預かっておる、明日の朝出発できそうかの?」
「明日ですか!?」
つい口走ってしまった、銃といい準備の良さといい私達は話についていけてなかった。
「生存者の救済と言うこともあって一刻を争うのじゃ突拍子もない事ばかりで申し訳ない」
「わかりました、本日準備させて頂き明日朝、教会前に集合致します。」
「すまない皆の者、それでは解散とする」
銃とそれぞれの弾薬を受け取り私達はその場を後にした、銃なんて初めて持ったが意外と軽かった多分3キロもないくらいだろう、だけども悪魔とはいえこんな物で命を奪う事を考えれば、それはとてつもなく重たい物だった、これでもしかしたら人の命を...今は何も考えないでおこう。
ある程度の荷物をまとめ十字架等を整備するとすっかり遅い時間になっていた、今日飲んだ暖かい豆のスープはしばらく飲めないだろう、そんなしょうもない事を考えていると、窓から月灯りに映る女の子がいた、カーマだ
「寝れないの?カーマ」
ついつい私も出てきてしまった、何か言い表せないが寂しいのだろうか。
「アンタもジャネ?アズリルさんよ」
多分みんな不安でいっぱいでまだ寝てないのだろう。
「アタシ達は何をしに行くんだろうね」
「わからない...けど困ってる人がいるのは確かだと思う...」
カーマはしばらく黙り込んでしまった、そのまま沈黙のやりとりをしたが、カーマは笑顔になってくれた。
「考えても仕方ないよね!とにかくイスト地方に行って人助け人助け!」
「そうだね!早く寝ないと明日遅刻するよ」
そう言って笑いながら私達は部屋に戻り眠りについた。
翌朝私達は約束通り教会前に集まり馬車に荷物を乗せてノーブス司祭と共にしばらくできないであろう神様への祈りを捧げ、見送りもないまま静かに街を出た。
「ねぇ〜リーダー、これいつ着くの?」
「はぁ...2日間も有れば充分じゃない?」
「マジで!?2日もこんな固い馬車に座ったまま⁉︎」
「少しは我慢しなさい!歩けば1週間はかかるかもしれないんだからまだましでしょ?」
「ウゲェ〜、馬車でよかった」
「...そうだよカーマ、我慢して」
よっぽど暇なのだろうミカリまで口を開いたのだから、でも確かにずっと座ってればお尻も痛くなる...
こんなやりとりをしながら馬車の上で寝て食事をしてまた話して1日が経っていた、着いたら何が起こるかわからない中、不謹慎にも私はずっと着かなくていいのに...なんて事を考えてしまっていた。
パァァァン!
着いてからの予定を立てていた私達を黙らせる様に乾いた破裂のような音が鳴り響いた。
「なんですか!?今のは」
すると先導している馬が転倒し馬車が傾いた、私達は道路の外に投げ出されてしまった。
「イッテェ〜、なんだよ」
「皆さん大丈夫ですか⁉︎」
身体に痛みが走る中ふと馬車の方を見ると馬がぐったりとしていて、ミカリがすぐに駆け寄った。
「...息がありませんね」
「⁉︎、皆さん伏せて!」
パァァァン
再度音が鳴り響き何かが掠めるような音がした。
「ヒヤッハッハッハ!こりゃ大量だぜ!」
しまった!、計画を練るのに必死だった私達は警戒を怠り盗賊に馬を撃ち殺されたのだ。
「キャァァァァァァ‼︎」
「ミカリ!」
盗賊の1人がミカリを掴み喉元にナイフを突き立てていた。
「おい!大人しく積荷を寄越しな、俺たちゃ金と食料が欲しいだけなんでな、命だけはたすけてやっからよぉ!」
荷物の中には食料や聖書私達の日用品等が入っている、ここからイスト地方に行くにもノス地方に戻るにも、渡して命の助かる物ではなかった、私達はなんとかミカリを助けようと考えていた。
「グッ...!グアァァァ!」
ミカリが胸の十字架を盗賊の太腿に突き差していた、どう考えてもそれは痛いだろう...しかし少し違っていた。
「ヤメロォ!アツイ!」
「この方ッ⁉︎」
よく見れば薄い布の服を着ている、私達ノス地方の人々は寒い気候からこのような格好はしていない、盗賊はイスト地方の人間、そしてこの苦しみ方は悪魔そのものだった、私達は驚きと恐怖から足がすくみじっとしているだけだった。
「このクソ女共が!」
その時、力を振り絞り盗賊...もとい悪魔はナイフをミカリに突き立てようとしていた。
ドォォン‼︎
地響きのような爆音が鳴り響いた。
....カーマだった、条件反射とでも言うのだろうか...悪魔と気付き、ミカリの危険を察知したカーマは祓魔銃を悪魔に撃っていた、その音にビビったであろう馬車の方にいた盗賊は少しの食料を持ち道路脇の森へと去っていった。
「やっ...ちまった。」
カーマは銃を下ろし膝から崩れ落ち"それ"を見てしまったようで、私とカフリ様もミカリの元へ寄りながら"それ"を見てしまった。
「ヴォェッ!」
ミカリの後ろには盗賊の男と倍はあろう、ガーゴイルと思われる姿があった、どちらも頭部がなく吹き飛んでいた。
「ミカリ!見てはダメ!」
咄嗟にミカリの顔をフードで覆ったカフリ様の手は、私から見ても震え過ぎていた。
そのまま数分の荒い呼吸だけがその場に流れた後私達は少し冷静になり"それ"を見て驚き私とカーマは泣き崩れてしまっていた。
なんと、王都から支給されていた祓魔銃と信仰弾は、悪魔"のみ"撃ち抜くのではなく、
人間"ごと悪魔を"撃ち抜く脅威の武器だった。
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