決意。
「もう。そんな情けない顔しないの。そんなにご両親と離れるのが辛いの?」
「そんなわけじゃない! ただ、心配なだけ、だ」
「お父様も元気になったしね? まだまだお若いもの。大丈夫よ」
「まあ、それはそうなんだけど」
「それよりもね。マキナはあの村にいちゃいけないわ。せっかくのマキナの能力を生かすどころか殺しちゃうもの」
「俺の、能力?」
「マキナはすごいよ? あのドラゴワームを倒しちゃったんだもの。自信持っていいかな」
「あれは、きっとマリアンヌさまのおかげだし」
「そんなことない。あたしはちょっとアドバイスしただけだもの。倒したのはほんとマキナの実力よ」
「そう、かな?」
「うんうん。マキナの持ってる魔力はすごいよ。たぶん帝国で1、2を争えるくらいには」
「流石にそれは大袈裟だよ」
「ふふ。信じないならいいけどさ〜」
「だいたい、魔力量で言ったら、というか全てにおいて俺なんかマリアンヌさまに全然届かないでしょ」
「えー?」
「わかるよ。マリアンヌさまって人間離れしてるから。っていうか女神さまだから当たり前なんだろうけど」
「ちょっと、待って。あたしは人間だからね? 女神とかじゃないからね?」
「んー。今のその体は確かに人間っぽく見えるけど。でも、俺にはわかるよ。マリアンヌさまの本当の姿が」
うー。
マキナに自信もたせようと思ったら墓穴?
この子にはあたしの
「そっか。マキナには見えるのか。じゃぁしょうがないけど」
このまま全部本当のことをこの子に話そうかどうしようか、ちょっと迷って。
「あたしはね、本当は聖女なの。この世界に何度も繰り返し生まれ変わってる。もう呪いみたいなもの?」
「呪い、だなんて」
「ふふ。マキナは優しいから」
あたしはマキナの頭をくしゃくしゃってして。
「記憶を持ったまま何度も何度も死んでは生まれ変わるって、結構辛いのよ」
そう宿命づけられたあたしの
もういい加減、こんな輪廻から外れたいとは思うけどそれでもね。
あたしが諦めたら、デウスは次はきっとこのマキナを魔王にするのだろう。
恐怖によって人の心を締め付ける。
それはやっぱり嫌だ。
「あたしは、人の世が怨嗟に塗れるのは嫌だから……」
最後のあたしのセリフは彼には聞こえていたかどうかわからない。
小声で、呟くようにそういうあたしの顔をじっと見つめているマキナに。
「ほら、街が見えるよ。あそこだったらきっとマキナを忌避する人もいないからさ。ね?」
歩きながら。
彼の顔を覗き込んであたしはそう笑みを見せた。
そうだよ。まずはマキナを人々に認めさせよう。そうすることできっとマキナの心も堕ちずに済むから。
絶対に、あなたを魔王にはしないから。
あたしはそう決意を固め、もう一度笑って見せた。
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