真那の手。
「うわわわわー!!」
マキナの心に恐怖のような色が見えた。でも、それを振り切って駆け出す彼。
鎌首を持ち上げてこちらに大口を開けて威嚇するそのドラゴワームに向かって一直線に駆け抜け、剥き出しのその胴に向かって剣を薙ぐ。
「あ、だめ」
そう制止しようとしたあたしの声が聞こえなかったのか、ううん、意識がもうそれどころじゃなかったのか。
ドラゴワームの胴にガチんと当たったグラムスレイヤー。
だけれど。
その外皮は剣を通すことなく弾き返した。
「っく」
衝撃をもろに受けた腕の痛みに耐えきれなかったのか、剣はマキナが転がっていくのと反対方向に跳ねて飛んだ。
「危ない!」
ドラゴワームの大きな口がマキナに迫る。
あたしは翼を羽ばたかせ全速力で飛び、ギリギリのところでマキナを拾い上げた。
「すみません……」
シュン、とした顔のマキナ。それはそれでかわいいけどそんなばっかりも困る。
「何も考えずぶつかったってだめ。ううん、考えなくてもいいからちゃんと力を感じないと、だめだよ」
そういうとあたしは真那の手を伸ばしグラムスレイヤーを拾うと手元に引き寄せた。
心の中の奥深くに潜り、ゲートから手を伸ばすように出す。そうすると現実世界に干渉ができる真那の手が伸びる。
人の目には見えないその真那の手で引き寄せられたグラムスレイヤーは、まるで空中を飛んでくるようにあたしの手に収まった。
「え?」
ちょっとびっくりしているマキナ。
でも説明している暇は、ないかな。
「はい、これ。このグラムスレイヤーはね、使う人のマナを吸って力を出す剣なの。ただただ振り回してもただの棒切れと変わらないよ? しっかりと持って、それでもって手のひらから自分のマナをこの子に分けてあげてね」
あたしはそういうとマキナを下ろしグラムスレイヤーを手渡した。
彼は。
うん。表情がちょっと変わった、かな?
少しわかってきたのか、手に持ったグラムスレイヤーを眺め。
そして。
「もう一度やってみるよ」
そういうと今度は落ち着いた雰囲気でドラゴワームと対峙した。
うん。
その調子だよマキナ。
マキナのマナが籠ったグラムスレイヤーは真紅に輝き。
その力ははたから見ててもわかるぐらいに増大していった。
「うおー!!」
再度突進するマキナ。
でもさっきとは違う。
ドラゴワームにもその違いがわかったのか、大きな口をこちらに向け、ブレスの態勢に入った。
ギャォォォォ!!
吐き出されたのは炎のブレス。
灼熱のそのブレスがあたしたちを焼き払おうとしたその時。
マキナのグラムスレイヤーがそのブレスを断ち切った。
炎はちょうどあたしたちを避けるように別れ、そしてそのまま剣を構え突っ込むマキナ。
グラムスレイヤーの刀身はマキナの身長以上にも伸びたように見えたかと思うと、振り下ろされたそれはワームの頭部をまっすぐ縦に切り裂いた。
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