第2話 好きなことで食っていく! HIKARINに憧れて
俺は1年前、HIKARINに憧れてYouTubeの世界に飛び込んだ。
そんな風に言えばカッコいいかもしれない。
実は俺は勉強も出来ないし部活にも入ってない、そして友達もいない……ボッチで暇な高校1年生だ。
時間はある。
それなら勉強しろって?
目の前の数式や英単語がスラスラ理解出来れば勉強だって楽しいかもしれない。
だが、残念ながら頭の悪い両親から生まれた俺は頭が悪いから参考書を読んでも眠くなるだけだった。
そんな俺も人から認められたかった。
HIKARINみたいになりたかった。
だから、YouTubeに青春を突っ込んだ。
だけど、結果は鳴かず飛ばず。
死にそうになると走馬灯を見るというのはどうやら本当のことらしい。
俺はゴブリンの激しい攻撃で、倒れた。
頭の中にぼんやり浮かぶ。
HP:1/20
どうやらここはゲームの要素もある異世界らしい。
ラノベはたまに読むが、こういうタイプの話があるのは知っていた。
まさか自分がそうなるとは。
しかし、それでもこのゴブリンとの動画だけはアップしたい。
命懸けで撮影したこの動画は絶対バズるはずだ。
俺は最後の力を振り絞ってアップロードボタンを押す。
「アップ完了」
スマホの画面にそう表示された。
俺は早速、再生回数を確認したくなった。
だが、ゴブリンは容赦なくとどめの一撃を……
「ぐげ!」
ゴブリンはピクッ、ピクッと体を震わせ口から血を吐いた。
どうしたことか、ゴブリンはドサリと俺の横に倒れた。
うつ伏せになった奴の背中には、焼けただれた後があった。
「大丈夫か?」
可愛らしい女の声。
もしや、これは?
否、こんなありがちな展開、あるわけが……。
俺は顔を上げた。
「美少女コスプレイヤーさん?」
黒い尖がり帽子に、黒いローブ、先端の尖った黒いブーツ。
いかにも魔法使い、否、魔法少女がそこにいた。
「叫び声がしたので来て見たら、人間がゴブリンに襲われていたのでな。ところで美少女コスプレイヤーとは?」
首を傾げ、訊ねて来る。
長い黒髪が揺れた。
小さな白い面には、大きな黒い瞳と、真紅の唇。
「あ、あの……俺の世界で言うところのアイドルです」
「アイドル?」
「アイドルって言うのはまあ、皆の人気者で可愛いです。まぁ、あなたの世界で言うところの姫みたいなもんですよ」
俺は異世界と交流している。
そう実感した。
「姫か……。わらわが仕える姫は、可愛くは無いし民に人気は無いがな」
俺はどうやら色々事情が複雑な世界に飛んだらしい。
「わらわの名はヒマリ。そなたの名は?」
「俺は……」
本名を言うべきだろうか?
「エゴちゃんねる」
つい、自分のチャンネル名を言ってしまった。
つづく
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