もしも迷惑系Youtuberが異世界に転生したら

うんこ

第1話 底辺Youtuber転生す!

「ここは……どこだ?」


 俺は辺りを見渡した。

 どうやら森の中の様だ。

 鬱蒼と茂った木々の中で俺は倒れていた。

 右手にはスマホが取り付けられた自撮り棒。

 左手には爆竹が握られている。


「俺は確か……」


 渋谷のスクランブル交差点でこの爆竹をぶっ放すつもりだった。

 それをスマホで動画撮影しYouTubeに公開する予定だった。

 道行く人々が驚く様を。

 迷惑系の動画は人の目を引きやすい。

 だが、こんなところにいるということは目的は果たせていないということだ。


 ガサッ!


 目の前の茂みが揺れた。

 俺は身構えた。


「なっ……」


 緑色の生き物が現れた。

 身長は130cmくらいで出っ張った腹に短い手足が飛び出している。

 手には棍棒を持っていた。


「おおっ! こりゃゴブリンってやつだな!」


 俺はスマホをそいつに向けた。

 モンスターにコスプレしたやつが目の前に現れた。

 これは撮ってやらなきゃ損というものだ。


「ぐげげげ!」


 それにしても良く出来たコスプレだ。

 誰かが中に入っているというよりも、ゴブリンという生き物そのものがここにいるかの様だ。


「あの、もうちょっと右に寄ってもらえませんか? そうそう」


 このゴブリンのコスプレイヤーも撮影されたいからこんな格好しているんだろう。

 それにしても、ゴブリンとは。

 普通コスプレは、カッコいいアニメの主人公とか美少女キャラを選ぶだろう。

 だのに、こいつはゴブリンを選んでいる。

 何だか、迷惑系動画で再生数を稼ごうとする俺と似ている気がして、親近感がわいた。


「ぐごおおおお!」


 そんな俺の気持ちを無視するかの様にゴブリンは棍棒を振り上げた。


「わわわ!」


 俺は驚いてその一撃を寸でのところで避けた。


「ちょっ……待って! 戦闘シーンはちゃんと打ち合わせしてから」


 俺は爆竹を持った手で奴を制した。

 だが、奴には通じていない。

 その証拠に、棍棒を振り回しながら俺に襲い掛かって来る。

 その様子を、俺は手振れを気にしながらも撮影する。

 タイトルは『本気のゴブリンと戦ってみた』ってか。こりゃ異世界感あふれる臨場感ある動画が撮れそうだ。

 久々に再生数が稼げる動画がアップ出来そうなことに俺は、心の中で舌なめずりした。

 だがちょっと変だ。

 ゴブリンから手加減無しの殺気を感じる。


「いて!」


 棍棒が俺の肩にめり込む。

 肩が抜けた様にだらりと下がる。


 殺される。


 俺は爆竹に火を着けゴブリンに投げつけた。


 バンバンバン!


 ゴブリンの鼻の辺りにぶち当たったそれは、火花を上げた。

 だが、奴は死ななかった。

 俺は確信した。

 

 ここが異世界だということに。


つづく





























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