処刑
「殺す!殺す!殺す!」
激情の怒りの熱さが体中に巡り仮面を変化させる。
仮面に二本の角が生え、鎧は禍々しい角張のある鎧に変化する。周りの空気を一変させ重苦しいものに帰る。意識が怒りの炎に飲まれそうになる。
この仮面…まだまだなにか能力が隠されてやがる…激情に意識が持っていかれそうだ。
本物の化け物のような姿に卜伝は驚愕しつつも笑っている。
「カハァァァ」
ギザギザの口から出てくる息は冷たい夜に白く浮き上がる。
「【重症化】か、いくらそれで力を上げたとしても理性と知性がなければ私には勝てんぞ」
卜伝は笑みを浮かべながら受けの構えをとる。
【重症化】それは禁断の技、激情とそれに反応したシックの才覚が自分のシックを極限まで底上げする、その代わり激情に飲まれ理性が保てなくなり周りにその力を振りまくだけになる、それゆえに禁断、【重症化】したもののほとんどを【七色】が対応し処分する、そういう決まりだ。
これが【重症化】か、憎しみや怒りがぐちゃぐちゃになって体を飲み込んだようなそんな感覚、【重症患者】はいろいろみてきたが自分がなるのは初めてだ。
なったものは皆意識が飛んで獣のようになっていたがどうやら俺は意識を保ったままの【重症化】に成功したようだ。
全身が熱く苛立ちが止まらない、気分は最悪だな、こりゃ、だがその分体が軽い。
力が余ってしょうがねぇ。
今すぐどっかに吐き出さねえと頭がおかしくなりそうだ。
「うごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
獣のような絶叫とともに刀を投擲する。
「フン、ついに刀まで投げ出したか」
思い切り投げた刀はあっさり弾かれるも一瞬、俺の体を卜伝からの死角を作る。
その死角を利用し、卜伝の眼前までのルートを作り上げる。
「なっ!?」
閃光のような速さで死角から唐突に目の前に現れた俺に卜伝は驚き姿勢を崩した。
全体重をかけた渾身の一撃を放つ。対する卜伝は刀で防御しようと刀を傾ける。
「ぶっとびなぁ!!!」
ドゴォッッッ
拳は刀をすり抜け卜伝の右胸に刺さり、ミシミシと何かが折れる音が聞こえる。
「ぬおおおおおおおお」
積年の恨みを込めた一撃、卜伝は耐えきれず吹き飛び壁にめり込む。
「カ八ッ、【重症化】をコントロールしたのか?これが奥の手か、しかし私が何人【重症患者】を駆除してきたか、その程度で私に勝てると思うなよ」
卜伝が体制を立て直す前にすかさず、近づく。
卜伝は後ろが壁でもう引くことはできない。
察した卜伝は剣を振り上げすぐさま反撃をしようと刀を振り上げようとする。
ガシッ
「これじゃぁ、斬れないよなぁ」
振り上げようとする腕を左手でつかむ。
ゴリゴリゴリ
「ぐああああああああああ!」
卜伝の左腕の骨を握力でつぶす。
卜伝は腕に響く激痛に叫び、左腕を抑えた。
ボゴォッ
ここぞとばかりに間髪入れず、卜伝が体制を立て直す前に攻撃を入れる。
「う゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
俺の殴りによる轟音が鳴り響く。
この剛腕による乱打で確実に致命的なダメージを与えなければいけない。
腕を組んで防御している。
俺の攻撃がやむまでたえるつもりだろう。ここで倒せなければも次はない、もし耐えられれば怒りによるシック上昇も消え、二度と攻撃を与える距離にまで近づくことはできないだろう。
「はぁはぁ」
もう1000回はなぐっただろうか。
何重にもよる殴りで疲れが腕にたまり、止まりそうになる。全身から汗が噴き出て目もくらむ。
「はじけとべぇ!!!」
最後に持てる体力をすべて使ったこぶしを卜全の顔面に目掛け放つ。
ドガァンッッッッッッ
今までの乱打と最後の打撃による衝撃で埃が立っている。
だんだんと埃が晴れ、前が見えるが、最後の殴りの場所に卜伝はいない、最後の一瞬の殴りを少し貯めたせいでにげられたようだ。
疲れで膝がおれ、地面につく。
まだ禍々しく変化してから、3分ほどしかたってないのに、体中が激痛を発している。
だめだ、休憩しないとほとんど動けない。
こんな一瞬で解除されちまうのかよ、ウルトラマンじゃないんだからもう少し保てたっていいじゃないか。
「腰の入ったいいこぶしだった...私のあばらも何本か折れて左腕の力も入らない、最後の一撃をくらっていたらさすがに負けていたかもしれない、あまりその力は燃費が良くないようだな、本当に惜しかったよ、あと30秒長く【重症化】していたら私は絶対に負けていた」
後ろには傷だらけの卜伝が胸を押さえながら立っている、プッと口の血を吐く。
俺の攻撃はしっかり効いていたようで、卜伝も満身創痍だ、しかし完全に倒すにはいたっていない。結局覚醒のようなことをしてもこいつには勝てなかったのか。
「君の名前は覚えておこう、さらばだ、黒き鬼よ」
卜伝は刀を振り上げる。
「ククク、残念だよ、これでこの戦いがおわることが」
「虚勢か?残念ながら君にもう力がないことはわかっている」
確かに俺はこいつの意識をここでたてなかった、だが殴っている最中に俺の切り札が届いた音がしたのを俺は気づいていた。正直この手は使いたくなかった、自分の実力だけで屈服させたかった、しかしもう今は手段を選でいる余裕はない。
俺はポケットからスマホを取り出す。
「これがわかるか?」
卜伝は画面の中のものに目を見張る。
「それは...!」
そのスマホの中には山奥の小屋に、縄で縛られ絶望の全ての気力を失ったような顔をしているいたいけな下着姿の金髪の少女『立花唯』が映っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます