第21話 主人公は超人
キースに黙って一人で『スペシャルクエスト』を進める事には少し気が引けるが、疲れているのなら何よりも優先して休んだ方が良い。
まだ試験は始まったばかりなのだから。
「まず、『スペシャルクエスト』について見てみるか」
俺は端末の電源を入れて、『クエスト』のアプリを開き、『スペシャルクエスト』の項目を開く。
・『スペシャルクエスト』
難易度
『Sランク』……どれだけ気を付けても100000000%死ぬレベルの難易度。
『Aランク』……気を付けても死ぬレベルの難易度。
『Bランク』……気を付けないと死ぬレベルの難易度。
『Cランク』……気を付けないと大怪我をするレベルの難易度。
『Dランク』……気を付けないと怪我をするレベルの難易度。
報酬
『Sランク』……500pt
『Aランク』……100pt
『Bランク』……50pt
『Cランク』……30pt
『Dランク』……10pt
……色々と突っ込みどころはあるが、取り敢えず今はおいておこう。
最終日に交換できる点数は10ptにつき1点だ。
つまり、『Dランク』で1点、『Cランク』で3点、『Bランク』は5点、『Aランク』は10点、『Sランク』は50点だ。
「どうしようか……」
まず、報酬の少ない『Dランク』、『Cランク』は選択肢から除外する。
ちまちまやっていては時間がかかるばかりで実利が薄い。
現在保有する110ptを全く使わずにこの七日間を生き抜くことは流石に出来ないかもしれない以上、少ないptを得てもマイナスになってしまう。
となると、『Bランク』、『Aランク』、『Sランク』のどれかだが……。
「『Sランク』。これ気になるなぁ……」
『どれだけ気を付けても100000000%死ぬレベルの難易度』って……。
いや別に、ドMとかそう言うのでは全くもってないんだが、今まで万単位で死にかけてきた人間として、100000000%死ぬレベル、というのがとても気になる。
「いや、でも危ないかなぁ。でも気になるよなぁ……」
迷いながらも、俺の指はは間違いなく『Sランク』の項目へと向かっていくのだった。
*
「やっと一日目が終わったわ……」
「セリアちゃんお疲れ様♪」
「……」
日が落ちると、受験者が全員行動を停止した。
それも当然だ。
目の利かない夜に、魔獣の蔓延る島で行動しようなど、あまりにも危険すぎる。
「そ、そんな目しないで?ね?せっかくのかわいい顔が台無しだぞ♪」
そして、一向に仕事をしないソフィーに、ソフィーの仕事を肩代わりして疲労困憊のセリアがジト目を向けていた。
「……」
無言のセリア。
なんか二つ名みたい……なんて、言っている場合じゃない。
さっきからセリアの蟀谷がピクピクしてて怖い……。
「ごめんごめん。そうだよね、疲れたよね、帰って寝ててもいいよ?」
「学園長、ワタシを体よく追い出そうとしていますね……?さっき学園長とレイカがひそひそ話していたのがバレていないとでも?」
「あ、あははは……」
あー、そういう事だったのか、私の話を聞くために、ソフィーはセリアを家に帰そうとしていたんだ。
……で、それはセリアにバレていたと。
ソフィーが私に向ける眼が「ごめん失敗した!どうしよう!」って言っている。
まあでも……。
「ソフィー、別にセリアになら話してもいい。ただ、セリア、約束して」
「何?」
「私が今から話すことは誰にも口外しないって。それが出来ないなら今すぐ帰って」
「へぇ、そんなに大事な話なんだ」
「うん。とても大事」
「そう、分かったわ。誰にも口外しないと約束する」
「ソフィーも、いい?」
「うん、絶対に口外しないよ」
セリアが了承するのを確認した私は一呼吸置いて、話し始めた。
「……これは私の幼馴染、瑛太の話――」
話の内容は瑛太の異能である『不幸』についてや、瑛太が異能の重要性から狙われる可能性が有る事等だ。
「――で、私は瑛太の異能を何とかして、瑛太を異能から救うために学園島に来たの」
「うーん、エイタ、良く今迄生きてたねー、ていうか、そっかー、レイカって、そうなんだ。愛されてるねー、エイタは」
「?」
ソフィーが何故か小声でヒソヒソと呟きながらニヤニヤとした表情でこちらを見てくる。
それに対して私が不思議そうな顔をすると、ソフィーはコホンと一度咳払いをした。
「……まあ、うん、オッケー。大体の事情は掴めたよ。異能者の保護は我が校の理念でもあるし、最大限の協力を約束するよ。個人的にも、この島の学園長としても」
「ありがとう!」
ソフィーは私の話をすんなりと受け入れてくれたようで、協力を快諾してくれた。
勿論受け入れてくれるだろうとは考えていたが、学園島の学園長であるソフィーとして受け入れてくれるとまでは思わなかった。
本当にありがたい。
「わ、私も協力するわ。特にやれることは無いと思うけど……」
「ありがとう……って、セリア、顔赤いけど、どうかしたの?」
セリアの方を見ると、顔を真っ赤に染めたセリアが居た。
もしかしたら体調でも崩したのかもしれない。
「どうかしたのって、レイカがこっ恥ずかしい話するからでしょ!」
「む……私は真剣な話をしている」
「いや、そうじなくて……そ、そう言えば、レイカの話を聞く限りではフセエイタの異能は『不幸』だけなんでしょ?なら試験序盤での彼の戦闘能力は一体何よ!?」
「セリアちゃん話逸らした―♪」
「そこ!うるさい!」
「はーい♪」
「で、どうなの!?」
セリアがなんでもいいから違う話に切り替えたいと言わんばかりの気迫で迫ってくる。
「瑛太のあれはただの身体能力」
「……いやいやいや、流石にそれは無理があるでしょう。魔獣を異能なしで倒せる人間なんて居るわけが無いわ」
「まぁ、瑛太は普通の人間じゃないからね」
「普通の人間じゃない?」
「うん。瑛太は普通の人間とは違う。全くと言ってもいい程に……。生物の体って、使えば使うほど、傷つけば傷つくほど、さらに強くなるっていうのが通説だけど、瑛太はその回数が尋常じゃない。そうして鍛えられた瑛太の肉体の性能を言い合わらすなら――超人?」
「超人……」
「それに加えて、更に瑛太はよくわからない独自の技術を持ってる」
「独自の技術?」
「なんか、肉体のリミッターを解除できたり、周りがスローモーションに見えるようにできたり……とにかく色々できるらしい。私もよく分からないけど」
……まあでも、そこら辺の技術はちょっと危険だから私が少しだけ手を加えさせてもらってるけどね。
「それもうほぼ異能じゃない……」
と、その時。
「あ!エイタが動き出したよ!」
「「!」」
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