閑話-3 イワケンのカブは空を逝く(ニッチ視点)

「エッ、ナンか方角が違うくない?カラオケ屋こっちじゃないよ」


「ホントだ。先輩道が違うよ。どうなってんの」


ナギサとミユキが何かに気付いたようだ。


「ナッコラー! 気付いたかコッラー! 廃工場行くんだよーゴッラー。ウルルァッカラー!?」


運転していたヤカラのトップらしい男がナギサに吠えたてた。


「廃工場なんか行ってどうするんだよー。アタシ頼んでないよー」


ナギサが段取りを企んだみたいだね。


「テメッコラー! ボーシッ! ガタガタうるせー。そいつら輪姦まわすんだよーゴッラー!」


こいつ何言ってるんだろう。


アーシらに乱暴するって事なの。


普通に日本語喋れよ。


「ワタシラそんなこと聞いて無いよー」


不味いわねえ。


アーシや岡部だけじゃなくて多分ナギサやミユキも危ないよ。


「へっへっへっ、先輩の連絡でもう廃工場にみんな集合してるぜ」


「今ここでやってもいいんだぜ。でもそれやっちゃうと先輩たちに叩き殺されちゃうからなぁ」


空手部とか言う下っ端が下卑た笑いを浮かべてアーシらを見ている。


ミユキやナギサを餌にしてでも岡部は逃がす。


泥ならアーシが被ればいい。


「岡部には手を出すな! アーシは良いから岡部は降ろせ!」


「チョット、ワタシラそんなこと頼んで無いジャン。話が違うよ!」


「そうだよアタシは酒さえ手に入れば良いんだから」


「ザッケンナコラー!  腹括れやゴッラー! カッコツッケシャッコラー!」


「アンタらこんな事してタダで済むと思ってんの!! アーシは黙ってないよ」


アーシも腹括ってるんだ、この低能ヤカラ野郎。


「新田さんは僕が守るんだ。お前ら悪者なんかに触れさせないぞ」


岡部、あんたが腹立ててるのは判るけど落ち着いて。


「岡部は黙って! アーシがあんただけは逃がすから!」


岡部はこいつらのヤバさが分かってないんだ。


あれ?ナンカ岡部の右眼光って無い?


「もう、やめよう―よー。ワタシラ何でもするから許してよー」


「ソマシャッテコラー!  騒ぐな、泣かされてえのかコッラー」


「ギャアギャア騒ぐな! 痛い目見たいようだなア。アッーーー」


空手部野郎がアーシらに殴りかかってきやがった、って岡部危ない!


なにを突っ込んできてるの。


ボコッ、ドガッ、バキッ。


岡部があの野郎を殴り返したよ。


「痛ってーーー! この女強いぞ。」


「僕は師匠から神秘の龍の力を分け与えられた水龍リントブルムの化身だ。邪悪な力には屈しない」


「いいぞー。岡部やっちゃえ。アンタ強かったんだね」


「土曜日にリオから聖龍の瞳の力を貰ったんだ」


はー?


莉凰から何貰ったって?


「こっちは空手部三人だぞ。ハダカにして写メ撮ってバラまいてやる」

コイツラ開き直りやがって、クソー何とかして止めなけりゃ。


「アンタら、積んでるんだよ。アーシ達拉致った時あんだけ騒いだんだから店が通報入れてるに決まってるじゃない。これ以上バカなことやると年少送りだよ」


「そうだー。運転してるアンタは実刑出たら刑務所送りだぞ」


少しはビビッてくれると助かるんだけど。


「せっ先輩、どうします」


「シャレジャマネッコラー! 舐めた口ききやがっレッガー。キッチリその体に教え込んでやるからダッテメーコッラー! 覚悟しとけコッラー」


運転してる先輩とか言う奴が車止めてくれたらどうにかなるんだけど。


「卑怯ものどもめ。新田さん大丈夫だよ。こんな奴等の勝手にさせないよ」


ボコ、ドス、ゲシャ‼


岡部が先制攻撃に転じたよー。


「ギャー、イタタタタ」


「悲鳴をあげるな!陰茎が苛立つ」


こいつ何下品なこと言ってるんだよ。


ボコッ、ドスッ、ボギャゴキ。


良いぞやっちゃえ岡部!!


こいつら三人結構ボコボコじゃん。


なにが空手部だよ。


ゴスロリ女子高生に負けて粋がんな。


「ねえ、ちょっと待って。ワタシラ謝るから。もう止めてたげて」


「そうだよ。ちゃんととコイツラに焼き入れたしもう良いかなって。だからお願い。もうやめよう」


岡部の奴、マウント取って空手部の野郎をタコ殴りしてるよ。


ガスッ、ボクッ


「はっ、はじめっから輪姦す予定でダチ集めてるんだ。アイテテテ。今更やめられっかよう」


男が三人がかりで、組み付いても殴り返されてるこの状態でまだあきらめないのかよー。


ドガシャーン、ボキュ


あーあ、一人後ろに吹っ飛んだぞ。


ぶつかってリアのガラスにヒビが入ってるよ。


「嫌だよー。ワタシラそんなつもりじゃなかったんだよー。お願いだからやめてー」


ミユキ、あんた甘すぎるよ。


そんな奴ら庇っても手のひら返されて終わりだよ。


「痛てー。テメーラ。向こうについたらフクロにしてやんよー」


ボッコ、ゲコッ、ドンガラガッシャーン。


あんたら、この状態でソンだけの啖呵がよく切れるよねえ。


三人とも何回岡部にぶっ飛ばされてるのよ。


ガラス割れまくりじゃん。


「クッソー。オマエそれ以上暴れたらこの二人ぶっ殺すぞ」


あんたらミユキとナギサを捕まえて何やってんだよ。


「その二人からも手を放せ!卑怯者!僕の正義のコブシは怒りに満ちている!」


「お前ら最低だよ。ナギサもミユキもお前らかばって岡部に謝ってくれたんじゃないか」


「うるせーよ。もう着いちまったんだ。後戻りできないんだよ」


アッ、車止まってるじゃないの。


岡部、あんた絶対目が光ってるよねえ。


本気で怒ってるよねえ。


襲いかかろうとした空手部裏拳一発で昏倒させたよ、この娘。


バゴチーン!!


スライドドアを一蹴りで、蹴り壊しちゃったよー。 


ドガッ。


昏倒させた空手部員そのまま蹴り出しちゃった。


そうだこの隙にミユキとナギサを助けなきゃ。


岡部がミユキとナギサを羽交い絞めにしてる二人の頭を掴んだ!


そのまんま汚物でも捨てるかのように空手部員二人を鷲摑みにしたまま降りてった。


赤い右眼を光らせて。


ナギサとミユキが岡部後ろについて転げる様に降りて行った。


駄目だ。


あの二人、恐怖で半分腰が抜けてる。


アーシは急いで降りると、ナギサとミユキの手を引いて立ち上がらせた。


先に空き地に溜まっていたヤカラ達が呆然とその光景を見ていた。

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