第17話 オートドライブ付きクロスカブ(嘘)

「おい、イワケン。エンジンかけな」


「へっ?」


ウチはキャップをポケットに突っ込むとイワケンのフルフェースヘルメットをスッポリ被った。


「さっさとメット被ってエンジンかけろ!!」


「ひゃ、ひゃい!」


『大人しくしろ!』


『乱暴するな。僕を怒らせるとただじゃおかないぞ』


『岡部は放せ。アーシだけにしろ』


抵抗する二人はあっという間に抑え込まれようで、ドアロックをかける音がした。


車が動き出す!


イワケンがエンジンをかけアクセルグリップを回す。


ウチはイワケンのクロスカブの荷台部分に陣取る。


「さっさと発進!」


「あのー。どこに向かいましょうか…てっ勝手に走るうウゥゥゥゥゥ」


視覚ドローンを上空に飛ばす。


アルファードは駐車場から公道に出た。


ウチらのバイクはそのずっと後方120m。


前方の車列をすり抜けて進む。


「イヤー。ハンドル勝手に動くー。ブレーキ効かなーいー」


車の中の声は聞こえるが様子が分からないのがつらい。


二人がケガなんかしてませんように。


『岡部のバカヤロー。なんでこんな事したんだよー』


『新田さんはリオの友達だから』


『だからって、アンタまで危険な目にあったら莉凰が泣くだろう!』


『友情ゴッコも良いけど、アンタら状況考えなよ』


『ニッタもだけど、アンドーも鼻につくんだよね。バカのくせにワタシラ見下してんじゃないよ』


バカって言ってたか、コイツ。


バカって言うやつがバカだろうが(怒)。


「なんでー。なんでブレーキ効かないのー。死ぬからーー」


よーし、フルスロットだー。


ポコン。


あっヤベー。


勢いあまって背中から羽が飛び出した。


絶対、背中破れてるよ。


このニット、しま〇らで2500円もしたのに(涙)。


『莉凰はそんな奴じゃねーし。あいつは見下されても人を見下したりしない』


『そうだ!リオは良い人だ。僕の師匠だから』


ニッチ、それどういう意味かなぁ。


終わったら二人でユックリ話そうか。


「ホント駄目だからー。スピードオーバーで捕まるからー。止まって―――」


『こいつ何なの。アンドーの弟子って何言ってんの。バカなの、バカの弟子』


『リオは優しい正義の人だ! バカにするな。正義の力を持った聖龍様だ』


『ねえ、ニッタ。この娘、頭イってない?』


『うるさい。新田さんはリオに変わって僕が守る』


『お前ら人をバカにしやがって。莉凰も岡部のアーシのクラスメイトで大事な友達だ。指一本触れさせるかよー』


あっ次の交差点で右折する。


「キャー。勝手に曲がるー。倒れる―――」


信号に間に合った。


カブを倒して羽で態勢を維持しながらスピードを殺さずに華麗に急カーブ。


『エッ、ナンか方角が違うくない?カラオケ屋こっちじゃないよ』


『ホントだ。先輩道が違うよ。どうなってんの』


『ナッコラー! いたかコッラー! 廃工場行くんだよーゴッラー。ウルルァッカラー!?』


『廃工場なんか行ってどうするんだよー。アタシ頼んでないよー』


『テメッコラー! ボーシッ! ガタガタうるせー。そいつら輪姦まわすんだよーゴッラー!』


『ワタシラそんなこと聞いて無いよー』




「ダメー。カブでバイパス入れないよー。エンジン止まってよ―――」


ヤバイなあ、バイパスに上がるみたい。


仕方ないねえ加速ウィング!


『へっへっへっ、先輩の連絡でもう廃工場にみんな集合してるぜ』


『今ここでやってもいいんだぜ。でもそれやっちゃうと先輩たちに叩き殺されちゃうからなぁ』


『岡部には手を出すな! アーシは良いから岡部は降ろせ!』


『チョット、ワタシラそんなこと頼んで無いジャン。話が違うよ!』


『そうだよアタシは酒さえ手に入れば良いんだから』


『ザッケンナコラー!  腹括れやゴッラー! カッコツッケシャッコラー!』


「ここ自動車道だからー。ここ最高速度80kmだから。50のカブじゃ出ないからーって、メーター振り切ってるから―――」


『アンタらこんな事してタダで済むと思ってんの!! アーシは黙ってないよ』


『新田さんは僕が守るんだ。お前ら悪者なんかに触れさせないぞ』


『岡部は黙って! アーシがあんただけは逃がすから!』


『もう、やめようーよー。ワタシラ何でもするから許してよー』


『ソマシャッテコラー!  騒ぐな、泣かされてえのかコッラー』


「今までの行いは懺悔しますー。冷蔵庫のプリン食べたのは俺ですー。お墓参りも行きますー。だから許して―――」


クッソー、前の軽トラ邪魔だなあ。


一気に飛び越えるか。


ウチは羽をはばたかせると宙に舞い車上を飛び越える。


「イヤー。飛んでるー。飛んでるからーーてっ、今度は落ちる―――」


『ギャアギャア騒ぐな!痛い目見たいようだなア。アッー』


ボコッ、ドガッ、バキッ。


ヤバイ、あいつら手を出しやがった。


『痛ってー!この女強いぞ』


『僕は師匠から神秘の龍の力を分け与えられた水龍リントブルムの化身だ。邪悪な力には屈しない』


『いいぞー。岡部やっちゃえ。アンタ強かったんだね』


『土曜日にリオから聖龍の瞳の力を貰ったんだ』


ありゃりゃーー、ウチなんかヤラカシてましたか?


『こっちは空手部三人だぞ。ハダカにして写メ撮ってバラまいてやる』


『アンタら、積んでるんだよ。アーシ達拉致った時あんだけ騒いだんだから店が通報入れてるに決まってるじゃない。これ以上バカなことやると年少送りだよ』


『そうだ―。運転してるアンタは実刑出たら刑務所送りだぞ』


アンナ――。煽んな――。


『先輩、どうします』


『シャレジャマネッコラー! 舐めた口ききやがっレッガー。キッチリその体に教え込んでやるからダッテメーコッラー!覚悟しとけコッラー』

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