第15話 ドラゴンイヤーは地獄耳

 火曜日の朝


昨日より早めにミクリンが来てアンナと三人で少し予習をする。


ニッチはつまらなさそうに横に座っているが、目線がテキストを追っている。


本当にこの娘はツンデレなんだから。


お昼はハンバーグばかりとか言われたので、どんぶり風にアレンジしたお弁当を作って持って行った。


ウチは常に進化し続ける女なのだ!


今日はキャベツたっぷりロコモコ弁当だ。


トマトとキャベツと目玉焼きでもう茶色一色なんて言わせない。


インスタ映えするカラフルなお弁当で高評価間違い無し。


何故か呆れ顔のみんなから高評価もいただいた。


ロコモコはロコモコであって決してハンバーグでは無いのだ!


そして放課後。


簡単にノートをまとめる。


ミクリンは習い事があるそうで今日は直ぐに帰った。


カッチンは郷土史研の部活に行った。


郷土史研の歴代部長って影で生徒会を操ってるって噂があるんだよね。


郷土史研って何やってるんだろう。


今度カッチンに聞いてみよう。




 アンナはノートのまとめ中も、スマホを見てるニッチをチラチラと気にしてたけど、何か用があるって言って帰って行った。


結局ウチとニッチが残って教室でだべっている。


ニッチはラ〇ンを気にしながら、週末の一口ハンバーグ作りの件を打ち合わせていた。


作る個数と予算を二人で確認する。


その範囲で食材はウチが購入して、費用は後付けで返してもらう事に成った。


ニッチはこう言う所もシッカリしていて、人に甘えない。


ニッチの父さんは褒められた人じゃなかったから、離婚のとき結構辛い目に合ってるんだよね。


ニッチが学校で悪ぶるのも家族を守りたいって言う思いがそうさせてるんだと思う。


だから昨日のナギサとミユキの事は許せないんだ。


そうこうしてるとニッチのスマホに着信が入った。


「もしもし、・・・・えっナニ? ・・・・・・じゃあ六時に。・・・・うん、わかったよ」


「誰からだったの?」


「うん、ちょっとね。アーシちょっと用が出来たから今日は帰るわ。じゃあ土曜日ハンバーグの仕込みお願い」


「うん、じゃあまた明日」




 …あの声の相手はナギサ?六時に交差点のミス〇の前。


フムフム。


昨日の事を謝りたいって。


嘘だね、オメーらの腹の内はもう知れてんだ。


昨日聞いてるから全部知ってるぞ。


ウチのドラゴンイヤーはすべての悪事を聞き漏らさないのだよ。


ナギサやミユキの居場所は解らないから追えないけどニッチをドローン監視しておこう。


(ストーカーじゃねえからね!護衛の為だよモチロン。)


さあ、ウチも家に戻って目立たない服装に着替えて出直すとしようか。


さあ戦闘態勢だ!




 ウチは学習した。


学習したのだよ、龍崎君。


もうハートのサングラスは無しだ。


アンナのマネをしてラウンドタイプの偏光サングラスを買ったのだ。


なんとUV100%カットで1500円、送料無料、即日発送、翌日到着!!


アンナのメガネカッコよかったからね。


服装は動きやすいように今日はスキニータイプのデニムにニットのセーターをコーデ。


モチロン、顔バレ防止でサングラスに加えて茶色のウレタンマスクを着用する。


髪を括って、ミッキーキャップを深く被ると変装は完璧だ。


この完璧コーデで街へと向かう。


ニッチはまだ家で準備をしている。


ナギサたちからの連絡も来ていないようだ。


地獄耳ドローンをニッチから外す。


少し早めの時間に目的のミ〇ドから100mほど離れたショッピングモールの前にやって来たウチは、視覚ドローンを展開して周囲の状況を観察する。


駐車場にはなにやらイキった3人組のヤカラが黒いアルファードの前にたむろしていた。


『だからさー。今度ウサピョン商業の女子に声かけっからさ、カラオケ行こうぜ』


『お前、ウサピョンの女子に知り合いなんていたの』


『カラオケおごるって言ったら来るってさ』


『誰が払うんだよその金』


そんな話店の中に入ってやれよ。


店に迷惑だろう、まったく。


頭悪そうなヤカラの会話はどうでもいいから、店内をのぞいてみるか。


店内には中学生らしい男女4人組とゴスロリ少女が一人だけでニッチやナギサたちはまだ来ていない。


『何でも好きなの頼みなよ。一人五百円までならおごるから』


『じゃあ、季節限定のポン〇リング追加しよっかな』


『店員さ-ん。季節限定ポン〇とホットコーヒーのお替り』


ほほえましいと言うか世知辛いと言うか。


自分たちはお替り無料のホットコーヒーだけで女の子におごりですか。


ガンバレ少年たち。


でも五百円じゃあ女子のハートは掴めないぞ。

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