第14話 だからウチはバカじゃない
この調子だと明日の放課後はややこしいことになりそうだ。
緊急時に魔力の暴発は危険なので家に帰ると先週から覚醒した能力の確認を行った。
聖紋は両腕から両肩まで出てきてる。
今は服で隠せるけるけど夏になったらやばいし、体育の時間も不安だなぁ。
両方の瞳は赤いままではどうする事も出来ない。
カラコンで隠し続けるしかないなか。
手からビームと目からビームは魔力が安定してきたので抑えることができるようになったけど。
視覚と聴覚のドローン化はグーグル〇ップを参考に試してみると半径2kmくらいまで飛ばす事が可能だと解ったし。
それから背中に羽が生えてた、コウモリみたいな羽が。
これが一番ヤバイ変化だ。
龍って鳥の祖先だろう。
恐竜が進化して鳥になったんだから羽毛位生えててもいいじゃん。
コウモリの羽って、もろデビ〇マンレディーみたいじゃん。
そりゃあ昔からこういう羽だったけども、もう少し時代に迎合してくれてもいいじゃん。
手の平くらいのちっこい羽だけど、浮かんでるし、空飛べたし。
浮かんでたベランダから気合入れたらデビルウィング並みのデカさになって、一気に成層圏近くまで飛べて窒息しかけたし。
多分身体能力や体の強度も上がってるんだろうなあ。
口からも出せるんだろうな、熱い吐息が。
考えたくない。
この平和な日本でこのチートスペックって不要だろ。
どっちかって言えば邪魔じゃん。
どっかの秘密研究所で生体実験に使われるとか、どっかの軍隊に兵器代わりに使われるとか、あげくの果てにミサイルや核弾頭を浴びせられてオキシジェン・デストロイヤーとかぶち込まれたら泣くに泣けない。
危ないスペックは増えてもちっとも知能は上がらないし、て言うか多分こっちは打ち止めだろうって、知ってたよ!
ウチはバカじゃない、バカじゃないから。
この地域ではトップの県立ポンポコ高等学校の生徒だし、成績はどん底かもしれないけど。
もともとドラゴンの時から人間に変化することも大きさを変えることもできたけれど、細かいところでいろいろ違いがあったんだ。
聖紋とか羽根とか角とか牙とか出てたんだよね。
魔人属や亜人属が居たあの頃なら特に違和感はなかったんだ。
そもそもウチらは人属と敵対してたから。
昔使ってた人間に変化する時の魔方陣を思い出して意識を込めてみる。
瞳の中に魔方陣が展開されたのが分かる。
目の前に魔方陣が出現する。
魔力が全身を駆け巡った。
ゆっくりと全身の聖紋が消えて行く。
このまま魔力を制御する事で両腕や肩にまで出てきた聖紋は消せるようになった。
後は羽だな。
手のひらサイズの小さな羽だけど完璧に空も飛べるしホバリングも可能。
ベランダから庭に向かって一扇するだけで旋風を起こせるぐらいには強力。
見かけとのギャップがでかい。
気合で大きくなるなら、気合で隠せるかなア。
隠れろ、隠れろ、隠れろ。
ポコン!
変な音と共にどうにか羽も意識すれば体の中に隠すことはできた。
角と牙もそのうち出てくるのかなあ。
憂鬱だけど多分抑えられそうな気がする。
けれど、目の色だけは変わらない。
カラコンは必須アイテムだなあ。
魔力の無いこの世界では今や私の体内に巡るこの魔力だけが世界に残された魔力なんだろう。
瞳の色は魔力の証で、こればかりは隠す事が出来ないようだし。
でも魔方陣の記憶が先に戻っていて良かったよ。
この記憶無しに魔力だけ復活すると本当に龍に戻っちゃう。
そうなればこの先一生独りぼっちだ。
龍だった千六百年の間そんなこと考えた事無かったけど、現世に生まれて十六年。
たった十六年の人生でも、今の家族と離れたくないし友達とも別れたくない。
どこまでこの魔力が復活するのか、完全復活したときに私にどういう影響が出るのか、ウチの頭にはキャパオーバーの課題だよ。
まああまり考えすぎるのもウチの性分に合わない。
頭がオーバーヒートする前に打ち切らなけりゃあ。
あきらめてもう寝よう。
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