第3話 武蔵
「待っていたぞ、偽善者め!」
私は怒っていた声を上げるとともに常備しているカッターナイフを装備し、美が大好きなバカを追いかけていた。しかし、バカも逃げるということは覚えていたらしい。
それこそが今回の悲劇の原因だ。なんとあいつは世界の本質を理解している人のほうに逃げてしまった、私は怒りのあまり、何としてでも殺したかった。あの偽善者だけは。なんとしてでも。あのバカは体力がなかった運動していないのかこの三十路である私に追いつかれている。そしてごみの人生にカッターナイフで上から終止符を打とうとした。その時だ。その笹沼という人がそいつのことを庇ったのだ。私は脳が静止。刺してしまったことに対してではない。なぜ彼が庇ったかについてだ。私は理解できなかった。彼は人の醜悪さについて語っていたはずなのにだ。兎に角、私は彼の携帯電話を使って救急車を呼んだ。彼は救う必要があった。いや、救わなければなかった。それとともに警察に自首の連絡を入れた。私は間違ったことをしたという自覚があったからだ。
「以上です。」
「つまり、彼を刺したことは故意ではないということですね?」
そう聞かれると事の成り行きを説明した彼は、「はい」と静かに答えた。
バン!急に取調室のドアが開き、少し肥満気味の鍋山の部下と思われるものが入ってきて上司の耳元で何かを話している。鍋山はそれを聞いて一瞬キョトンとしたがすぐ正気に戻った。その後、少し低めの声で
「笹沼さん、亡くなったそうです。」
その場には沈黙が流れた。
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