鶏の唐揚げ3

 向かい座った雲雀が唐揚げに檸檬を搾っている。この時に檸檬の皮が下になるようにして搾ると、檸檬の香りが立ちやすいと少し前にテレビでやっていた事をふと思い出す。彼もそれを観て真似したのだろう。茜はかけない派なので自分の分もあげた。

 鶏の唐揚げ定食は人気メニューなだけあって大量に作って皿にセットされている事が多く、中には少し冷めてしまった物もあるが、一口齧ったそれは肉汁に溢れてきて舌が火傷しそうになる。どうやら揚げたてに当たったらしい。生姜とニンニクが入った醤油ダレにつけた舌の上で跳ねる程、柔らかくも食べ応えがある。二度揚げしたであろうカリッカリの衣をまとった鶏もも肉は、少し味付けが濃い気もしたが、それ故に白飯によく合うのだ。

 唐揚げは居酒屋などの飲食店だけでなく、コンビニやスーパーのお惣菜としても人気の商品である。今や味付けも塩だけでなく、チーズやらカレー風味やらとバリエーションも増えている。それでも茜は王道の醤油味をアツアツで食べるのが特に好きだった。実家も同じ味だからかもしれない。揚げたてなら尚良しだが、家で作るには何かと手間がかかってしまうので滅多に作らないから、余計に美味しく感じられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る