第3話……レベルアップ
――十年前。
銀髪の女の子が家に遊びに来た。とても可愛らしくて……その瞳が深緑で宝石のように綺麗だったのを覚えている。俺の心はその一瞬で奪われた。
「――エドウィン、あのね、わたし……世界一の騎士になるの! 一番になったら、結婚してあげるからねッ」
その子はそう微笑んで――、
二度と姿を現さなかった――。
詳しい事情はよく分からなかったけど……分からなかったけど……あれ?
意識が戻りつつある。
視界がボヤけているけど、多分、そこには銀髪と深緑の瞳の美しい女性がいた。……もしかして、俺は
「うわ!! 騎士団長!!」
「わたしの事はベリルと。ええ、その方がわたしがもれなく喜びます。なので、呼び捨てで構いませんよ」
「だ、だけど……分かったよ、ベリル。なんか俺としても、こっちの方がしっくりくるし」
なんか頭を撫でられているし、キスもされそうだった。……なんだこの騎士団長、美人だけど、ちょっとおかしいぞ。
何だ、何なんだこの状況。
俺を試している!? そうか、そうなんだな。これはこの騎士団の
そう状況を読み取っていると――
いきなり外から騎士が三十、五十と集まってきて、取り囲まれた。
「何事だ!!」
凄い剣幕でベリルが騎士達を
「騎士団長・ベリル様。申し訳ないのですが、その男、エドウィンには騎士団から出て行って貰います」
一人の男が前へ出て、そう厳しい口調で言った。……なんだこの赤髪ダブルピアスの男。糸目でこっち見んな。
「彼を追い出すというのか」
「そうです。聞く所によればエドウィンは侯爵家を追放された無能と聞き及んでおります。そのような男を騎士団で
納得がいかないと言って、ベリルは立ち上がる。――いや、ベリルにこれ以上の苦労や迷惑を掛けられない。ここは俺がいく。
「任せろって」
「エ、エドウィン……だが」
「なぁに、俺には
そう赤髪に向き直る。
「貴様、何を……! この五十人の騎士達をひとりで相手すると? 筋金入りの馬鹿か……それとも究極完全態の
「言いたい放題だな!! もう容赦しないぞ」
俺は拳をバキバキ鳴らし、ゆっくり歩んでいく。すると五十人の騎士が距離をつめてくる。今だ!!
俺は【レベルイーツ】を発動させ、視界を切り替える。周囲にいる騎士のレベルを喰った。早食いしまくって口に詰めて、詰めて、詰めまくった。
はぐはぐはぐはぐはぐッ!!
うめえええええええッッ!!
涙が出る程うめぇええッ!!
女騎士が多いからか、柔らかくて生クリームのように甘いのなんの。甘党の俺には最高すぎる瞬間だ。……ああ、これが女の子の甘美ってヤツか。――てか、何故このクリスタル騎士団はほとんど女なんだろうな。おかげで美味いレベルを召し上がれた。ご馳走さん!
そうしてレベルを食べれば――
なんと『Lv.334』となっていた。
俺つええええええええッ!!
「あの男、何をした? 何も変化はないようだが……まあいい。我が名はアゲート! もうすぐで副団長になれそうな男だ。騎士団長をこよなく愛し、崇拝する男なり!」
まだブツブツと話を続けるアゲート。大福になれそうな男?(難聴) そんなの知るか!!
「なあ、ベリル。ちょっと剣を借りるぞ」
「あ、ああ……」
彼女の腰にある鞘から剣を抜き、俺は
全員がバタリと一斉に倒れる。
おぉ、レベル300以上にもなると瞬間移動並の移動速度なのか。やべ~、俺やべ~。
「…………へ」
ぽかーんとアゲートは立ち尽くし、腰を抜かす。ビビってやんの。
「いっちょあがり~。さて、どうする、アゲート」
「ま……参りました」
俺の勝ちだな。
「ありがとう、ベリル。剣は返すよ。これが入団試験だったのかな? なかなか手応えがあったけど」
「…………エ、エドウィン。素晴らしいよ。最強の騎士になれるぞ!」
がばっと抱きつかれ、俺はビックリする。マジかよ。なんだ、俺はまだ試されているのか……!? くそう、無駄に大きい胸を押し当ててきやがって、今度はこれを乗り越えればいいんだな。
やってやらあ!!
『プシュ――――――!!』
……しかし、俺は忘れていた。女体耐性ゼロである事を。絶望的に耐性が無かった。そうだ、俺は女性経験なんてない人生を送っていたのだ。
気が付けば膨大な量の鼻血を噴き上げ――撃沈した。
…………ベ、ベリルのバインバインのおっぱいには勝てねぇ……。
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