第29話 キジムナーと遺伝子操作!ついに香織奪還‼

 「プルルル・・・ピッ!」エレベーターのドアは閉まり上へ上った。

1分としない間に降りて来て扉が開いた。

扉の脇に体を潜めていた三芳に「大丈夫だ!」と声を掛け話し始めた。

「この2人の格好見ておかしいと思わないか!」

「ええ!手前の人は今日お茶を差し入れてくれた村営住宅管理室の人です。」

「だとすると管理室からここへ繋がる通路が存在する事になる。」

「先輩!調べたところによるとこの地域も火山噴火で出来た空洞が多い為、地下施設建設には相応しい場所の様です。」

「と言う事は地中調査しそれが優先された訳だな!」

「そんな気がします。」

「この2人どうする。三芳!」

「中を案内させましょう。その前にあなたは足の止血をしなきゃね!」とポケットからハンカチを出して服の上から男の腕を縛り上げた。

そして、改めて警察手帳を出して「警視庁警備局公安本部三芳です。この施設内の捜査にご協力下さい。」と伝えた。

2人は頷き、中に繋がる扉を開けた。中は大空間になり立っている部分は2階の廊下となり1階を見下ろす場所にあった。

天井からLEDの強めの明かりが照らしていた。

その下に運送会社の倉庫の様なベルトコンベアーが動いている。

中心部には水が流れる噴水の様に大きなガジュマルの様な木がそびえ立つ。

その幹に数えきれない程の何かがブドウの巨峰の様に実っている。

よく見ると暗めのスモークガラス色に黄緑色の透明な液体が入った1m程の球体だ。

その中に浮かぶ人の様な物が見えて来た。

( 沖縄県ではガジュマルの大木にはキジムナーと言う妖精のようなものが住んでいると伝えられる。)

「おい!これは何なんだ!これがクローンなのか!」と興奮ぎみに町野が2人に詰め寄った。

「私達にも良く分からない!極秘研究だからとだけしか聞いていないんです。」

三芳が何かを見つけて口を抑えた!

「あの木の中心部の樹々に包まれて女の人がいるぅ〜!」

「あれは・・・ 香織… か?そんな筈はない!あいつはこの間まで占いの館にいて、今は政府機関へ潜入し8月に米国大統領来日中に行われる政府主催の船上パーティーに関する事。韓国とクウェートとメキシコの大使館からの来賓者メンバー出席の事を探っている筈だ!」

「まさか!あの時に会っていた香織がクローン?」町野は首を振り目を見開き「そんな筈がない!侵入がばれたに違いない!」

「なぜ香織さんが!」絶望感と悲しみから涙が流れた跡が残っていた。

「これには前田家に纏わる悲しい出来事が因縁となっている。」

「どう言う事なんですか?先輩!」

「… ああしなければ3人とも死んでいたんだろう!」

「始まりは前田マリ、前田会長の奥さん、香織のお祖母様だ。白血病を患い幾つもの治療を続けて来たが完治せず、最後に裏組織から奇妙な物「不老長寿と言われる人魚の肉」を手に入れ命だけは永らえる事が出来た。

しかし表には出られない体になった!」

「変異だよ!身体中の皮膚が青い鱗に変わり足は魚の尾ビレとなった!そして娘の茜も病魔に襲われその血を輸血したのだろう。孫娘の香織も俺がこの村に来た2年前に大事故に合いその血に寄って救われた事になる。この事件の始まりはそこからなんだろう!」

「死なない兵器クローンを完成させる為!だからあそこに香織がいる!またこの実験に利用されているんだろう!と俺の仮説はここまでだ!」

「先輩!どうしますか?選択は2つです。香織さんを救出し脱出するか、証拠だけつかんだ為、写真を取り引き上げる。」 

「最終判断はお前だ!三芳警視正!」

黙り込み前方の樹木に閉じ込められ捕らわれた香織を見つめながら「救助です。それと私達が今見ている事が証拠です。撮れてますよね!篠田隊長!」

「シッカリ撮れてますよ!」と胸のポケットに差してあるペンを指差して「どうですか!先輩!」

「流石ですよ!警視正様!それでこの2人はどうします。このままここに残しても消されるか、沈められるか!命はないでしょう!」

大袈裟に脅かして話す言葉に2人は怯えた顔で「助けて下さい!お願いします。」町野はすかさず「あんたらは警察に逮捕されれば国家権力に守られる。その為には俺の証言が条件ではあるんだが!さっきの事、銃刀法違反の容疑にはなるんだが証人は俺だけ!ここの情報や香織の救出を手伝う条件で証人してもいいが!どうする?」

「何でもします。だからお願いします。」

「あんたはどうする?」

「私もなんでも手伝います。」

「どうでしょうか?警視正!」

「2人は保護というかたちで警視庁に連行しましょう。」それから2人は話し始めた。「神藤雅之と加藤伸一が遺伝子操作で造られ産まれたクローン人間の製造工場は3年前から本格的に動きだし日本国内は元より海外へ臓器移植や戦争やゲリラの兵器として売られていると噂を聞いています。そしてジョーカーと呼ばれる体の大きな方!背丈は加藤より低い位ですが、この工場を仕切ってました。」「背の高い加藤!加藤って加藤伸一か?」「ハイッ!今日もあなた達の中に紛れ混んでいましたよね!」

「山本!あいつが伸一なのか!顔がまるで違う!それに背丈も以前に会った時よりも5cmは高くなっている!今考えると声は似ていたかも知れない。」

三芳が携帯の画面を見せた! 

「これが本当の山本警部です。事故に合う前の写真を送って貰いました。とても小柄な方です。」

「これでつじつまが合って来たな!伸一!加藤伸一の姿が余りにも見えて来なかった。」三芳が2人とも「神藤雅之は何処にいるの?」と聞くと「神藤先生は今日は来られてません。最近はいつも恵子さんと一緒に来られる事が多い気がします。会長が亡くなられたとの事でしたのでそちらに行かれているんではないでしょうか!」

神藤雅之:DNAゲノム、IPS細胞、遺伝子操作で日本国内よりも海外での評価が高く臨床実験では、第一人者と呼ばれて来ている。

「まずはどうすればあの木に辿り付けるかだが!どうせまたあの真っ赤なクローン!素早い爺さん達でも出てくるんだろうから!…厄介だな! 」

2017年7月21日14時10分

「制服に着替えましょうか!」と管理室の男の1人が言った。

「どう言う事だ!」

「警備隊の人達は神藤先生やその他のお客様方もあの青いスタッフジャケットを着ると攻撃して来ないんです。だから顔の認識は無いんじゃないですか?」

「あとはあの場所へ行くには何か方法はないのか?」さっきの男が話し始めた。

「向かい側の廊下部分から渡る通路が伸びるスイッチがあります。」

「分かった。まずは着替えだな!」

2017年7月21日 14時30分

 4人はスタッフルームで着替えを済ませ香織を迎えにガジュマロの木に向かった!

工場内のラインには操作する人は付いていない状態でオートメーションで行われている。但し、あの小柄の素早い警備兵が工場の作業員に見せかける様に薄いグレーの作業着にゴーグルとヘルメットを被り5mおきに立っている。

我々も予定通りスイッチを押してガジュマロの木まで伸びる通路を渡った。

香織はハーフキャップの脳神経を操作するヘッドギアを被され身体には何も着させられない裸の状態で中心部の水溜りに入れられている。

また若返りをされた状態でここへ連れて来られたんだろう。

身体のあちこちに管が繋がれていて血液の循環とクローン再生に必要な栄養素やホルモン活性化薬などが投与されている様に見える。核酸(かくさんnucleic acid)全ての生物細胞内に存在し,蛋白質生合成および生物遺伝現象に関与している重要な物質で、デオキシリボ核酸 DNAとリボ核酸 RNAの2種がある。 DNAは細胞核の染色体に属する遺伝子の本体である。

RNAは遺伝子の形質発現である蛋白質の生合成を活性化する働きを担っている。

自己増殖能力をもち最単純化された存在のウイルスも DNA (一部はRNA) をもっており、それはウイルスの遺伝子として働いている。ヌクレオチド【塩基(水酸化物イオンを生じる物質。水溶性アルカリ物質。)+糖+リン酸(オルトリン酸:化学式 H3PO4。潮解性の無色柱状結晶。水溶性リン酸肥料・医薬・洗剤などの原料 )のつながった物質構成単位】の長い鎖状結合物が核酸であり、塩基には DNAも RNAも4種ずつありアデニン・グアニン・シトシンは共通であるが、そのほか DNAはチミン・RNAはウラシルを含む。

糖部分はDNAではデオキシリボース、RNAではリボースである。

「分かった。まずは着替えだな!」

「この辺の点滴間は抜いても問題なさそうだが血液の循環間だけは投石機をOFFにしないと!」

「こんな事だと思ったよ!」と振り返ると今井が青いスタッフジャケットを着て立っていた。

「お前!上の見張りはどうした!」と後ろを見ると「彼奴らがお前のGPSを追ってここへ助けに来たんだと!」

「洋平!龍二!京!どうしたんだ!」

「父さんだけに任せておくのは心配でね!上には藤井さんと仁志君が守っている。」

「和也も来てくれたのか!」

「こいつら!いきなり飛び込んで来たんで最初敵かと思って焦ったよ!状況は三芳から聞いた!今皆もスタッフルームでジャケット借りてから来たところだ!」

洋平が背負っていたカバンからパソコンを取り出し「こう言う事もあるかと思って!透析機コントローラーのUSBにこのコードを繋いで!」

「お前!詳しいのか!」

「少しだけ!一応自称ゲーマーだからね!」とキーボードをパチパチと叩きながら「あと3分位だから!救出する他の事を進めておいてよ!」町野と三芳で点滴管を抜いて行った。

「パチパチパチ。これで終了!パチンッ。」「キューン!」と回転音が止まり透析機から流れる血液が逆流し出した!血管から最後の管を抜き自分のジャケットを香織に着させ抱き上げた。

その時「ビィーッ!ビィーッ!ビィーッ!侵入者警戒!侵入者警戒!」とサイレンが鳴り響いた!警備隊が町野を確認し階段方向へ一気に走り出した。

「俺か!・・・今井!香織を頼む!」と渡すと通路を渡り管理室の1人に何かを伝えると警備隊が上がって来る階段方面へ走り出した。

洋平は今井に近付き「香織って!母さん… !」

「洋平君!香織さんを!」と言うと香織を洋平に手渡すと今井は町野と反対方向から上って来る警備隊へ向かった!それを龍二も追って行った。

「さっき町野先輩から何て言われたの?」「皆を管理室へ上がるエレベーターで表に案内しろ!と言われました。」

三芳と香織を背負った洋平は管理室の男達に案内されその場所へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る