第27話 激突ジョーカー三芳救出!SAT隊核心部突入‼
CBRから降りると後方の女性に「そのまま乗ってって!」というと少し前に進みながら黄色と黒の帯のバリケード版の前まで移動し「済まないが、少し待ってて!」と名も知らない女性に伝えるとジョーカーの前に向かいながら話し出した。
「伊藤譲二26歳、茨城県稲敷郡美浦村出身、両親と妹と祖父母の6人暮しで畜産農家で豚の品種改良の研究で毎月東京の大学へ行っていたそうだ。」
「18年前に東京に青年会の研修会場にも現れずに、それ以来行方不明状態になっている。その年の冬にはこの村に居たらしい。それがあんたとの出会った年だ!」
「それがどうしたんだ!昔の事だ、もう忘れたよ!」
「そうか!あまり時間がないから、三芳は何処なんだ!何処へ連れて行った!」
「安心しな!奥の車に生きて眠っているよ。お前と一緒にあの車ごと、広瀬ダムの底に沈んで貰う!」
「あんたは知り過ぎたんだ!もうこれ以上の詮索は我々にとって一番の邪魔者なんだよ!だからあの時は香織様のパートナーと言う事で命だけは助けてやったが今回はそうはいかない!」
「ジョーカー!ここでは邪魔者が入る!三芳がいる駐車場の方で決着を付ける!いいな!あんたは知り過ぎたんだ!もうこれ以上の詮索は我々にとって一番の邪魔者なんだよ!だから今回はそうはいかない!」
「いいだろう!お前の屍を運ぶ手間が省ける!」と言うと歩き出した。
林道に入り10m位で工事用のコンテナ事務所と練馬ナンバーのワンボックスが1台停まっている場所に出た。
「村営住宅へ公安部隊のTEAMが向かった!あれは罠か?」
歩くのを止めて振り向き 「可哀想だがそのTEAMのメンバーほとんどは犠牲になるだろう!俺の子供達と一緒に。」
「どう言う事だ!」
「品種改良が完成した新種の親豚から初めて産まれた子豚に小型化した爆弾が埋め込まれている。10頭すべてに仕掛けられている!」
「それが仕掛けられた罠と言う事なんだな!」
「ああ!そうだ!」
「聞こえたか今井!豚舎への突入は見遅れ!周辺でお前達を見張っている奴等がいる!電波式の時限装置になっている。」
「貴様!誰と話してるんだ!」と捕まえに来るのをステップで躱し、再度闘牛の様に突っ込んでくる。
それを再び躱しを続けている内にコンテナが後ろに迫って来て逃げ場がなくなって来た!「逃げてばかりじゃなくて、もうそろそろお前の力を見せてみろ!」
「そうだな!」と答えるとその場は一瞬にして静まり返り町野はいつもの蹲踞の姿勢から前に出した両手で構え、目を閉じた。
先に動いたのは町野の方だった。
2歩前にステップし右足を振り上げ、立ちはだかる巨像の左肩付近に上段蹴りが炸裂した!それを微動打にせず「どうしたんだ!こんな程度か?」と瞬時に両太ももへ左・右と続けざまに下段蹴りを打ち込んだ!
一瞬顔を歪めたが何食わぬ顔で「次はこちらのを受けてもらう!」と言うと姿勢を低くし大きく一歩下がり、前に出た!
町野も態勢を崩し後退そこへ勢い良くダンプカーの様に町野ごとコンテナに突っ込んだ!「ドッカァ〜ン!」と林中に響き渡る音に木々で体を休めている鳥達は羽ばたき、動物達も周辺から遠ざかって行った。
押し潰され勝負は明らかにジョーカーが握ったかの様に見えた。
次の瞬間コンテナに体を押し付けたまま動かないでいる。
壁との間にも町野はいない!
「ガサッ!」という音と共に「危なかったぁ〜!」と聞こえて来た。
バックステップしながら相手の懐へ潜り込みながらカウンターで右膝をアゴに1発めり込ませていた。
この布石は右肩への上段蹴りで首の揺らぎから頚椎辺りに弱点があると判断し両足へのダメージで瞬発力を弱められた結果が最後の一撃に繋がった。
コンテナに頭部を激突させめり込んだ体を起こして地面に寝かせた。
携帯を取り出し「今井か!こっちは片付いた。悪いが救急車を1台回してくれ!あと準備は整ったと思うがあの爆弾を不発弾にするには!」
「分かってるよ!閃光破裂弾による磁場発生により一時的にあらゆる電波が通じなくなる。その間に電気ショックで体内に埋め込まれた起爆装置部分を破壊してしまえば爆破は防げる筈だ!だろ!」
「余計なお世話って奴だな!」
「そうだな!じゃあ、また後で一杯付き合え!」
「了解だ!」と携帯をポケットにしまう手に被さる様に影が大きく広がり後ろを振り向きかけた時「お…おとおさぁ〜ん!・・ 」と言う声に動きを止めた奴に後ろ回し蹴りが左側からアゴをかすめ顔が左に傾いて膝からガクッとしゃがみ込んだ!
正面を向くと通りに立ち尽くしているのはさっきの若い母親だった。
「おとおさん、って!もしかして秋ちゃんなのか!」
「すまない!秋ちゃん。こうするしかなかったんだ!でも、もう大丈夫だ!意識が戻ればまた元のお父さんに戻る。」
「あなたは誰なの!それと薄っすらと残っていた面影と聞いた事のある声!私は3つになる頃に隣村の施設に預けられ17年間、親の温かみを知らずに生きて来たの!18歳で娘を産み1人働きながら育てて来た!自分と同じ寂しい想いをさせたくは無かったの!」「すまなかった!秋!」と目を少し開け話し出した。
出来る限りの力で体を起こし話し始めた。「家畜の品種改良研究で東京の大学を訪れる内に研究室で若菜と出会い、山梨県に日本で最も理想的な研究施設があるとこの村の事を聞いてやって来た。何もかもが用意され、あらゆる設備が整った場所でこの村で畜産を復活させる為に新しいブランドポークの開発に力を貸して欲しいと口説かれこの村で生活を始めた。そこにある男が研究協力に参加し始めた頃からおかしな事が起き始めた。そして、もう1人アメリカ留学から帰国したばかりの若い研究員が来てから村民の集まりが多くなり、県外からも見知らぬ人が待機して訪れる様になって来た。若菜と2人の生活はとても幸せな日々が続いていた。そして若菜のお腹に命が宿った事が分かった。その年の10月10日に秋が産まれた。その頃から幸せな生活を守る為に奴らの言う事に手を貸し始めた。そして今、考えてみるとその頃から段々と記憶の塗り替えが進められて来たのだと思う。」
「丈さん!今までの事はどこまで覚えているんだ!」
「全て記憶にはある。だけど前の記憶が他人の事に思えてまだ調整が出来ないんだ!そうだ!若菜は何処にいるんだ!秋はどうしている!」
サイレンの音が近付いて来ている。
今井が手配してくれたレスキューだろう!「若菜さんは昨日保護して安全な場所に警護を付けている。秋ちゃんは… 」と言い掛けたところで、後ろから肩を叩かれた。
「秋ちゃんも元気にしている。」
振り向くと若い母親も頷いている。
サイレンと共に救急車が到着した。
ストレッチャーに乗せられて病院へ搬送される救急車に乗る前に「丈さん!この人のお子さんもケガをして同じ病院に運ばれているから一緒に言ってもらう!病院には仲間の警察官が護衛と事情聴取に向かわせているが心配しなくていいから!」
「あの〜!私はここで。」と拒む秋を「いいから乗って!」と無理やり押し込み「丈さん!最後に一つ聞いておきたい事がある。」「な・なんですか?」
「目をつぶって今一番会いたい人を想い浮かべて下さい。そこには誰がいる?」
「若菜と秋ちゃんが笑っている。」
秋は涙を流しながらチョコンと頭を下げた。「当たり前だ!」と言うと救急隊員に後を頼んだ!
「アッそうだ!」と慌てて車の後部座席に縛られ横になっている三芳の猿轡を外して「遅くなった!すまんッ!」と手を合わせた。「待ちましたよ!先輩!」とその後現在の状況を説明し仲間がいるあの場所へ向かった。
2017年7月21日 11時10分
出迎えていたのは今井と山川警視を先頭にSATのメンバーと公安部 。
山川が前に立ち「三芳警視正!ご無事で何よりです。現状の報告をします。施設捜索前に町野さんからの情報で閃光破裂弾を使いました。それによる磁場発生で一時的に仕掛けられた爆弾を電波操作出来なくさせました。その間に子豚の体内に埋め込まれた起爆装置部分を電気ショックで破壊し遠隔操作していた者を見付け出し取り押さえました。李(リー)青風と言う前田の寺院内で武道の師範をしている男でした。」
続いて長身の山本が話出した。
「建物・施設内の操作結果施設Aは新種子豚の飼育クリーンルームを過ぎると走り回れるエリアと温水プールと休息睡眠ルームと食事を行う部屋6つに別れていて、その内の1つが品種改良の為の研究施設になっていた。研究室責任者名にジョーカーこと斎藤丈の名が幾つもあった。子豚たちは情報の通り小型爆弾が体内に埋め込まれていた。起爆装置を破壊出来たので全員無事に帰還出来ました。その他には クローン研究に関する証拠は何も見つからなかった。」
今井が前に出て「施設B内は桃とぶどう畑の中から大量の出荷出来ない物(雨風で落下してしまった物)を子豚たちの餌に配合する加工がされていた。施設で働くほとんどが北から来た労働者達で奥にその労働者が住まいに使っている部屋があったがとても良い環境ではなく2段ベットが10個位とトイレとシャワーがある程度の場所があったがそれ以外は怪しい物はなく地下へ繋がる場所も無かった。電波反応も確認されなかった!以上。」
最後に山川が話し出した。
「施設Cが最も疑わしかった。外部に大型の発電システム用のバッテリーコンデンサーと屋根の全面と建物裏側に太陽光パネルが並ぶ小型のソーラーファームがあった。だか内部は半分は出荷用の豚舎と加工食品にする為の工場に大勢の施設B同様に北の労働者が機械を動かしていた。後はここにも証拠となる物は無かった。」
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