第25話 話し始めた三芳!前田の死とジョーカー‼
右手の甲からピリビリと少し痺れを感じた。
そして何かの変化に気付き始めた。
空気の匂い、カーペットの色、天井の高さ、ドアノブの色形、LEDの照明は消えていた筈。
天井スプリンクラーから噴射したミストと…!とハッキリとして来た。
さっきまでの姿も顔も何もかも変わって来た!
「さぁてと!次はどうするんだ三芳警視正!もうそろそろ起き上がる時間だろ!爺さん達!」と言うとユックリと立ち上がり一斉に目を閉じた。
「電池切れか?少し話す時間がとれたな!」「ええ!何か!」
「この素早い爺さん達どうする?」
「手錠かけて、後で地下の牢屋に移動させる。」
町野は一瞬、下を向き両手で両頬を強めに叩き顔を上げた。
「俺たち何故ここまですんなり来れたんだ !それとおかしな事にエレベーターに乗った瞬間にここにいて何階だか分からないのに10階だと思い込んでいる。」
「何言ってるんだよ 父さん!2人でバイクに乗りここまで来たじゃないか!」
「洋平!その後だ!ところどころ記憶が変わっている。いや、変えられている!」
「あれ!俺、誰とここへ来たんだ!」
三芳の顔を見つめて言った。
「催眠だな!・・・という事は信一がいる筈だ!それと時間も場所も狂わされている!そうだよな若菜さん!」
「はじめは、俺にもあんたが三芳に見えていたよ !でも三芳は右利きで、あなたは左利き!そして髪の香りが違う!とだんだんと魔法が溶けて来たんだよ!彼らのお陰で!」「さっき 、三芳に同じ事を聞いたんだよ!そしたら、手錠かけて後で地下の牢屋に移動させると言ったんだよ!手錠・牢屋何て言わないんだよ!三芳は!」
「そんな事言ってない!」と三芳はあわてて首を振った。
「それとあの後の事を読んでいたかの様にインターポールの清水は俺と握手を交わした時に洒落た事をして行ったんだ!」と右手の甲を前に出し見せた!
「何か神経組織に刺激を与える物がフィルターを通し、タイマーの様に時間を掛けて催眠を解く薬品なんだろう!だから、あなたの事はハッキリと分かるよ!若菜さん!三芳はどうした!どこにいる?」と左手を掴んだ!
「離して下さい!」と振り払うと「…そうですか!それではしょうがないですね!あの人はさっきジョーカーが連れて行った。」
「という事はここは山梨県甲府市の何処かなんだな!」
「そうよ!だったらどうなの!」
「あなたには分からないだろうが俺に明らかに探らせたい人がいて、そうさせる重大な事が残っていたんだ!もう一方でそれを怖れて俺を始末するか!仲間に取り込もうと考えた奴がいる筈だ!あんたに指示を出してる奴だ!」
「何を言っているの!そんな場所、ここにはないわよ!ここには!」と口を押さえた。「そう言えば秋ちゃんて言ったかな!丈さんとの子供。もう18位になったんだろ!」「・・・もう忘れた事!どうしてるかは知らない!」
「何て勝手な女だ!それでも母親か!」…若菜は震えながら歯を食いしばり天井を見上げた。
そして零れ落ちる涙を拭うと真っ赤な目で睨みつけながら「あなたには分からないでしょう!あの娘以外に毎年の様に組織の子を妊らされた私たちの気持ちなんて!」と一旦話を止め頭を抱えまた口を押さえた。
「どうして!勝手に話してる。…産まれて来た子供達は15歳まで大金で売られ期限付きで里親に育てられ、その後は能力により生かされるかまたは海外で臓器移植の為の違法売買に利用されている。」
「分かったよ!話してくれてありがとう!若菜さん。」
「私はこんな事話すつもりは無かったの!なのに・・・!」
「メモと共に握らされていた。自白強要のそれとは別にこの赤い爺さん達の様なクローンが作られ海外の戦地やゲリラ兵として別のオリジナル兵器クローンが作られる事に日本が関与する事になる。悪魔と手を握りこのままでは世界規模の戦犯や環境破壊を起こすきっかけとなり、地球滅亡へのシナリオに名を残す事になる。これを潰すのがインターポールの狙いだったのか! だから北の核ミサイルにて消滅させる様に仕向けたのも、北の国が 米国に加担する日本へ向けた先制攻撃に見せ掛けた1発でこの地域全体を核汚染の侵入禁止エリアとして国連管理区域にする事が作戦なんだろう!」
「私はそんな恐ろしい事知らない!ただあの村営住宅に何故か、神藤先生や恵子さん、そして加藤信一が頻繁に行き来している。」「そこに何かがあるという事ですね!ありがとう、若菜さん!俺はまたあの西湖コウモリ穴に何かがあるんではと疑っていた!それとジョーカーが誰なのかも、シックスセンスが閃いてして来た。」
「何を話したの!私は!きっと処分される!どうしよう!」
「若菜さん!俺の時計を狂わせたつもりだろうけど、これ!電波時計。今の時間は21時17分。そしてGPSが付いているの!だからこのビルの周りには警視庁の三芳の部下達と今井達が周りを固めている。だからあなたは保護され安全な場所で守られる。安心して!」
「それと、ゴメンね!さっき言った事!「地球滅亡へのシナリオ」って俺の妄想だから!」
混乱して髪の毛をグチャグチャに乱れさせ俯いていた若菜は町野に掴みかかろうと爪を立て両手を伸ばして来た。
その両手首を掴んだ町野は「幸せを取り戻すんだ!まだ間に合うから!苦しんでいる村の人達もみんな助けるんだ!」力が抜けて行く!
そして、膝を付いて泣き出した!
「本当に、まだ間に合うかな!」町野はニコッと笑い頷いた。
「大丈夫!父さんが大丈夫と言ったら大体間違いないから!」と洋平が言うと振り返り町野は「大体って何だよ!絶対って言えよ!」「いちいちうるさいな!大体は大体何だから!それ以上でも、それ以下でも、ないんだから!」
「大体って言うのは90%位の事を言うんだよ!」
「じゃあ!あんたの大体は85%位だよ!」「何で下がるんだよ!このガキは!」
「何だよ!クソオヤジ!」
「フフフ・・・ッ!親子の痴話喧嘩を見てこんなに幸せな気分になれるなんて、不思議ね!」
ハッとして町野は洋平に向けて右目を閉じてサインを送った。
洋平も親指を立てて微笑んだ!次の瞬間LEDの眩しさに目を閉じた。
非常灯の薄明かりに目が慣れて来た中で目の前が真っ白になった。
若菜へ伝えた「地球滅亡へのシナリオ」って町野の妄想ではなく想定できる情報からインターポール内でシッカリと分析された2020年までに起きうる未来予測だった。
次の瞬間LEDの眩しさに目を閉じた。非常灯の薄明かりに目が慣れて来た中で目の前が真っ白になった。
「ピンッ!ガサガサ!ザワザワ!ダッダッダッダッダッダッ!町野!大丈夫かッ!」
「今井か!眩しいな!大丈夫だ!ここは何処だ!」
「甲府の前田興業工事中の新社屋5階だ!」「そうだよな!甲府にこんなデカイビルは前田しかないと思ってたよ!」
「その前田喜兵衛氏の遺体が遺書と共に見つかったと先ほど県警から連絡が入った。死後2日〜3日経過での発見だ!死因は頸動脈をひと突きの 出血死だ!」
「場所は!何処だ!… 」
「旧高野家住宅だ!」旧高野家住宅、甲府市にある名家の旧邸文化財となっている場所だ!旧高野家住宅山梨県甲州市塩山上於曽1651。
高野家はこの地で長百姓を務めた家柄で、江戸幕府に納める甘草を栽培していたことから「甘草屋敷」と呼ばれていた。
江戸時代初期頃より薬草である甘草の栽培を始め、八代将軍徳川吉宗の享保5年(1720年)に幕府御用として栽培と管理が命ぜられました。一反十九歩の甘草園は年貢諸役を免除され、その後同家が栽培する甘草は 、幕府官営の小石川御薬園で栽培するための補給源となり、また薬種として幕府へ上納を行いました。
江戸時代後期の建築である主屋の他、蔵などの付属建物や宅地4,932㎡も含め、国の重要文化財に指定されている。
「何であそこなんだ!爺ちゃん祖父のだ!」 2017年7月21日
「公平!公平〜!」と呼ぶ声で振り向くと、トランプカードの中から手招きをしていピエロのマスクを被った男!
三芳は手足をロープで結ばれ口は猿轡で塞がれている。
「前田の持っている武田の埋蔵金は元々は高野の物じゃ!」とマスクを脱ぐと爺ちゃんの目が赤く光り、町野の顔の前に手を広げその中心から円を書く様に超音波で催眠を掛けられる。
「ヤメロ〜!」と蹴り飛ばしたところで目を覚ました。
「父さん!大分魘されてたけど!…凄い汗かいて!大丈夫!」と洋平が言うと「これから会わなくいけない人がいる。お前はここで龍二達が来るのを待って合流して待機していてくれ!」
この後、1人であの場所へ向かった。
「ガチャッ!」とドアノブが回り扉が開いた!
「そろそろ来る頃じゃろと思っておった。」「それって、どう言う事だ!」
「前田の旦那様が亡くなった事とその場所が高野の家だった事を聞きに来たんじゃろう。」
「その通りです。Dr.高野!」
「この間の治療費は多めに請求したが警視庁から早速、振込みがあったよ!」
この事には触れずに無視をした町野は 「爺ちゃんはこの事件に関わってないよな!」
窓の方へ歩き出し老人は外を覗き込みながら「公平!…もうすぐまた夏が来るな!朝日が植物らに付いた夜露を輝かせて、小鳥達がさえずり!この辺りじゃと動物達もよく顔を見せてくれるんじゃ!」
真実を知りたい町野は結論を焦る思いを飲み込み「そうだね!…爺ちゃん!」
「婆さんが亡くなり、あの村でお前と2人で暮していた頃はまだ平和だった。もっと昔に御先祖様が武田から預かって隠していた埋蔵金を前田と2人で見つけてしまった後、あいつも変わってしまったんじゃ!はじめは村人の生活を良くする為にその金を使っていた筈が役人や金貸 …銀行や工事業者がその金を狙って近づいて来た。前田も1人じゃ抱え切れなくなったんじゃろう!銀行に会社を作らされ、銀行からも人が入り、役人も数名送り込まれ前田総業は山梨ではトップの企業に成長したんじゃ!」
「爺ちゃんと2人で発見したんじゃないのか!何で前田1人の物になったんだ!」「元々は前田家が武田様から託された物!我が高野家は隠し守る様に使われていた身!そう伝えられていた。」
「爺ちゃんはそれで良かったのか!前田がこの町を牛耳って、何もかもが思うがままにして、あの村にいる人のほとんどが洗脳されマインドコントロールされている。」
こちらを向き直し「もう、いくつになると思うんじゃ!この老いぼれに何が出来ると言うんじゃ!」
「と言う事は今回の事件には関わってはいないんですね!」
「当たり前じゃろ!ただ3日前に変な電話がかかって来ておった。」
「誰からですか!」
「前田本人からじゃよ。」
「どんな話しだったんですか!」
「それがじゃ、武田様のお金を半分返すからこれから迎えの車を行かせる。」
「詳しい話はその時に。」と何だか焦っていたかの様じゃった。
迎えの車は結局来なかった。
「どうして前田が亡くなった事を知っているんですか!」
「昨日の朝、前田本人の携帯電話からジョーカーと名乗る男が電話をして来たんじゃよ。旧高野邸で前田が自害したと!」
「またジョーカーか!爺ちゃん、しばらくここに警察の見張りを付ける!俺はこれからジョーカーに会いに行く。三芳が人質になっているんだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます