第19話 ついに姿を現す化け物!血のキヅナ‼

 「ブゥアッ!」とまるでシャチがジャンプした後の様な大きな水しぶきを上げて何かが浮かび上がって来た!


「愚かな人間どもよ!騒ぎ立てるがよい!


この星の運命は月の光が教えてくれている!」と青の鎧の様な発光した鱗を体全体にまとい、金色に輝く髪の毛と真っ赤な目から光線が広がっている。


この光景をここにいる6人が幻でも見た様な顔で口をポカッと開けたまま呆然としついた。


「何なんだ!こいつは!」


その輝いた身体をプールの底の方まで伸ばしている。


全長3m以上はあるだろうか!藤井が銃を取り出し銃口をその化け物に向けた!


「和也!やめとけ!こいつには鉛の弾など効かない筈だ!」


「公平さん!どうするんだ!」


「この人には罪は無い!

自分の意思とは違いこんな化け物にされてしまったんだ!

かわいそうに!

もう30年近くもだ!

前田の爺さんも満月の夜だけあのボートの吊り橋でいつまでも若いままのマリさんに会っているのだろう!」


 ムーンサイクル:「新月は夜も暗い!夜間行動は水の中を泳いでいるだけ!

下弦月は段々と明るい!

日の出前が水面付近まで上がって行動!

満月は明るい!

日が暮れて直ぐに陸地近くまで行動範囲が広まる!

上弦月は段々と暗い!

日が暮れて丑三つ時までの行動!

母さんも父さんも茜も守って来たんだ!」


「茜が東京でこの満月に合わせて若い女性の生き血を求めて行っていたのも、はじめは香織とその子供達を探し時々東京へ行っているのは知っていた。

だから、いつも見張りを付けていた。

その中で洋平君の事が分かったんだ。

それからここへ洋平君を無事に連れて来る役目を君に託したんだ!

もうこれ以上の無理を茜にもさせられなかった。」


「日中の太陽光線が危険という事か!」


「無実の犯人を作りあげ、あの大げさなマスコミ報道も全部仕組まれた事だったのか!

早田警視総監の裏に国を動かす代議士先生達がいるんだよな!答えてもらおうか。」


「金の流れや裏の取引は神藤と親父の秘書の澤田が行っている!」


「そう言う事か!

大学建設と言えばあのお方が絡んでくる。

厄介な事だらけだからここは隆さん!

俺は何も見なかった事にする。

あの地下の密造工場以外の事は!」


「公平さん!

無茶な事、言うなよ!

現に逮捕しちゃってるじゃないすか?」


「洋平!

今までの動画!

シッカリとそのスマホで撮れてるよな!」


「あったりまえだよ!」


「よし!そうしたら例のメンバーにその動画を送ってくれ!」


「送ったよ!」


「まだ来ないな!

動画だから少し時間が掛かるのか?」


「隆さん!

条件を一つだけ付ける!あなたに密告者になってもらう!

その為の証拠集めを行ってくれ!

それまでは何も起こらない。」


「そんな事したら私だけではなくここにいる全ての人が抹殺される事になる。」


「村ごと無くなるってか!

そんな事ある筈が無い !

そんな事させてたまるか!」


「時間は3日だ!

3日後の17時がタイムリミットです!

このタイミングで今、発信したデータを受け取った者が全員でSNSを通じてここで起きてる事!

お母さん達の事も含め世界中に配信される!」


「その後に国家権力がこの村やこの事に関わる人たちを抹殺に来るので世界中の善意の力で見張って欲しい!

と付け加えて配信する。」


「保険ですよ!」


「あなたの告発文にも同様の保険をかける!」


「どうすればいい!」


「それはあなたが考える事です。

その代議士先生たちが立ち上がれなくなる!政界引退位では済まされない物的証拠を見つけ出せるかだ!」


公平は和也から手錠の鍵を受け取り、プールの方に歩き出した。


「ウゥ〜ッ!」と唸り声を上げる化け物の前に立つと


「マリさん!あの日以来ですね!」


左側の水槽を見ながら

「茜さんから救けを求められ、15年ぶりにここへ来ました!

今日はここにこうして、家族3人が集まっている。

今、僕たちは隆さんに協力して悪事をはたらくヤカラ達を壊滅させる事を誓いました。

そしてあなた達2人を守る為と命をかけてくれています!

だからもう少しこのままでお待ち下さい。」


と言うと唸り声は治まり、真っ赤に光をはなっていた目は黄色く変わりその目からは大粒の涙が幾つもこぼれ落ち、頭を前に下げ頷いている様に見えた。


背後からその光景を見ていた僕らはあの人の身体からとてもあたたかい光がみんなを包んでいる様に見えていた!


手錠を外しながら・・・。


「OKだよ!」


「あとは伸一と神藤には嗅ぎつけられない様に十分!注意を図って進めてくれ!」


「了解した!」と隆が答えた後に3人に「宜しくお願いします!」と頭を下げた。


「和也!後は頼む!

上にヒロシとジャイも待機させてる。」


「分かってますよ!

公平さん!俺たちをもっと信用して下さい!」


「そうだな!わるい!和也!」

一抹の不安を抱きながら洋平とエレベーターに乗った。


静かに扉が閉まった。


「あんたが俺たちの本当の父親なんだな!」


「2人共 、俺と香織が愛し合って産まれて来た大切な子供だ!

ただ俺はお前が産まれた事も知らず 記憶を奪われてしまっていた。

香織も2人を守る為に今のご両親にやむなく引き渡す事で奴らから隠したんだろう!」


「それはわかった!

あんたは、いつから分かってたんだ。

俺と姉ぇ〜ちゃんの事!」


「俺の記憶が完全に元に戻ったのはお前と池袋で会った1週間前の事だった!

始めて茜さんとあった日、コートのポケットにあったメモ用紙に香織の務めている居酒屋とお前達の現在の名前と住所が書かれていた。

それを情報屋のSOPHIA(ソフィア)に調べさせた。

この事と記憶がリンクした!

あの日あの居酒屋へ行き記憶が薄れる位、酒に酔わされたのも、奴が馬鹿な投資にハマり紹介された金貸しに騙され脅されてやったと桜井も白状した。

それも浜田物産の金貸会社だった事は分かっていた。

だから桜井を巻き込んでしまったのも俺なのかも知れない!…そう言う事だ!」


「状況は理解出来たよ!

ただ、あまりにも突然で上手く対応出来ない!

本当の母さんはその居酒屋にいるの!」に洋平は精一杯の言葉で伝えた。


「オッさんじゃないのかよ!」分かったよと視線で返事を送った。 


エレベーターは地上階に着いた!


扉が開き階段を上がり表に繋がる扉を開けた。


「総長ぉ〜!

今の内に行って下さいぃ〜!

車と単車を用意してあります。」とヒロシとジャイが製造工場、例の地下室にいたあの女達が狂わされてゾンビの様に意識を無くし向かって来ていた 。


公平達もそいつらを倒しすり抜けながらあの地下水路へ向かった 。


「洋平!ちょっと待っててくれ!」と言うとケツのポケットから小さな瓶を取り出した。


「ヒロシ!ジャイも避けろ!」と言うとそのガラス瓶を連中のど真ん中に投げ個んだ!


割れた瓶からピンク色の液体が周りに飛び散った。


女達の動きが止まり一人一人座り出した。


「ヒロシ!そこの倉庫にガムテープがある。それで手足を巻いておけ!

後は和也と連絡をとれ!」というと洋平の待つ場所へ急いだ。


裏にまわらり洋平の姿がない!


「洋平!いくぞ!洋平!ションベンか?」と表のトイレへ向かうが姿がない!

また裏に周りに開いたままのシャッターに手をかけた時、錆び付いた五寸釘が落ちて来た。


拾い上げてすぐに分かった!


公平は中に入り自動シャッターを下げた!


「姉ちゃんを見つけた!後を追う!」


シャッターの裏側に五寸釘で書いたのだろう!先が大分削れていた。


室内灯のスイッチを付け10段ある階段の途中で立ち止まり耳をすませた。


ゆっくりと下がり広々とした空間となりこの先にはエスカレーターで下へ急いだ!


そっと先を見ると洋平がボートのロープフックを外していた!背中に「ばちぃん!カシャン!」と何かが当たった!


「イテッ!」と振り向くと公平が口元に人差し指一本立てて歩いて来た!


近づき耳元で…「いいか!こう言うのは罠の可能性がある。

だから少し時間をおいて無人で行かせる。

それをまた離れて追いかける。

これが鉄則だ!」と言うと親指と人差し指で輪を作りOKと無音口で伝えた。


洋平もOKとサインを出した。


1台目を流し 次の2人乗り足こぎボートにサッと乗り込み繋いであるロープとフックを外した。


進み始めるとすぐに暗いトンネルに入るとボートのライトが勝手に付き出した。


先に進ませたボートに変わりは無く前のボートにぶつかり止まった。


それを見て洋平の手を引きトンネル出口手前の鍾乳石に飛び付いた。


「ヴァンァン!・・・ヴァンァン!・・・」


地下空間の壁に反響し、ボートに向かって弾丸が放たれた発砲音が響き渡った!黒服の2人がトンネル内を覗き込みLEDの明るいライトが照らされた。


手が釣りそうになりながら鍾乳石に必死に捕まり、腕も足も腹筋も震え始めた。


横を見ると町野も顔を真っ赤にして体全体を震わせていた 。


「もうダメだ!落ちるよ!」と洋平が言うと震える左足を尻の下から押し上げて来た。


「頑張れ!」と小声が聞こえた気がした。

下から押された足が外され

「いいか!ゆっくりだ!ゆっくり水に入れ!」と足元を探りながら水に浸かって行く。


「洋平!俺が先に向こうへ行って、大丈夫なら合図するから泳いで来い!

返事が無ければ、引き返せ!分かったか。」


「分かったよ!」


「良く頑張ったな!」と言い残すと水に潜って行った。


真っ暗な物音もしない不気味さが1人になって恐怖と心細さで怯えていた。


公平はボートの裏側に回り込み,周辺の状況を伺った。


ボートの撃ち抜かれた壁からコンクリートにめり込んだ弾丸から拳銃の種類は想像が出来た。


「SIG p230」(SIGP230は、スイスのSIG SAUER(シグ・ザウエル)社が製造している自動拳銃。


日本の警察が正式採用している。


380ACP弾では無く32ACP弾仕様であり、装弾数は8+1発。


引き金と撃鉄をロックするマニュアルセーフティや、紛失盗難防止用のランヤードを装着する為のリングが追加されている。


このマニュアルセーフティは撃鉄が下りた状態でのみ作動し、手動でセーフティを解除するか、撃鉄を起こす事によって解除される。


自衛隊の9mm拳銃のようなライセンス生産ではなく、SIG社が製造、日本に輸出している。


基本はSP、機動捜査隊、銃器対策部隊に支給(貸与)されているようだが、制服警官や私服警官の一部にも支給されている。


公式発表における日本での採用年度は1995年頃とされてる。)か!


「あいつらはSPだ!早田警視総監の指示の元に動いている奴らとは違う。だとするとこれは…」


水から上がりトンネル内の洋平に向かい合図を送った。


水に潜りクロールでさっそうと泳ぎ、水から上がった。


「お前 !水泳の選手か?」と公平が言うと濡れた髪の毛の水を振り落としながら

「オリンピック候補だった!ジュニアだけどね!」と言うと


「凄いな!いつから泳いでる!」


「物心ついた時には当たり前にプールにいたよ!母さん!進藤の方の母さんから聞いた。産まれてしばらくは喘息で身体が弱かった僕を体力をつけさせる為、水泳を習わせたらしい。」


「そうだったのか!なかなかいい筋肉がついてるな!」と肩を握った。


「トモカを連れていた今の男達は敵の様に見えるが俺達の側の人間だ!

たがあの女、恵子に着く護衛役として姿を変えている。

だから、こちらも騙されたフリをするんだ。それが姉ちゃんを無事にここから救い出す方法なんだ!」


 1番前のボートのロープフックを外し、残る3台も同じくフックを外し流し出した。


エスカレーターで上へと向かい丸い空間を過ぎ5段の階段を上がり開ボタンを押し扉が開いた。


外を見て表に出ようとした時、目の前に黄色い少林寺拳法の服と黒いフェイスガードを付けた修行僧達が4人立ちはだかった。

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