第15話 要塞へ再び!15年で地下工場に‼

 広大な敷地に高い擁壁と川の様に広いお堀に囲まれ、まるでお城か脱獄を阻止する刑務所か!地元では「要塞」と呼ばれあまり近づく人はいない。


古くからこの前田家は武田信玄公に永く使えて来た武家だったと伝えられている。


15年程前から人の出入りが多くなり、春日神社に祀られている御神体と同様の神をこの地の大杉1本から削りだし神殿に奉納されている。


地元はもとより全国の宗教家達が近年集まり、その御子息やお弟子さん達が集まって来ている。


どんな修行がなされているのかは不思議と漏れて来ない。


お墓の数も増えて道を挟んだ奥の林は墓地となり整備されていた。


未だ健在な前田家主の前田喜兵衛も85歳を超えている筈だ! 

移動は頑丈そうな車が並んでいる。


その中で喜兵衛が移動に使う車よりガードが硬い車が1台ある。


ただ不思議なのは出入りする車の中でその車だけが窓は警護用の防弾ガラスに真っ黒のスモークが張られ何も見えず、正面からの撮影確認を試みた記者が言うには後部座席との間はマジックミラーになっている様で見えない様になっているらしい。


しばらくこの屋敷に出入りしている業者や企業の車とその担当者の名前を探り、侵入機会を伺った。


2017年5月8日


ゴールデンウイーク前の洗濯物のお届けに伺う予定をしていた。


宗教法人「碧神会(ヘキジンカイ)」として前田家の母屋側の御屋敷が新築され、寺院の社殿と本堂となった。


そこで働く修行僧の袈裟などと拳法の道場がある為、法着のクリーニングを依頼されているのが「白美社」である。


ここの担当者を大手の「ホワイトキープ」に部長待遇でヘッドハンティングさせ、その空いたポジションに潜り込んだ。


警察が裏からの圧力をかけたから直ぐに実施が出来た。


三芳も一丁前に警視正となれば色々と力が使える。


さすがキャリア組だ!

今回は「皆見信介35歳です。こっちが見習いの伊藤士郎18歳です。」


「いつもの人はどうしたの!」


「急な病気で緊急入院する事になってしまって!」


「それにしてもお二人の名前を何処かで聞いた事あると思ったら、もう一人で名前忘れたけど!てんぷくトリオだね!」


「えっ!」


「あっ!忘れて。そんな古い人たち私らみたいな年寄りしか知らないわよね!

ごめんなさい!」とお手伝いさんらしき気さくな女性が迎えてくれた。


「本当はギリギリ俺も知っていた。

家族4人で毎週日曜日の夜はNHKで減点パパ(減点ファミリー)を楽しみにしていた。」


三波伸介とゲスト(主に芸能人。文化人やスポーツ選手)の家族とのトークコーナー。


最初は子供が出て来て、三波が「お父さんの顔はどんな形ですか?」


「髪型は?」など顔の特徴について子供に質問する。


子供の答えに従って、大きなパネルに似顔絵を描く。


描き上がったところで「お父さん(お母さん、お祖父さん等)を呼んでください。」と子供を促す。


子供が「パパ〜。」 


「お父さ〜ん。」などと呼ぶとゲストが登場し、ここではじめてゲストが誰なのかがわかる。


三波はゲストに対し「○○君がお父さんにやめてほしいと思っていることは何でしょう?」などとクイズを出し、正解すると似顔絵の周りに○、間違えると×の札を付ける。


正解を答えられないと三波に「違います。」と冷たく言い放たれ面食らったり、子供の発言に三波やゲストが驚いたり爆笑したりするなど、三波の巧みな問いかけでゲストの意外な一面を見られる事が魅力であった。


コーナーの最後に、ゲストについて子供が書いた作文を子供自らが読み上げていた。


ゲストや三波が思わず涙を流す事も多く、最後には三波が似顔絵の上に大きな○の札を付けて丸く収めた。


三波は、特に感動したときには「もう全部(○を)付けちゃう。

あるだけ付けちゃう。」などと言いながら、大きな○を付けた後にも残っている○の札をパネルに全部貼り付ける事もあった。


もともと登場するゲストは父親のみであったが、ある日「私にはお父さんがいないので減点パパには出られない。」との投書があったのを機に「減点ファミリー」に改題し、以後は母親や祖父母なども登場する様になった。


また、当初は三波の絵の巧みさに驚かれるなど反響も大きかった。


そんな心温まるテレビ番組が多く作られていた良い時代だった。


「町野さん!俺と姉ーちゃんは本当の父親の顔を知らない!

姉ーちゃん1才、俺は産まれて直ぐに今の両親に養子として育てられた。

3年前、姉ーちゃんの高校受験の時に市役所で戸籍を調べた時に始めて分かった。  

それからだ!姉ーちゃんが夜に出掛けたり、帰って来ない様になったのは!

母さんも父さんもいつも心配していた。」 


「そうか!…その事とお姉ーちゃんが行方不明になった事との関係はあるのか?」


「その後、養女(養子)になった時期にあった事故や事件について調べていたらしい。

そこから関連性がある情報を得る為、大人の人の話を聞く事が出来る池袋のキャバクラやガールズBARで働いていたらしい。

俺もその事を手掛かりに池袋にたどり着き、ある情報がキッカケであの辺を中心に聞き込んでたんだよ。」


「分かった!その話はまた後で詳しく聞かせろ!」


奥から先程の女性が出てこられて、

「では、裏の社務所奥に裏口がありますので!そこまで車を移動してから運んで下さい。」


若い修行僧の方2人が手伝ってくれた。


「ミナミシンスケさん!とイトウシロウさん!後はよろしく!」と言いながらクスッと笑った。


車を移動させクリーニングが終わった衣類を所定の場所に並べて、そこで何かを仕込んだ様だ!洗濯物が入った布製の大きな袋が8つ。


移動に使う台車を返す時にも何かを忍ばせた様だ。 


「町野さん!」


「皆見だ!」


「すいません!ここに居る人の洗濯物にしては多過ぎますよね!」


「綺麗好きなんでしょ!皆さん!それより伊藤くん!…キミカ?・・・くれんぼ見つかった?」


「キミカ?・・・くれんぼみつかった?

…あぁ!まだ見つからない!」


お手伝いの女性は節子さんと言うらしい。


修行僧の2人が呼んでいたので間違いない!


「あの〜!お名前・・・節子さんでよろしいんですか?」


「叔母ちゃんでも節子さんでもお手伝いさんでも、どうぞ!シンスケさんとシロウさん!」


「それでは早速!あまり引継ぎが無く前任者が入院してしまいましたので!

この量だと週2回の方が良いかと思います。

ちなみに中を見て居ないのですが何人様分の衣類なのでしょうか?」


「ご住職様含め僧侶の方と修行僧のを含め12名!守衛さんが5名!雑務補助の方が10名!位ですかね!」 


「後は別に前田家分はこの建物と別の奥にある御屋敷へまわって下さい 。

私も行きますから!」


「こちらには、旦那様とその娘さんご夫婦とそのまたお嬢様のご夫婦がいらして、生活は別々にされていますが秘書の方々3名と運転手の方が4名いらっしゃいます。」


「こちらも週1回3袋持って行かれてましたよ!」 


「では5名様分という訳ですね!」


「本来は6人なんですよ。」


「どうしてですか?」


「親戚の恵子さんは古くから茜様について秘書をしていますがここに住んでいらっしゃる。

孫娘の香織様は娘と息子が東京の学校に行かれている為、暫く近くに住まわれ身のお世話をしているらしいですよ。」


「節子さん!今日は色々と教えて頂きありがとうございました。」


「いいえー!大丈夫よ!」


「この荷物を合わせて11袋、お預り致しました。こちら預かり票です。」


「さっきの週2回にするプランは値段が変わるの!」


「値段は変わりません!」


「だったら秘書の澤田さんに断る必要ないから!次からそうしてくれる!」


「分かりました。 

毎週月曜日と木曜日に伺います。では失礼します。」


正面の門も自動開場になっていた。


警備室も大きくなり2階建に変わっていた。


一旦車を走らせ途中のコンビニの駐車場に車を停め、クリーニング工場へ向かうのは本当に社員登録したヒロシとジャイにバトンタッチした。


車を乗り換え節子さんへ「携帯電話を置いて来てしまった。」と連絡をしてから碧神会(ヘキシンカイ)前田家の御屋敷へ戻った。


門の前のインターフォンで事情を伝えると「節子さんから聞いています。」

直ぐに門が開いて車で中に入って行った。


何とか再度潜り込む事が出来たが異常な程のセキュリティに守られ、赤外線カメラで調べると外見は木造の御屋敷の様だが実際は鉄筋コンクリートの要塞だ。


しかも地下へ繋がっている。


「多分クリーニングが終わった物を収めた棚に一緒に置いて来てしまったのだと思います。」と伝え裏口からまた上がらせてもらった。


そこから見渡せる範囲で室内は和風の部屋に上手く仕上げている。


各部屋を仕切る壁の厚みや窓周りを見ると上手くゴマかしてはいるが50cmはある壁の厚みがある。


忍ばせていたガラケイを見つけ出すと

「すいませんでした!節子さん!見つかりました。」


「良かったわね!」


「もう一つ宜しいですか!」


「どうしたのよ!シンスケさん?」


「漏れそうなんです!」


「早くしなさい!ここを上がって奥の右側にあるから!」


「すいませぇ〜ん!」と言いながらお尻を押さえて途中止まり我慢しながら!トイレへ向かった。 


「皆見さん!昨日からお腹の調子が悪いって言ってました。」 


「シロウくん!

まだ御屋敷の方の掃除が途中だから戻るけど!

シンスケさん戻ったら勝手に守衛室に行って帰って!と言っといて!」


「ハイ、分かりました。」と戻って行った。


敷地内の有りとあらゆる場所に設置された防犯カメラや庭師や守衛や大工から医者、森は前のままだが庭側にある池にせり出す様に周り廊下があり、その最終部から池の中心にある小島へと渡る橋がかけられている。 


頭にタオルでほっかむりし、修行僧の袈裟に着替えて先程の赤外線カメラで調べられた地下室へ向かった。


途中ですれ違う雑務補助と呼ばれる女性達が地下で作業を行っているのは間違いない。


地下室へ下がると内側に部屋がある様だが暑い壁に囲まれ物音ひとつしない。


左周りに歩いたが結局元の場所まで来てしまった。


上に残して来たヨウヘイに携帯電話で連絡をしたが電波が届かない!廊下の外側にあるトイレやその他の設備関係の部屋のドアを開けたが全くその場所へ続くドアがない。 


元の場所へ戻ろうと歩いていると奥の方から先程階段ですれ違った女性達が角を曲がって現れた。


次の瞬間左側へ「パッ!」と消えた。


その辺りに立ち止まり壁を押しても動かない!


叩いてみるとコンクリートとは別の音がする。 


天井を見るとセンサーの様な丸い突起が反対方向を向いていた。


階段が見える部分まで進みその場所まで戻って見た。


何も起こらない!

誰が出てくるまで待つかとも思ったがヨウヘイを1人待たせている事が気にかかり階段途中まで上がって来たが顔を出し覗き込むヨウヘイが見えた。


声を出さずに「こっちへ来い!」と手を上げて手招きした。


すると手の甲に一瞬レーザーポインターの赤い光が当たった様に見えた。


「しぃー!」と口の前に人差し指1本立てて右回りで廊下を進んだ。


最後のセンサーを通過した時点で右の壁が「すうっ!」と開いた。 


キョロキョロしているヨウヘイの手を引っ張り中へ入った !

すると「パッ!」と壁は閉まった。


ゆっくりとなだらかに下がると自動スロープと登りのスロープがあった。


人が近付かないと動かないセンサーがここにもある様だ!この中に入って直ぐに青臭い草の臭いがした。


あとは機械音が聞こえていた。


やはりあのレンゲツツジと薬草で脱法ハーブを製造する工場だった。


ただ、もう一つ透明なアクリルの壁に覆われた壁の中で大量に積まれている草に見覚えがあった。


あの森の中にあった。


コカの葉からとるアルカロイド。


無色の結晶。局所麻酔薬として使用。


連用すると中毒を起こすので、麻薬に指定されている・・。コカイン 【cocaine】レンゲツツジは同様にグラヤノトキシン(ロドトキシン)類を含み、欧米では花の蜜を吸った児童や馬、羊などの家畜の中毒が報告されていて、狂犬病の解毒作用があるとされる花ビラから抽出したエキスが研究されていた。


その搾りカスには「覚醒作用」がある麻薬の成分が含まれている。


花言葉「あふれる向上心。情熱。」これらが生産されていた。


これら全てが指定暴力団に流れ組織の資金源となり、もう一方で政治家や官僚達を含め国家絡みの陰謀が行われている!


その資金は2001年に計画が発表された開発誘致にも回されている筈だ!東京帝都大学生物学部が文科省と建設省の認可がおり、当時の与党内閣総理大臣の圧力がかかっていた事もこれから問題が明らかにされるであろう。


2015年から施設建設着工が予定されていた開発も今年起きている複数の政治家の介入・癒着問題で野党からの追求で今まさに世間を騒がせている問題の元になったひとつであった。 


だが、他の学校施設同様に建設工事は進められていた。


このまま進めば2020年には開校となる計画だ!


このプロジェクトには国と県から莫大な補助金、助成金、援助金が出される。


(愛媛県の獣医学部お友達認可の補助金96億円と37億円の土地もプレゼントとも言われる税金の投入!そこまではいかないが!)


1企業としては過去には無かった前田興業が土地の開発から大学の建設まで全てを請け負いお金の流れも同族企業である甲信銀行が主受金融機関となった。


この30年近く平成になりバブルのツケを埋める為に行われて来た闇の裏事業や裏政策が、突然とめども無く降り続ける積乱雲から発生するゲリラ豪雨の様に人々を呑み込み、本当の悪事を善人ズラした一部の政治家や国家権力を牛耳れる上層部の役人達が悪役達に指示を出し国民や若者たちを苦しめている。


初めから予想はしていた事態だったがこの映像や写真はSDカードに保存した。


警察やこの事件を俺に探らせている公安部にも渡せない!


マスコミもNHKや民放テレビ局も政治家絡みは腰が引けて暫くしてうやむやにしてしまう!海外メディアとインターネット!そしてSNSからの情報を全世界に発信させるキーマンを準備していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る