第14話 幼き頃の友!消されていた記憶‼

 ここが何に使われているかは、察しがついた。

記憶操作!マインドコントロールはココで行われていたのだ!誰かの手によって!

この時点では何の手掛かりもなかった。


この中の写真も研究室同様にカメラで撮影した。


この部屋を後にしてエレベーターフロアに出た時、甘い香りがした様に思えた。


何かがおかしい!人の気配と温度の違いを感じた。それとエレベーターが下の【M】に止まっている。


遂に対決の時が来た!「K」との初対面になるのだろうか!下へ向かう【M】のボタンを押した。


扉が開いた瞬間、銃で撃たれたりしたらそこで終わりになってしまう。


扉の左外側に体を隠しエレベーターが上がって来るのをまった。


「ピンポン!」と音と共に扉は開いた。


何か動きが無いか静止して30秒。


そしてエレベーター前にライターを転がした。何も反応が無く扉が閉まった。


ライターを拾い、再び【M】のボタンを押した。


扉が開きだすと大きな影が飛び掛かって来た。


とっさに避けながら片腕を掴み一本背負いで投げていた。


「うぅぅー!」と唸りながら立ち上がりこちらを向いた。


「斎藤さん!」だが正気を失っているのは明らかだった。


真っ赤に目を光らせ!この寒さの中で裸足で息があらい!次の瞬間、凄い勢いで襲いかかって来た。


掴み掛かって来た手をクッションに飛び上がり後頭部を両脚で馬蹴りをいれた。


その勢いでエレベーターの閉じた扉に頭を打ち付けた。


そのまま背中に乗り左腕を首に回し頸動脈を閉め落とした。 


「斎藤さん!ゴメンな!誰かにコントロールされているんだろうが!」


腕を後ろに回してポケットからビニールテープを取り出し腕と脚を縛った。 


「今はここが安心だ!だからじっと眠っていてくれ!」と言うとエレベーターに1人乗った。


天井にある点検口を外し上に登り、身を潜めた。


仕掛けておいたジッポのライターを鏡がわりにして扉が開いた先に誰かが映るかを見ていた。


「ピンポン!」と音が鳴り扉が開いた。


今の音で向こうのドアの先にいる人間にも分かった筈だ。


その頃、また【P】階の実験準備室の電話が何回も鳴っては切れ、複数回鳴り続けていた。


「町野先輩!何で出ないの!

「K」が誰だか分かったのに!

神藤と若菜の所に車内にある電話を取り話している奴こそが・・・だ!早くしないと。」


2人とも車を降りた。


しかも後ろにあった黒い車からも4人が降りて来た。


「中にいるKと合流されたら、先輩がまた不利になる!

私は上から、直接の介入はまだ見遅れと指示されている。

がこのままでは・・・!」


池側の奥から人影がまた1人!

何人仲間がいるんだ!違う!

正面から現れた人影は今井さんだ!


「ここから先はしばらく誰一人として進入禁止となります。神藤先生!」


「どなたですか!」


「この家の方から最近、夜な夜な不法侵入者が現れると通報がありまして。

大晦日となると家を開ける人が多いので空巣も増えるんですよ!

みなさんこの家の方ですか?」


疑わしい顔で敷地の中をジロジロと眺めてめながら!


「当たり前だろ!バカを言うな!

私はこの家の者だ!空巣の訳がない!」


「では、隣のご婦人と後ろの、とても先生のお仲間とは思えない4人の方々は?

ご主人様も先生の奥様も娘の香織さん達もみんな、春日神社へ向かいました。」


「警察の方には関係ない事だ!どきたまえ!もう我々が家に戻ったのだから見回りは解除して貰って結構です。お帰り下さい!」


「分かりました。

私はあなたの依頼でここへ来たのではありません。

他にも、家の中に待機させていますので神社事務所へ確認をとります。

先生と若い女性と柄の悪そうなお仲間4人!その中に西新宿の浜田物産!

田嶋竜司さんもご一緒されている。

今回のこの地元に東京帝都大学誘致に対して最も貢献し、前田興業が受注した工事の下請けも浜田物産が全てを請け負った。

そうですよね!

指定暴力団浜田会直径遠藤組若頭!

田嶋竜司さん!」


「貴様、何者なんだ!ここがどこだか分かっているのか?」


「この地で殺人が起ころうが全ては前田家の思い通りとおっしゃりたいのですか!」


「三芳〜!電話しろ !あとは、警視庁本部へだ!」


「それでは、どうぞ!」


「刑事さん!分かりました。

私達も事件になる様な事は考えていませんので、ここは帰ります。

いいですね!田嶋さん!」


「しょうがない!」


「今日は誰もいないので明日盛大に新年会が開かれるそうですから明日またお越し下さい。

では皆様良いお年をお迎え下さい。

お疲れ様でした。」と誰一人、怪我人も出さずに今井が侵入を阻止した。


「ふぅー!」と一息し「三芳!お疲れ!」と言うと姿を消した。


私も「お疲れ様でした。」と一礼し頭を下げた。


その頃、上でそんな事が起きてるとも知らずに、エレベーターの天井から降りジッポを拾うとホールから先の廊下へ向けて床に薄暗いブルーの明かりが点線通りに進み徐々に温度が下がって来た。


すっかり忘れていた。


エレベーターに戻り右奥側を踏んだ!


点線の明かりはエレベーター側から順番に明るく光だし、道を輝かせ右側には【P】階と同じクラゲが大きな水槽の中を泳いでいる。


下の方には岩にイソギンチャクの様な物が沢山うごめいている。


これがポリプなのか?

若干だが水の色がピンクがかっている。


左側には右側より更に大きなポリプがうごめきそこから離れた大きなクラゲが天井側に張り付き俺を見ている様に思えた。


両壁や天井の様子も分かって来た。


ゆっくりと左に厚いアクリル板が動き出した。


またあの生温かい空気と共に生臭い空気の匂いがして来た。


中へ入って行くと正面の一番大きなプールの薄いピンクの光と淡いブルーの光は出ていない。


近付いてみると水中である物を包み込む繭の様に2色の光線は渦を巻いている。


そこには上部の機械から放たれる何かが水の中へ泡の様な刺激を与えている。


左奥でも小型の繭状の光が何かを包んでいる。


そして炭酸水の中でゆっくりと回っている 。


コントロールルーム(操縦室)に人影が見えた!


警戒しながら近付いてみると椅子に縛り付けられた人が目隠しされ!口にはテープを張られ腕と足はヒモで縛られていた。


新たな犠牲者を一人助ける事が出来た。


その時コントロールルームの外を走り去る人影があった。


ドアを出て後を追ったが間一髪でエレベーターの扉が閉められ上へと逃げられてしまった。


ここまで追っかけて来た事で中に閉じ込められずに済んだ!今のが「K」だったのであろう。


エレベーターを【M】階へ呼び扉が開き中を調べ、念の為天井も調べた。


誰もいない事を確認した上で開閉のスイッチを踏んだ。


これで閉じ込められる事は無くなった。


コントロールルームへ戻り口を塞いだテープを剥がし、目隠しをとった。


「助かったよ!誰だか知らないが本当にありがとう!命の恩人だよ!」


「いいえ!どういたしまして!今、腕と足もロープを解き…!ますからね!」


改めてお互いの顔を見て2人同時に「お前!・・・」


「伸一か?」


「公平だよな!」


「どうしたんだ!公平!」


「お前こそ何で捕まってんだよ!」


「俺は神藤先生に呼ばれて久しぶりに故郷に戻って来たら、2人組の男に捕まって昨晩からここに連れて来られた。」


「神藤先生とは会えたのか?」


「いや、まだ会えていない!」


「お前こそ何でここにいる!」


「それは野暮用だ!」


「何だよ!野暮用って!そうだ!お前!姉貴と付き合ってたんだってな!」


「昔の話だ!・・・」


「あっちはそうでもないみたいだけどな!」


「それより伸一!この施設何だと思う。」


一瞬背中に「チクッ!」とする痛みを感じた。


「お前は余計な事は知らない方がいいんだよ!公平!」体が痺れて来た。


「やっぱり!お前か!加藤伸一!Kか!」


「恭子が言ってた!」


「あの子は変わってないよ!相変わらず研究と新たに心理学を学びにわざわざアメリカへ・・。」


「心理学!アメリカ!マインドコントロール!記憶操作!科警研からの電話!恭子の話!」 


「俺はバカだ!

最後の最後にお人好しでお前を信用した。

あの腕を縛ったロープの結び方!

緩んでいたのを腕を広げ血流を悪くする事でむくませ縛られた状態を作り出す事くらい、お前には出来た筈だ。

一瞬は疑った! 

だが油断が仇になった。何で・・」


意識が一旦戻った時には【P】階の大きな椅子に座らせられヘルメットを被せられていた。 


「公平!悪く思うな!

お前がまさか香織の前に現れるとは!僕も油断していた。

こんな事になるのなら香織の記憶も操作しておくべきだった。

僕の方がずっと長い間香織を見守り、愛し続け、命を救った。

なのにどうして香織も姉貴も ・・・。」と記憶を操作され、永らく沖縄のさとうきび農家で生活をしていた。


 今井が見つけ出してくれるまで2年間、自分を鈴木一郎と思い込みそこで生活していたらしい。


その後はあの事件に関わる全ての記録が封印された。


俺の記憶もあのミッションに着く前と沖縄で発見された後の記憶を縫い付けられ最近まで普通の幸せな生活をして来た。


恭子も俺に隠して2人の子供達を見守ってくれていたみたいだ!


その中であの村で起きている秘密を知ってしまい、事故に巻き込まれ帰らぬ人となってしまった。


俺は大切な人を誰一人守ってやる事が出来ていない!


俺がこの15年間、記憶を切り取られ忘れていたあの村で行われている犯罪と事件!


このままにしておく訳にはいかない!


もしあの時、KとGを捕獲し、地下施設を破壊出来ていれば多くの若者たちを巻き込む事無く、それに悲しむ親達の気持ちや無念さから命を落とした人たちがいた事の責任を感じている。


「遂にパンドラの箱を開ける時が来た!」

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