第12話 西湖浸水!謎の生物と地下実験室‼

地下通路やボート移動をする為の水の流れ込みが池の水とこの西湖を繋ぐ水路があると考えた。


運転手の島田さんに池の水の排水浄化剤と説明した赤の食紅を14時30分に指定した池の排水口から流して欲しいと伝えておいた。


 こんな地下の鍾乳洞がこの富士火山帯地域には数多く存在している。


イメージは直線ではない限り少しの遅れはある。


もう一つ島田さんが周りを気にしながら流し込みが予定より時間が掛かっている。


こんな所だろう。


「島田さんには何かあったら俺に脅されたと言う事にすればいい」と伝えた。


吊り橋の先端まで周りの水面を伺いながら歩いてすすんだ。


時計をみると15時40分を過ぎていた。


水面を見ているとこの吊り橋の下から微かな水の流れを感じる。


少し水の色が曇って来た様に見えた。


「ぶぁっ!」と一瞬にして周辺が赤く染まった。 


「当たりだ!」西湖には富士の樹海がろ過した水があちこちの水脈を通り流れ出している。


それを一部利用しあの地下施設で何かが行われている。


現在の水温は10度を切る位だろう!

用意してあったウエットスーツとゴーグル、ライトは防水用を用意させた。


ボンベは無いから素潜り出来る時間も限られている。


準備をしている内に真っ赤に染まった水は周りに散ってなくなっていた。


外気温度が5度位なので、水の中の方が温かく感じた。


一気に潜ったが冬でも水草や藻の類いがぎっしりと生えて視界が悪い。


吊り橋を支える支柱沿いに岸の方へ進んだ。


途中息をする為に何度か水面に上がった。


途中でボートが無い事に疑問を感じた。


だが釣りをする方やジェットスキーなどをする方の為に作られた物と勝手に解釈をした。


岸辺まで3m付近まで来ると足がそこについた。


吊り橋の下にはコンクリートの支柱が最後の部分まで長いトンネルの様に奥まで伸びている。


水の流れ出しはここが水源で水圧が強い為中には入れない。


但し、人一人が出て来るには十分な大きさであった。


想像した通りの状況が確認する事が出来た。水中を岸へ歩いて向かう間に体に吸い付く様に何かが集まって来ていた。


みるみる内に桜色にも見えた丸い物体に囲まれていた。


一体を手ですくい上げてみると10cm位のクラゲだった。


この水温で、尚且つ淡水で生息するクラゲがいるのか?と不思議に思いつつ今はここから出るのが先決と前に出た時「チクッ!」とウエットスーツを突き破り針か何かを突き刺された。


それは一箇所ではなく次々と刺し始めた。


耐え切れず吊り橋をよじ登り吸い付いたままのクラゲを一匹づつ剥がしとっていった。


その中の一匹を捕獲しケースに閉じ込めた。


その時水面に2m近くはあった大きな鯉かウナギの様に見えた物が赤い光った目で俺を見た様に思えた。


ウエットスーツを脱ぐと蜂にでも刺されたかの様な痛みがあったが真っ赤に刺された穴が2つ並んでいるのが分かった。


あれだけ大量にいたクラゲが何処に行ったのか姿を消してしまった。


まるでアマゾンのピラニアが一瞬にして獲物に喰らい付く様な光景だった。


日が沈みかけている湖畔道をCBRが駆け抜けて行く。


バイクを走らせながら何かが引っ掛っていた。


「赤い目!」豊子婆さんの話だ!


「こんくらいでやめときんさい!

真っ赤な目をした西湖の龍神様に喰われっちまうぞ!」


「龍神様って、婆ちゃん何の事だ!」


「ただの伝説!昔話じゃよ!」と言うのが現実にそれに近い存在を目にしてしまった。


こんな話 、西湖の歴史研究者や郷土博物館館長ですら聞いた事が無いと言っていた。


だとするとこの話も記憶のすり替え!

記憶操作!

マインドコントロールされている。


しかもこの村の人達だけが!

怪しいのは神藤とKとGの3人!


 日が沈み静寂の中に、たたずみ波紋ひとつたたない西湖に何が居るのだろうか!

はたして本物の伝説の物が生息しているのか!


2001年12月31日20時


 春日神社の周辺には村民以外の周辺の村や甲府市内。


そこへ多くの人が集りあちこちで焚き木が燃えバチバチという音を立てている。


敷地内では大型のテントがいくつも張られテーブルと椅子が並べられ、お酒や漬け物や昨日前田家の厨房で作られていた豚汁などが振舞われる準備がされている。


駐車場にまわったがまだ香織やお母様やお爺様などは到着していない様だった。


事前に墓地側の警戒状態を確認する為に正面にまわり、手前でエンジンをOFFにして静動で通り過ぎた。


外灯に照らされた駐車場には帰省している車が20台近く停められていた 。


その中に神藤のカルマンギアは無かった。


特に警戒する人影や様子は無く事務所の電気も消えている。


バイクに戻り前田家の正門側へ回った。


丁度、門が開き黒のハイヤーが2台出発するところだった。


1台目は助手席に秘書の澤田が乗っていた。


後部座席はお爺様だろう。


2台目は助手席には恵子さんが乗りスモークガラスで確認出来ないが後部座席にはトモカを抱えた香織とお母様が乗っている筈だ。


いつも通り門は守衛室の名前を忘れたが顔は80歳はいっている小柄の口ひげとお揃いの真っ白なあご髭をチョコン逆三角形に生やしているお爺さんが開け閉めしている。


小屋の中で椅子に座りイヤホンをしてラジオでも聞いているのか、ここに来て2年半話した事も無い。


目が縦にも横にも小さいから寝ているのか!

起きているのか!笑っているのか!もよく分からない。


ただこの敷地内のあちらこちらで見かけ池の落ち葉を集めたり、庭の枝の剪定をしたり、厨房の外で段ボールを畳んだり、自転車の修理や油を指したり、雨樋の詰まりや窓磨き迄やっている。


きっと働き者なのだろう!そうでなければ同じ人が何人もいるのかと思う程だった。


そう言えば香織からあの人、声が出ないか喋れないかどちらかだと聞いた事を思い出した。


 バイクのエンジンを切り、裏側のドアを開け中に入り裏側の厨房の先にある離れ倉庫の裏側にバイクを隠した。


正面側へ警戒しながら静かに歩き、俺たちが住んでいる家のドアをなるべく音を立てずに開け、2階の叔父さんの部屋へ向かった。 


あのテープは他の誰かに見せる訳にはいかない!テープはデッキから抜き取り研究様のテープの棚にNO.89と書いてそこに並べた。


そして本棚を閉じてスピーカーとスクリーンも元に戻し、そのスイッチが隠されていた「虫食い10年タイマー」を封印する為に同じ寸法の材木にキクイムシ駆除の薬を染み込ませた物を接着剤で固定し押し込んだ。


ただこれだけの為に戻って来た。


香織とトモカ宛の書置きの手紙を書いておこうと思ったが、余計な心配をさせてしまうだけで 、もし俺が無事に帰れなかった時には誰かが記憶の埋め変えをするに違いない!その方が幸せに暮らせるのだから!と一瞬、組織側のマインドコントロールを肯定的に受け止めてしまいそうになっていた。


2人には何も残さず香織が毎日付けているトモカの育児日誌の来年用に1枚、3人で撮った夏休みドライブで行った清里の写真。


その裏に「2001年8月12日パパとママとトモカ3人で清里へ!」と書き日誌とカバーの間に差し込んだ。


そして2002年12月31日のページに「カバーを外して見て!」と書き残した。こ

れで全てが整った。   

    

2001年12月31日 22時55分


 表の庭側は警戒感が高まっている気がした為、裏側を通り正門から池へ向かう四方に防犯カメラが8台設置されているエリアの反対側からあの橋を渡り、池の真ん中の小島にある赤い漆で塗られた祠ホコラの裏側にある扉を開いた。


案の定、来た事のある空間があり、5段の階段を下がると丸いホールから続くエスカレーターで下へと向かった。


そこにはスペースがあり、その先に開・閉のボタンがある。


迷わず開ボタンを押した。


「ムワッ!」湿気と生臭い水の匂いがした。川の流れる音がした。


目の前に流れる川と2人乗り足こぎボートが2台。


そのボートにサッと乗り込みロープとフックを外し、早い流れで進んで行った。


真っ暗なトンネルをくぐり遠くに明かりが見えて来た。


前回の時も感じた事だか池側からの戻りの方が時間が倍ぐらいかかっている気がする。


降りて直ぐのエスカレーターに乗り上がって階段を駆け上がり出口前の電動シャッターの上げるボタンを押して外に出た。


ここまでは予定通りに進んでいた。


斎藤さんから借りた裏口のキーのコピーが合わなかったらここで終わりとなる。


鍵を差し込んだが回らない?

しまった!と次の手を考えていた。


香織達がわざわざこんなややこしいルートを使う筈が無いと思い地下エレベーター室の鍵の掛かったドアが1つあった事を思い出した。


裏口から右手に廊下を進み一番奥の立入禁止の地下ピット室。


浄化施設室を過ぎると左側に3m程建物が凹み地下へ下る階段がありそこにシルバーの鉄製のドアがあった。


このドアだろう!

香りの黄色いポーチに入っていたブランド品のキーケースには几帳面に真新しくテープで貼り付けてあった。


「外階ドア」「ポリプ」「メデューサ」「M秘」「地下通」と5本の鍵があった。


順番通りに並べられた鍵でドアを開けた。


壁のスイッチで明かりを付けそこから更に5段下がり中に入ると物置ふうに棚が並べてあり、例のごとく不自然に壁にカレンダーがぶら下がっていた。


裏側にはシャッターのキーBOXがあった。


多分ダミーだろう!

床をよく見ると正面の左側にある棚の下に紙くずが挟まっていた。


床が動く様に細工されているらしい。


何処かに留め金かフック見たいな物がある筈!と棚の荷物をずらすと3段目の1番右側に縦に30cmほどの薄い金物が差し込まれていた。


念の為に2段目と1段目も見てみた 。


2段目には同様の物があったが1段目は面倒になったのであろう、縦に金物の幅と同様の3cm程の丸い穴が開いていた。


上の2つを抜き取り、棚を左へ押すと隠し扉が出て来た。


内側からドアノブのロックを外し、ドアが開いた。


奥にはエレベーターがありあのブルーの明かりが薄っすらと照らされていた。


目が暗さに慣れエレベーター前まで来て下矢印を押しエレベーターの中へ入る。


深く濃いブルーの色の中、香織の鍵順に合わせ【P】の階を選択した。


ドアが開き鉄の重そうなドアは後にして「研究室」のシルバーのドアに鍵を差し込んだ。


ゆっくりとドアを開け、中に誰もいないかを確認しながら室内に入った。


部屋に入ると同時に電気が付き、先ほどまでの薄暗さから極端な明るさで一瞬目の前が真っ白になった。


研究室の入口には手術前の洗浄機やエアーホールを通り抜けてからまだ先にある施設へと向かう道があった。


その横にも機密性が高そうなドアの部屋があり隣にはカーテンの掛かった部分があった。


他には、念の為に殺菌ルームに入ってみた。


下げてある白いツナギとブーツに履き替え手袋とフェイスガード付きのハードキャップをかぶる見本写真がある。


一旦、研究室のデスクに戻り受話器の留守番機能の点滅があった。


再生ボタンを押すと

「4件の伝言をお預かりしています。」


「1件目12月31日20時58分 ピーッ!風間だ!あんたに頼まれた高野って言う元デカ(刑事)のところへうちの少し腕の立つ2人をまわしたんだが大分傷み付けられてしょっ引かれたらしい。」

「裏にまだ警察が芋引いてるんじゃねぇーか!初めは若い奴らはめて、あのハーブ吸わせて、その後に薬をばら撒いていい凌ぎになったが、そろそろ潮時じゃねぇーか!」

「もし本当にあいつを処分するなら、それなりの金がいる!考えて連絡くれ!」


「やっぱり、ここが今回の潜入捜査の目的!キーとなる場所だという事はハッキリと分かった。」


「2件目12月31日22時47分 ピーッ!先生ぇー!もうこれ以上耐えられなくなって来た!」

「ハーブの成分だけでは抑えが効かなくなって来た。」

「西湖に向かう!このままだと秋が…!私自身が秋を傷付けてしまうぅぅぅー!・・・たすけてぇー!うぅぅぅー!」


「若菜さんだ!」


「3件目12月31日22時59分ピーッ!」

「・・・・・・・・・」


「4件目12月31日23時5分ピーッ!」

「・・・・・・・・・」


もう一度巻戻して聞いた。


「2件目12月31日22時47分 ピーッ!パンッ!先生ぇー!パンッ!もうこれ以上耐えられなくなって来た!」

「ハーブの成分だけでは抑えが効かなくなって来た。パンッ!」

「西湖に向かう!このままだと秋が・・・!私自身が秋を傷付けてしまうぅぅぅー!・・・たすけてぇー!うぅぅぅー! 」


微かに後ろで花火が上がる音?

人が集まっているところ?

カウントダウンの花火!

あの船着場に近いところに某大学の合宿施設があった。


毎年部活動かサークルか分からないが大晦日に花火大会を行い、酒を飲みあさり、何年か前には西湖に飛び込み警察沙汰になった記憶がある。


あの近くだ!受話器を取りリダイヤルを押した。


「斎藤さん!ダメだ!何も分からない!今井!何処にいる!甲府署か!農協事務所か!甲府新聞か!」


その時1本電話が鳴った。


「ピピピピ・ピピピピ・」受話器をとった。しばらく黙っていると


「・・・三芳です。先輩ですか?」


「フゥー!お前か!よかった!今井と一緒か?」


「いいえ!それより何回も電話したんですよ!町野さんがあの祠から地下へ向かってから!」


「見てたのか!何処からだ!」


「前田さん、前田喜兵衛の秘書の部屋!そこから電話してる。」


「お前何処から入った!」


「…話を戻すと何回も電話したのは先輩を見張ってるのは私達だけではなく「G」よ!


「GOD」!


「神藤先生」!


「そうか!そんな単純な事が!そうだ!間違いない!」


「いいですか!聞いてますか!」


「聞いてる!」


「あの分かりやすい古びた車で走ってれば誰でも気付くし!

隣に若い女性を乗せて!

左利きのサウスポー!昔の歌がありましたね!」


「それでどうしたんだ!」


「私分かっちゃうんです。

人の口元を見てると何て言っているか!

あの2人の話を読み取っていたら!」


「お前、読唇術使えるのか?スパイ向きだ!」


「東京大学人文社会系研究科心理学研究室で学びました。専門は認知心理学、認知神経科学ですから。」


「高野をお引き出せるか!若菜!」


「先生!もうすぐ出てくるわ!

だって子供をオトリにしたから!

自分の娘の事を思えば湖まで駆けつける筈!」


「だから、今出て行けば罠にはまるだけ!

タロットが占った通り逆向きの「太陽」!

危険を察知し決断を急がずに物事を中断する勇気を持つ事!!

そして「死神」のカードを持つ者がいます 。

死神が行く先々で人々の魂を狩り取る!

死神が甲冑を身にまとい馬に乗っている。

あの2人ではない!

もっと特別な力を持つ邪悪な物になってしまった物が何処かにいます。

気を付けて下さい。町野さん !」


「分かった!忠告は素直に聞いておく!

お前も気を付けろよ!」


「私だって自分の事ぐらい自分で守れます。

心配はいりません。」


「さすが!強いな!・・・じゃあ!またな!」とかわした言葉が最後となった。


…三芳の言う通りだとするとは!

「GOD」!は「神藤」だ! 

だとすると「K」とは誰の事だ!「K」が「死神」なのか!

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