第11話 そこに待つ死神!マインドコントロール‼

 「ハイッ!先輩!10月20日付けでこのミッションを引継ぎました三芳葵警部補23歳です。あとは先輩の監視役も私の任務です。」


「お前3歳もサバよんで潜入してるのか?」


「ハイッ!童顔で若く見られるので!」

小さな箱を取り出し


「この箱の中にプラスティック爆弾と起爆材が入っています。

必要な時がくる筈だと今井先輩からの贈り物です。」


「それと黙っておこうとも思ったんですが先輩には逆境を逆さに変える力があると信じてもう一つ伝えます。」


「おい!待てよ!」


顔の前に手を広げて「最後まで聞いて下さい!」


「「死神」のタロットカードを持つ者がそこにはいます。」


「死神!・・・」


再び顔の前で掌を広げ「死神が行く先々で人々の魂を狩り取る「死の行軍」の様子が描かれていて鎌や軍旗を手にしている。

また、死神が甲冑を身にまとい馬に乗っているヨハネ黙示録の「第四の騎士」。

苦境や終末、解体を意味し物事を辞める事や、根本的な部分から考え直す必要性を表すカード。」


「またかよ!勘弁してくれよ!」


「黙って!最後まで聞いて!」


町野は諦めた顔をして頷いた。


「~終わる事を恐れず、最初から全てを考え直す時〜崩壊・解体・損失・終末・結末・急変・変化・終止符・仕切りなおし・新たな始まり。

物事が一度終了し、やり直す事を意味し、それは急な中断による終了や大きな力による強制的な終末である可能性もあり、何かを失うかもしれません。

しかし、そういった出来事をもたらす事で物事を根本から生まれ変わらせ、結果的には新たな始まりまで人を導く。

物事が終わっていく事を恐れてはいけない、と伝えています。」


「分かったけど、お前も俺を監視して来たのなら分かるだろ!これまで今日の計画実行する為に色々と調べて来た。このタイミングで今日を選んだんだ!」


「確かに、自分の意思とは関係なく終わっていく事に納得がいかないかもしれませんが!しかし、一度それを受け入れる事で、心と頭の中には新しいアイディアが浮かんでくるでしょう。 

そこにたどり着くまで、あなたは自分や物事の根本と向かい合えるはずなのです。

と解いています。」


「私からお伝え出来るのはこれだけです。気を付けて行って下さい。」


「分かったよ!長々と講釈、胸の奥にシッカリと留めました。ありがとう。」と言うと右手を出し手を握った。

そのまま引き寄せ抱きしめた。


「幸運の女神様に感謝します。」と言うとおデコに軽くキスをした。


「またな!」と頭をポンポンと軽く触り、背中を向け歩き出した。


三芳は姿が見え無くなるまで後ろ姿を見続けた。


俺にはもう一つやる事があった。


斎藤さんに会って確かめなければいけない事だ。


そのまま彼らが暮らす村営住宅へ向かった。


小高い丘の上に見える建物がある。


登り始めると上から2人の男達が降りて来て行く手を塞いだ。


黒っぽいスーツ姿の男と用心棒風なガタイの大きい無精髭の男。


黒スーツが話し掛けて来た。


「何処へ行くんだ!」直ぐに組織に雇われた者達だとは分かった。


「知り合いに会いに来ただけだ!通してくれ!」


「ダメだ!帰ってくれ!」


「それじゃぁ〜また出直して来る!」と振り返り坂を降り出した。


2人組もしばらくは後をついて来たが振り返り戻ろうとした。


その一瞬で無精髭男の右脇腹へ背後から中段蹴りを入れるとよろめき左側の草むらへ倒れ込んだ。


振り返った黒スーツへは右の下段蹴りを右膝付近に入れると背中を見せた所で首に手を回し頸動脈を締め落とした。


倒れていた無精髭男が立ち上がり向かって来た。


その男の背後から側頭部付近に何かが当たった様に思えた!

動きが止まり白目を向き前のめりに倒れた。

後ろにはアイツがいた。


「今井!お前か!」


「見つかったな!後方支援だ!民間人が喧嘩に巻き込まれるのを黙って見てる訳にはいかなくてな!」


「よく言うよ!どっちかと言えば襲い掛かったのはこっちの方だけどな!見事なハイキックだ!」


「何れにしてもこの2人は銃刀法違反だ!」

と言うと黒スーツの内側を探り、拳銃を取り出し、無精髭もジャンバーの後ろを引き上げると大きめのサバイバルナイフが仕込んであった。


「知ってたろ!町野!」


「ああ!」


「いいからお前は先を行け!」


「分かった!」お互いに感謝の言葉など無くても分かっている仲だから、信頼していた。


少し登り坂の道を進み村営住宅の門を通り2階建てのコンクリート住宅が何棟かあった。


「確か!2号棟の2階の202だと言っていたな!

昔から再登場は2回目だから2にこだわっていると! 

その名前6年前についたものだから!」


一体斎藤さんの記憶がどの程度残されているのかが問題だった。


階段を上がりインターフォンを鳴らした。


中から「どなたですか?」と男の人の声が聞こえる。


「鈴木です。」と言うとドアが開き難しそうな顔をした斎藤さんが立っていた。


「ああ!水道局の鈴木さんが家まで来て何の用事ですか?」


最近の記憶を無くしたかの様に、全くあの頃の斎藤さんではなくなっている。


「豊子婆ちゃんは元気にしてるんですか?」


「何で吉田の婆さんの事をわざわざ俺んとこに聞くんだ!」


「斎藤さんの婆ちゃんだろ!」


「バッカ言え〜!俺の実家は茨城の美浦村に家族5人で生活してるから、そこに爺さんも婆さんもまだまだ元気に働いてんだ。

さっきから鈴木さん何なんだよ!」


「相変わらず秋ちゃんは可愛いですか?」


「あんたにそんな事まで話してたっけ!可愛いに決まってるさ!」


「もう何か話したりするんですか?」


「はぁ〜!話す訳がねえっぺ〜!ネコなんだから!」


「若菜さん!奥さんは?」


「誰の?」


「斎藤さんの奥さんですよ!」


「内のは千秋って言うんだ〜!千秋さ〜ん!こっちさけろぉ〜。」


「はぁ〜い!」とぽっちゃりした女性が斎藤さんとペアのジャージを着て出て来た。


「こんにちは!」まるで違う人だった。


「宛が外れた!何も収獲は無かった。

・・・そうでもないか!やっぱり記憶操作が行われている。」


「若菜さんと秋ちゃんの行方とこのマインドコントロールを行っている人間がやはりいるという事だけはハッキリした。」


 全てはあの地下施設に隠されている筈だ!さっきの2人の姿はなく坂を下って行くとバイクが一台、しかも懐かしい俺の昔乗ってたHONDAのCBR400F初期型のホワイトメタリック。


こんなの用意出来るのはあのヤローしかいない!今井の奴!どこまでおせっかいなんだ!ヘルメットの中にメモが残っていた。


「ガソリンは満タン返しだ!

油断するな!まだ他にも奴らの仲間が狙っている!」


この後の俺の動きやすい足として車ではなくバイクを!

しかもCBRかよ!

これで11時までに十分戻ってこれる時間が出来た。


香織には甲府署に届いている書類を取りに行って来る。


先輩と会うから夜遅くなるけど必ず帰って来るから大晦日の行事の手伝いをシッカリとやる様に伝え家を出た。


役場に停めたバイクにまたがり香織と2年前に会った西湖のあのボートの吊り橋に何があるのか?家からあの場所まで歩くには30分以上はかかる!

それにあの周りに自分の車以外に停まっている車はなかった。


だとするとあの地下通路やボート移動をする為の水の流れ込みが池の水とこの西湖を繋ぐ水路があると考えた。


運転手の島田さんに池の水の排水浄化剤と説明した赤の食紅を14時30分に指定した池の排水口から流して欲しいと伝えておいた。


今時間は15時30分丁度!距離にすると5km程はあるだろう。


標高差と距離から推測し時速5kmの速さで流れて来た赤く染まった水は1時間かけてこの湖までたどり着く事になる。


給水の場所は分かっていた。


あの馬鹿デカイ社務所の中にある浄化施設を通して地下施設に送り込まれている。


「しかもあの深さの水源は別ルートで西湖から流れ込んだ湖水が流れているのだろう。

若菜さんと秋ちゃんの行方とこのマインドコントロールを行っている人間がやはりいるという事だけはハッキリした。」


全てはあの地下施設に隠されている筈だ!

こんな地下の鍾乳洞がこの地域には数多く存在している。


イメージは直線ではない限り少しの遅れはある。


もう一つ島田さんが周りを気にしながら流し込みが予定より時間が掛かっている。


「こんな所だろう。」


島田さんには何かあったら俺に脅されたと言う事にすればいいと伝えた。

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