第9話 閉ざされたままの部屋!新たな真実‼
雑然と並ぶ書籍と図鑑。
壁一面の書棚の前に大きな木製で立派な机がある。
今日は雨雲のせいで太陽が姿を隠し、明かりを付けると窓の隙間から光が射し誰かに感付かれるのを避ける為、ペンライトを付け周りの物を見ていた。
本棚の他の壁には賞状や写真などが額に入れて縦横の配列がされ飾ってある。
ほとんどが研究者に送られる国際的に認められた賞なのだろう。
英語で書かれている物もある。
「刺胞動物門無脊椎動物学」とあるが何の事だか分からない。
この人が香織の叔父さんか!と一人研究室で白衣を着ている写真があった。
その後一点に目を向け、ただ1つ分かった事があった。
「東京帝都大学院 前田隆」・・・写真の下に「研究室同期メンバー」の中に隆の横に居る人物に見覚えがあった。
神藤雅之・・・香織の父親だ!ここに来て新たな展開が加わって来た。
2人が一緒の研究室にいて隆が研究者として表彰を受けたのが10年前!論文提出を考えれば遅くとも何らかの研究結果は出ていた筈だ!
何の研究だったのかを甲府新聞の武田に調べさせた。
現在、行方不明が3名!
前田隆・前田マリが海外にて起業!
吉田豊子が失踪!
とはなっているがはたして?と疑っていた。
7時過ぎ周りが真っ暗になる頃、香織とトモカが乗ったハイヤーが市内から帰って来た。
他の部屋と違い廊下や玄関や厨房などに正面の門が開く時になる音が聞えづらい。
開けたままのドアを閉めるとドアの重みと無音状態。
窓も光など漏れる訳が無い。
カーテンで隠されていたがダミーの窓だった。
外からのいつも閉まっているカーテンはダミーだったのだ。
この部屋だけ防音壁にしていると言う事は隆さんはかなりの音楽や楽器やオーディオにこだわりのある方だったのだろう。
でもこの部屋には音を奏でる楽器も機械もスピーカー1つとして見当たらない。
そろそろ香織たちが戻って来るから1階に戻ろうとした時ペンライトを落としてしまった。
コロコロと転がり机にぶつかり止まった。
それを拾おうとした時、粉の様な物が散らばっていた。
上を見ると机のテーブル裏にはホゾ穴に継手で埋めた様な跡があった。
ライトをあてて見ると小さな穴が無数に開いていてその中からこの粉が落ちて来ているんだと直ぐに分かった。
虫食いなのだろうか!
その蓋に当たる部分だけが虫食い状態で少し崩れてずれ落ちて来ている。
触って見ると「すっ!」と抜けてしまった。
その中をライトで照らすとスイッチが3つ並んでいた。
しばらく見ていたが何も書かれていない。
机の椅子に座り右手で手前のスイッチを押した。
すると天井から大きなスクリーンパネルが降りて来た。
次に同様に天井から薄型のスピーカーが降りて来た。
次に真ん中のスイッチを押す「ガァー」と音を立て後ろの本棚が左右に開き出した。
奥にもう一つ部屋があった。
中へ入ってみるとビデオデッキが複数台と撮影に使用するカメラや収録用のマイクと幾つかのパソコンや機械類が配置され、壁には実験(1)から実験(88)までのビデオテープが並んでいた。
電源ボタンを押しても動き出さない。
壊れてしまっているのかと諦めて机に戻った。
椅子に座り最後のスイッチがある事を思い出した。
手探りで一番奥のスイッチに手を掛けた瞬間
「ガチャッ!ぎぃー!くるくるくる!」と音がして机の正面側からスクリーンに向かって光が飛んだ。
③・・・②・・・①と映像と音がが流れ出した。
「今、この映像を見ているのが前田家の圧力の掛かった人では無い事を祈ります。
また神藤とも繋がりがない事もだ!
今から言う事はこの10年間掛けて研究し、人類の果たせない夢であった「永遠の命」に繋がる発明へあと一歩と言うところまでたどり着いた。」
「だがこの研究テーマの目的は始め産まれて間もない子供達の命を延命する為の越えてはいけない神の領域にまで踏み越えてしまう様な研究の筈だった。」
「ところが動物実験が成功し、次に行われる筈だった人体実験の国からの認可が降りず、その後は金の臭いを嗅ぎつけたヤカラ達が集まって来た。」
「私は今の世の中でこの研究を封印するべきと考え、最終レポートに間違ったデータを残し最後の検証をわざと失敗し続けた。」
「そして夢の研究は夢のままで終わる筈だった。」
「それを裏切ったのが神藤雅之だ。」
「私の研究助手としてこの研究に長く参加していて、人類にとってとても危険な研究だから完全な状態で100%成功し続けなければ子供達には臨床試験など行うベキではない。
と常に伝えて来ていた。」
「だが彼は道を踏み外し間違った道を進もうとしている。」
「だから私の研究資料全てを廃棄しこれから何も無かった事にする。」
「その事が組織に漏れた様だ。私の命に掛けて封印する。」
「もしそれが失敗に終わり今この時に不可思議な動きが起こり人々に災いが起ころうとした時には君がそれを止めてくれ!
余りにも無責任だと思うけど君にしか・・・迎えが来た。あとは頼む !・・・」と運命を預けられた。
もうすでに7時30分を過ぎていた。
全てのスイッチを元に戻し、慌てて部屋を出た。
階段を降りて来る途中で香織に見つかった。
「お帰り!何かいい物あったか?」
「トモカの洋服を幾つか。それと公平さんも冬物の上着を買って見たから気に入ったら着て下さい。」
「悪いな !ありがとう!自分のはどうした?」
「余り気に入ったのがなかったの。そんな気分でも無くて。」
「公平さん、2階へ何しに行っていたの?」
「・・・ああ!寝室の窓から空を眺めながら2人が帰ってくるのを待ってたんだよ。」
「こんな雨降りに空を見ても星も月も出てないじゃないですか?変なの。」と言うといつも通り夕食の仕度を始めた。
トモカは眠っていた。
明日が計画を決行し何が出て来るのか!
隆さんが言われた事が現実に行われているのであれば、俺に何が出来るのかを考えていた。
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