第8話 DNAの変異!誰だKとG‼

 2001年12月30日


 今日は朝から雨が降り続いていた 。


警戒しながら起きて1階のリビングへと降りるとしばらくして香織が起きて来た。


自分では外に出れない為、朝刊を取りに行ってもらい昨晩の事故が記事になっているかを確認していた。


山梨県内地域ページに小さくではあるがその記事が乗っていた。


昨夜10時過ぎ広瀬ダムに車が転落した。


運転者は20代男性会社員とあった。


運転者の名前は編集時に圧力が掛かったのだろう。


県営テレビ放送も同様だった。


だから電話や取材なども来ないだろう。


香織に今日はここにいない方がいいから市内に出ていてくれ!と話した。


屋敷内を調べるには恵子さんがあの祠から地下道へ向かうタイミングを見計らうしかなかった。


香織も公香(トモカ)を連れてハイヤーで市内の百貨店へ行ってくると言ってお昼前に出掛けて行った。


2階の窓から池越しに人の動きを伺った。


雨の波紋がいくつも広がり、その底の方からあの日、見た淡いピンクと淡いブルーの光線がピカピカとした万華鏡の様なキラメキが眩しく目を塞いだ。


この光の後に恵子さんは現れた。


そして足早に橋を渡り祠の裏に消えて行った。


それを確認して1階に降り、渡り廊下を進み母屋側へ足を踏み入れた。


お爺様の書斎と寝室のには鍵がかかっていて入れない。


恵子さんの部屋は母屋から裏側に伸びる渡り廊下の先であった。


明日大晦日に配る豚汁の下準備と新年会様のおせちと料理の下ごしらえが4〜5人の調理係によって行われていた。


来客用の20畳はある応接室には、テーブルが並べられ20人近くが並んで座れる準備がされていた。


お爺様の秘書、澤田さんの部屋は鍵が開いていた。


元々ここは住まいとしての部屋ではなく、いわゆる仕事部屋である。


カレンダーにスケジュールが書き込んであり、今日は市内の系列会社で会議が13時よりある為、すでに出発している。


確か関東に数十店舗を構える、飲食店を経営する会社もその中の一つだ!電話の横には50音順に縦型に並びゲージを合わせ下の部分を押すとその名前ページが開く電話帳があった。


椅子に座り「あ」のページから順番に確認して行った。


頻繁に電話を掛けている番号を確かめる為に、この番号から電話局に連絡をし通知案内をFAXしてもらった。


東京の「03」から始まる番号で頻繁に掛けている番号を10個選び出して、この周辺の「0555」から始まる番号を10個選び出した。


東京の10カ所の内5カ所は関連企業の事務所で3箇所が都市銀行と国会議員事務所と大手建設会社だった。


残る2箇所は東京帝都大学【生物学ゲノム再生研究 】神藤先生!香織の父親だ!やはり何かをあの地下室でおこなっているのはあの人だ!最後のもう一つは電話帳には記載がない番号だった。


ダイヤルを押して呼び出し音が3回鳴った!


「警察庁化学研究所です。」と男性が言うのを聞くと一旦通話を切り受話器を置いた。


すると「ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!」と電話が掛かって来た。


留守番電話ボタンを押した。


「只今、外出中です。後程掛け直しますのでお名前を残して下さい。ピィーッ! 」


「 ・・・ガチャ!」と何も言わずに受話器を置かれた。


「科警研か?」と躊躇いながら掛け直しはしなかった。


この村の次の10箇所も同じ様に電話帳を開き調べた。


3箇所目で乗っていない番号が出て来た。


残りは甲府市内のグループ会社と県会議員事務所と役場の村長室の電話と書いてあった。

 

この残っている記載がない番号へ掛けて見た。


「ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!」6コール目で誰かが受話器を取った。


「・・・・・・「茜様!戻ら・・・」


「カチャッ。プゥーッ。プゥーッ。プゥーッ 。」と最後は受話器を抑えてから切ったんだ。


何処かで聞き覚えのある声が微かに後方から聞こえた!恵子さんの声だ!と言う事はこの番号はあの地下室に繋がっていた 。


となると明日の侵入では確信を付く証拠が明らかになる。


後は科警研…恭子の所だ !あれから3年半連絡はしていない。


もしかしたら、いい人を見つけて新たな人生を歩んでいるのかも知れない!


重い腰を上げて受話器を手にして先ほどの番号に電話をかけた。 


「ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!ピィーピピピピ!」とスリーコール目で男性が出た! 


「甲府署の土井と申します。加藤さんはいらっしゃいますか?」と言うと


「男性ですか?女性ですか?」


「女性です。」


「下の名前は分かりますか?すいません!加藤が複数名いまして!」


「加藤恭子さんです。」


「ハイ!分かりました!」しばらくして


「お待たせ致しました。加藤ですが!」


「しばらく!…高野です。元気にしていましたか。」


「珍しい人から連絡が来たわね!この検体の事ね!」


「突然、申し訳ない!信用出来るのは君しか居なかったんだ。」


「相変わらず勝手な事を言って!…あの時だって何にも言わず、姿を消して4年近く今日まで行方知れず!」


「悪かったな!もう終わった事だからやっと話せる様になったけど、公安の侵入捜査でこの3年半、山梨のある村にいる。

任務は済んだがある事件に巻き込まれた!

元々の侵入も命を狙われる事を考え、お前を巻き添えにする訳にはいかなかった。

だから黙って消えて連絡も取らなかった。

そうでもしなければついて来ていただろ!」


「そんな事は ・・・!」と電話の向こう側で恭子は上を向き涙が出て来そうになりながらも少し黙り込んだ。


そして「もう昔の話。」と話を終わらせた。


「それであの毛髪の事なんだけど!届いて直ぐに調べて見た。幾つかおかしな結果が出たの。」


「どう言う事だ!」


「まず1回目の検査ではA型20代女性の鑑定。

2時間後2回目A型40代女性の鑑定。4時間後3回目O型60代女性と言う鑑定結果が出てしまった。」


「何を間違えたんだよ!シッカリしてくれよ!恭子!」


「こんな基本的な検査で間違える筈がないでしょっ!研修医でもあるまいし!・・・」


「そういえばあの検体に触れたのは私ともう1人?シン!・・」


「最初に検体培養させたのは私じゃない!

もしこの頭髪が生理食塩水に長時間湿らす事で遺伝子変化を起こす様な事があるのかをもう1度調べて見る。

今井に渡す前に現場に落ちていた長い髪を1本たぶん豊子婆ちゃんの物を甲府署へ送り土井のおやっさんから鑑識へ依頼した。」


「今井に渡す前に現場に落ちていた長い髪を1本たぶん豊子婆ちゃんの物を甲府署へ送り土井のおやっさんから鑑識へ依頼した。」


「甲府署の鑑識からの報告では『O型30代前後の男性の頭髪』との結果連絡だったがこんな事、最初から分かっていたから恭子へ頼んだ。

前田家からの圧力が係り隠蔽される事は分かっていた。」


「公平!前田って ?どこの人なの!」


「嫁の実家で、地元の権力者!だから村も街も議員も警察もみんな逆らえない!何だか変な所なんだ!」


「へぇ〜!結婚したんだ。」


「ああ!昔の幼なじみだった子だよ!」


「あの村にいるの?初恋の香織ちゃんだ!」


「良かったね…!あの頃は伸一と3人でいつも一緒だったよね!」


「子供は?・・・」


「いるよ!娘がトモカ!もうすぐ3ヶ月になる。それと今お腹に2人目が・・・!」


「幸せそうね!・・・」と手帳の中の写真を見ながら暗い声で恭子は少し黙り込んだ!


「そうだ!伸一は元気にしてるのか!」


「あの子は変わってないよ!相変わらず研究と新たに心理学を学びにわざわざアメリカへ・・・」


「ピポンピポンピポン!ピポンピポンピポン!ピポンピポンピポン!」


正面の門と玄関ドアが開く時のインターフォーンが鳴った。


「恭子!誰かが帰ってきたみたいだ!また掛け直す!じゃぁ宜しく!」


「分かった!」と受話器を置いた。


「まずい!」この番号から頻繁に電話が掛けられている事を恭子に伝えるのをすっかり忘れていた。


窓から外を見渡すとお爺様の移動に使うハイヤーが帰って来た。


助手席に秘書の澤田さんが居ないと言う事はお爺様も乗って居ない筈だ。


これで時間が稼げる。


電話の件は恭子には話さないでおく事にした。


彼女の他に内通者が居るからだ。


電話の横にある書類を探っていると下からメモ帳が出て来た。


何も書かれていなかった。


と思ったが何かに気が付きそれを手に取った。


筆圧の強い秘書の澤田さんの書いた字が残っていた。


鉛筆で全体を薄く塗りつぶしてゆくと文字が浮かび上がって来た。


「12月29日、Kの元に斉藤を連れて行く。事件対応は甲府署真田署長へ・・・Gより」と書かれていた。


「KとGは誰なんだ!これがこの村を中心に起きている全ての事件の謎を解く鍵である事だった。」


メモ帳からこのページだけを切り取り部屋を出た。


今日分かった事を整理して見ると

①通話が多い場所で電話帳に名前の無い極めて隠していた場所は東京帝都大学、警察庁化学研究所、そして裏の地下施設だ!


②帝都大学は神藤だろう!科警研はまだ分からない!地下施設の男!


③恭子からの不可思議な検体結果が報告された事!地下施設からの恵子さんが言った茜様!戻ら・・・と言う言葉!


④あのメモに印されたKとGが誰か!


⑤池から漏れた発光線 !雨天で天候が悪く暗かったから目に入った。

晴天では気付かない光!この事も手帳に残した。


あとは、明日の侵入計画に向けて、香織のポーチをいつすり替えるかだ!リビングに戻り今朝の新聞を改めて見た。


今日分かった事を整理して見ると

1つ目が通話が多い場所で電話帳に名前の無い極めて隠していた場所が東京帝都大学、警察庁化学研究所、そして裏の地下施設だ!

2つ目が誰と連絡を取っていたかだが!

帝都大学は神藤だろう!

科警研はまだ分からない!

地下施設の男もまだ分からない!

3つ目が恭子からの不可思議な検体結果が報告された事!

地下施設からの恵子さんが言った「茜様!戻ら・・・」と言う言葉!

4つ目があのメモに印されたKとGが誰かだ!

5つ目が池から漏れた発光線!

雨天で天候が悪く暗かったから目に入った。

晴天では気付かない光!この事も手帳に残した。


あとは、明日の侵入計画に向けて、香織のポーチをいつすり替えるかだ!リビングに戻り今朝の新聞を改めて見た。


地方欄に東京帝都大学生物学部が文部省と建設省の認可がおり2010年から施設建設着工が決定したと発表された。


建設予定地は山梨県南都留郡鳴沢村と書かれていた。


写真には各省の大臣と山梨県知事が握手をしていてその周りには議員や村長、その中に前田喜兵衛の姿があった。


このプロジェクトには国と県から莫大な補助金、助成金、援助金が出される。


一企業としては過去には無かった前田興業が土地の開発から大学の建設まで全てを請け負うらしい。


だからその土地の開発に向け今日は同族企業で妹の長男が社長をしている甲府開発と地元の議員さんらとの会食って訳か!


一度あった事があるが道楽者の出来の悪いお坊っちゃまと言うところ。


あの爺さんは香織には話しかけるが俺の事はまるで無視している。


最初から反対していたから分からない事はないが同じ敷地内に住んでいる孫娘の夫、義理の孫と言うのか分からないが。


けれど仕事の事やその他の事も含め厳しい命令や指示なども無い。


前田マリ、お祖母様の話もした事が無かったし、気にして深く聞いた事も無かった。


写真や自画像だけはあちこちに飾ってあるから分かっていた。


純日本人では無い今で言うハーフに当たる女性だろうと香織もお爺様から離れて母国に戻り事業を始めたとは聞いているがよくは知らないらしい。


この後2階にあるお母様の行方不明のお兄さんの書斎にも初めて入った。

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