第5話 謎の地下施設とPとM!あの人がなぜ‼

 設備管理室・浄化槽室・倉庫・書庫・電気基盤室・地下ピット(侵入禁止)とシールが貼ってある。


1番奥のドアだろうと進んで行くとドアに張り紙があって【有毒ガスの発生可能性がある為、関係業者以外立ち入り禁止】と書かれていた。


ここに違いない!と考えたが周辺の壁にまだ仕掛けがあると疑った。


不自然な場所に自動シャッター用のスイッチボックスがある。


この鍵が何処かにある筈だ!消火器が固定されずに置いてあるか。


持ち上げて見たが下には置いてない。


裏側を見ると丸い鍵が隙間に挟んである。


その鍵でドアを開けて見ると中にシャッターが閉まった状態にあった。


丸い鍵でシャッターボックスを開け上げるボタンを押した。


シャッターがゆっくりと上がり出した。


中に入ると下りの長い階段があり大分下の方まで続いている様だった。


左側に額に入った絵が不自然に飾ってある。その裏に目立たない様に壁スイッチが隠されていた 。


それを押すとその壁自体が横に移動し始めた。


10段くらい階段を降りると奥にはエレベーターがありブルーの明かりが薄っすらと照らされていた。


このホールにはもう一つドアがあったが鍵が掛かっていて開かなかった。


目がこの暗さに慣れてくると何か水の中にでもいる様な景色だった。


下矢印しかなく、エレベーターの中へ入るともっと深く濃いブルーの色になり【PとM】と2種類の階ボタンしかない。


とりあえず次の階【P】を押しドアが閉まり下がり出した。


思ったより深かったのか時間が掛かった気がする。


ドアが開くと「研究室」のシルバーのドアと鉄の重そうなドアが並んでいた。


両方ともやはり鍵が掛かっていたエレベーターホールに戻り【M】を押して扉が閉まった。

一段と暗くなり直ぐに扉が開いた。


ホールから先の廊下へ向けて床に50cm幅の薄暗いブルーの明かりが点線で続いていた。

これをたどって進んで行った。


かなり温度が下がっている状態の中、何か生臭い少し海の匂いとも思えた。


それが何か嫌な予感を感じさせた。


やはりこの明かりに目が慣れて来た頃、透明なガラスの壁が行く手を塞いだ。


正面の突き当たりにぶち当たった。


正面は厚いアクリル板で内側の結露で曇って先が良く見えない。


ただ薄いピンクと淡いブルーの明かりがぼんやりと動いている様に見えた?


雨でも降っているかの様にガラスに水滴が付き向こう側にある物が薄明かりも重なりぼんやりとしかみえていない。


中にはプールみたいな大きな水槽の様な物が見える。


ここがなんなのかよく分からないが、床にあたる高さよりまだ深い水深なんだろうと直感した!もの凄く薄いピンク色と水色の光線が底の方から照らされている様に見えた。


少しでも奥の様子を見たかった為、その水滴が付いたガラスの壁に顔を擦り付けながら見続けた。


水槽内の水が動いているのは分かった。


ろ過機能や水質循環装置が動いているのだろうか?

または何かの研究様にマスなどの魚が飼育されているのだろうかと別段不思議には思わなかった。


それよりも周りから幾つもの目に見られついる様な視線を感じた。


その壁にもたれ掛かる様に手と顔を付けて見ると「冷てぇっ!」とこちら側も結露が付き洋服も濡れてしまった。


この先にはどうやって行けばいいのだ!何処かにスイッチがある筈だ!とやっと目が慣れて来た。


なぜかまた誰かに見られている気がしていた。


よく見ると両壁と天井面も少し暗めのアクリル板で出来ている。


奥にはべつの大きな水槽が並べられ何かが飼育されている。


アクリルで仕上げられた壁にはスイッチはない!だからあるのは床のどこかだろうと探した。


この付近にはなさそうだ!あと残るはエレベーターかホール内しかない。


ホール内も怪しい所は何もなかった。


エレベーターの中はシンプルに「①とPとM」の3つと開閉のボタンしかなかった。


床を見た時、右奥側一箇所が少し汚れが目立つ場所があった。


少し膨らんでいる為、踏んで見た。


すると先程のブルーの点線の明かりがエレベーター側から順番にもっと明るく光だし、道を輝かせ両壁や天井の様子も分かって来た。

背の明かりが突き当たりまで到達するとゆっくりと左に厚いアクリル板が動き出した。


生温かい空気と共に生臭い空気の匂いがして来た。


ゆっくりと中へ入って行くと目の前にイルカが泳げるくらいのプールがあり下の方からさっき見た薄いピンクの光と淡いブルーの光が差している。


そのプールを囲む様に円形のスチールゲージに覆われていて、上部には何かレーザー光線か音波でも出す様な器具が設置している。


左の奥には小型の同様な施設が3つ並んでいる。


入口右側にはコントロールルームがあった。


エレベーターホールから「ピンポン!」と呼出音が鳴った。


「ピンポン!」と2回目の呼出音が鳴った。


天井の点検口を外し上へ登った。


だがエレベーターは動かない。


「そうか!スイッチを踏みドアを閉じなければロックは解除されない様になっているんだ!」と降りてドアを閉じ再び点検口から上へ登った。


エレベーターは地下1階へ向かった。  


誰が入ってくるのか空気口の隙間から覗いていた。


扉が開き女性が乗って来た。


「あっ!」香織だった!【P】階を押し、カバンから黄色いポシェットを取り出し、中にあるブランドのキーホルダーを取り出した。


扉が開くと普通に降りて行った。


なぜ香織がここに来る必要があるのか!今はまだわからなかった。


B1Fまで戻り階段を上がって行くと何かを叫んでいた。


「鈴木さん!!何処へ行っていたんですか!ずっと探してたんですよ!」


「すいません。トイレに行きたくなってしまって奥まで探して見たんですがなくて!」


「トイレならそこのドアを開けて表に古屋があるからその中ですよ!早く行って来て!」


「ピーッ!ピーッ!ピーッ!」


「まただよ!誰なんだよ!さっきから!また事務所に戻りますから、トイレいったら早く点検終わらせておいて下さいね!」


「ハイ!ハイ!分かりました。」


「何それ!まあいいや!早くね!」


苦労せず裏側へ出られてしまった。


前田家側森の反対側にこの建物がある。


高い網の鉄製フェンスがそびえ立っていた。


緑色にコーティングがしてあったので分かり難かった。


3m?いや5mは有りこちら側に斜めに50cm曲げられそこには3本の有刺鉄線が張り巡らされていた。


それが1面で設置され、侵入者を妨げている。 


不自然に立てられている小屋がなぜこの場所に必要なのか?トイレと物置に使われている様だが、大きさや高さに違和感を感じて裏側に回ると正面から見た木造のトタン壁とは違いコンクリートの壁に覆われた建物に電動シャッター。


スイッチボックスがあり、鍵を閉め忘れたのだろうか、蓋が開いていた。上げるボタンを押して中に入って行った。


ここには室内灯がありスイッチを付けた。


階段を10段位下がると広々とした空間となりこの先にはエスカレーターでもっと下へと続いていた。


下へ進むに連れ温度が下がって行くのが分かった。


余りゆっくりはしてれない。


また斎藤さんが探している可能性がある。


下まで着くと川の流れる音がした。


目の前に流れると2人乗り足こぎボートの様な物が2台繋がれていた。


そのボートにサッと乗り込み繋いであるロープとフックを外した。


すると流れが早い為、勝手に進んで行った。暗いトンネルに入るとボートのライトが勝手に付き出した 。


先に明かりが見えたと思ったら、あっという間に真っ暗なトンネル部分を抜けて広い薄暗い空間に到着した。


前方には上からと下からと伸びる鍾乳石の様な物が幾つも並び、船着き場と言うよりも前に同様のボート2台つかえていた。


同じ様にロープとフックをつなぎエスカレーターで上へと向かった。


丸い空間があり5段の階段を上がると開・閉のボタンがあるのでとりあえず開ボタンを押した。


こちらはシャッターではなく扉が開いた。


外を見て直ぐにそこが何処だか分かった。 


表に出ずにすぐにエスカレーターに戻った。


手動切り替えだが下りボタンを押して下がり出した。


水路に戻ると1番前のボートのロープとフックを外し進み出すボートに座らず急いで飛び降りれる用意をした。


明かりが見えて来て今回は何も起こらず出口まで来られた。


表に出ようとした時、斎藤さんが小走りで前を通り過ぎた。


その間を使ってドアを開けて中に入った。


設備管理室のドアを鍵で開けて、中で閉めてまたその先の浄化槽室を鍵で開けた。


ポケットのカメラで何枚か写真を写し、書類に丸を付け念の為、蓋だけは開けて中身の写真も写しておいた。


浄化槽室を出ると表のドアを叩く音が続いた。


急いで鍵を開けた。


斎藤さんが息を切らして立っていた。


「あんたね!どうなってるんだよ!」 


「えぇー!今浄化槽点検が終わったところで、何かありました。」


「上の人がおたくの会社連絡して鈴木一郎さん何ていないと言われて、探し回っていたんですよ!」


「またか!それ事務のおばちゃんですよね!」


「何なんだ!説明してよ!」


「あの人、普段から私の事を昔の銀幕スターって言うんですか?田宮二郎って言うんですよ。

しかも内なんか下請けで未だに名前も覚えてもらえない。


斎藤さん今日の点検でいくら貰えると思います?」


「さて・・?」


「正解!1分30円!1時間1,800円!今日の仕事は2時間3,600円ですよ!生活出来ないんで夜もバイトですよ!」


「よく分かりましたね!」


「斉藤さんは超能力者ですか?」


「えぃとぉ〜・・!」


「またまた正解!夜のバイトは時給810円8時から夜中1時まで居酒屋で5時間で何と4,050円〜!もうそろそろこの村で暮らすのも限界が来たと思ってるんです。」


「あの〜!」


「その通り!OH!NO!ですよ。さっきから斎藤さん何で英語なんですか?」


「はぁー?」

「まぁ、いがっぺぇ。大変なんだね〜鈴木さんも!」

「良かったら今度豊子婆ちゃん家でほうとう鍋でも食うっぺぇ!」

「そっすて、あの怪事件の話でもまたすっぺ!」と斎藤さんと約束して、この後は出館手続きを行い一旦甲府警察署へ戻った。


色々と分かった事があるが香織が関係している事からまだ報告は行えなかった。


山梨県浄化槽協会検査センターへは本当に写真やデータを送り異常がないのか検証させた。


今、気付いた事がある。


「確か!」と小さめな手帳をめくり出した。


「これだ!「ポリプとメデウサ」ってソフィアが聞いた謎の言葉だ!」


「公平さん、俺には何の事だかサッパリ分からないっすよ!」と和也が言った。


「そうだよな!分かった和也!もう少しだけ聞いてくれ!」


「地下室へ続くエレベーター。【PとM】と2種類のボタン?【P】はポリプ、とすると【M】は?メデウサとなる。」


「誰かスマホでググレ!」


「自分やります。」


 3日後、本当に斎藤さんから呼ばれ、豊子婆ちゃん家で夕食を食べる事になった。


俺は脱法ハーブ捜査時の聞き込み時に顔が知られていることを考え眼鏡をかけ浄化槽協会検査センターの薄いブルーの作業着で『甲斐の地酒』を持って7時過ぎにお邪魔した。


「こんばんわ!」と玄関を開けるとまだ1〜2歳の小さな子、たぶん女の子を抱っこして斎藤さんが出てきた。


「いらっしゃい。どうぞどうぞ、遠慮せんと上がって!婆ちゃん!スーさん来たよ!」


「お邪魔しま〜す。」と斎藤さんの後を着いて行った。


奥から可愛げな女性が出て来て「スーさん!内の嫁、若菜。」ちょこんと頭を下げた。


「これは長女の秋ちゃんで〜 。はぁーいは?」無理やり手を上げさせた。


「奥にいるのが豊子婆ちゃん。婆ちゃん!スーさん来たよ!」


「まぁー!良い男じゃないか!丈さん、お客様を立たせたままですよ。」


「スーさん!座って座って!」


「斎藤さん!さっきからスーさんって!いつからそうなったの!」


婆ちゃんに話をしてたら、途中から鈴木さんが面倒になってそれから!まぁー!いがっぺ!」しばらく豊子婆ちゃんの作ってくれたほうとう鍋を食べながらお酒も進んでいた。


「若菜さんは左効きなんだ!」と言うと箸を置いて


「母がぎっちょだったみたいで!」と言うと席を立った。


「それであの話なんだけど、斎藤さん!」


「可愛いだろ!秋ちゃんはオラと若菜のいいところが合わさっているから最高にブリティーなの!」


「分かった!わかったよ!それは10回以上聞いているから!」


「すいません!この人、普段はこんなに酔ってしまう事ないんですよ。よっぽど鈴木さんに会えて話が出来たのが嬉しかったんですよ。」


「若菜さん・・・生まれはこちらではないですよね!」


「どうして!」


「だって至って標準語ですよね!」


「・・・!」


「すいません。秋を寝かせてきますので!」と娘を抱えて席を立った。


「あんこは古い話しゃあー嫌うんじゃよ!あんまし言いたくなか事があっからっし!」


「何かあったんですか?どうして、ここにいるんですか?」


「若い子らはみぃ〜んな前田様の関係で東京あたりっからやって来たんじゃよ。そんで甲府辺りのお店や何かで働いてたんだろぅ!」


「そんこをあのバカもんが連れて来よった 。そん時にはお腹ん中、あんコは居たんじゃろ!」と言うと立ち上がり台所の方に歩き出した。


後をついて行き話を続けた。


仏壇では無いが写真が飾ってあった。


「旦那さんはどうされたんですか?」


「ずいぶんと若い頃の写真じゃよ!そん頃はオリンピックを目指す選手じゃった。陸上十種競技の選手吉田 一(はじめ)は織田 幹雄(おだ みきお)1928年アムステルダムオリンピック三段跳金メダリストの影で大幅に記録を塗り替えていたんじゃが支援者がいなかった為に記録会に出る事が出来ずに表舞台には出る事が出来なかったんじゃ!」


写真に向かって両手を合わせ合掌した。


「豊子婆ちゃん !あの4年前の事件の事だけど!何があったんですか?」


「・・・皆が話すまんまだ!・・・あとは不可思議な事が重なっただけじゃ!」


「不可思議な事?それが何なのかを教えて下さい。」


「こんくらいでやめときんさい!真っ赤な目をした西湖の龍神様に喰われっちまうぞ!」


「龍神様って、婆ちゃん何の事だ!」


「ただの伝説!昔話じゃよ!」


「だけんどな、この話に首突っ込んだ書き者さんや役場の人、駐在さんも若けーいもんばかり行方がわからんなっている。皆が気狂いしよって樹海に迷い込み、西湖に沈みよると噂んなっちょる。」


「刑事さんもこの辺で辞めときんしゃい。」


「刑事さん?いつから分かってたんですか?やはり前に来た事を覚えていたんですか?」「何の事です?」


「前に診察に来ちょった時、神藤先生が皆にそうおっしゃっちょった。」


「神藤先生って前田さんところの茜さんのご主人ですよね!」


「そうじゃ!東京の偉い先生が忙しい中、わざわざ来て下さっちょる。」


「いつ頃からですか?」


「もう10年くれーになろうか!ここ最近5年前くれーからは毎月来ちょる。」


「あんまし、人の話を言わん方がいい!」と若菜がいつの間にか後ろに立った聞いていたのだろう。 


テーブルの上の皿やコップを片付けながら


「丈さん!起きて!ここで寝ないの!帰るよ!」と言うと寝ぼけながら起き上がり


「もう朝か!ふぁ〜はぁ〜!秋ちゃんは寝てるの!仕事に行かないと〜。ふぁ〜はぁ〜!」


「丈さん!明日は休みですよ!ここは豊子婆ちゃん家だから帰りましょ!ハイハイ!起きて起きて下さい!」


「よっこいしょっ!」と立ち上がりキョトンとこっちを見ている。 


「スーさん!どうしてここにおるん?」


「豊子婆ちゃん!ごちそうさま!斉藤さん、またそのうち!おやすみなさい!」と玄関ドアを開けて外に出た。


「恵子さんに報告せんでええんのかの。若菜さん!」 


「関わらない方がいいんですよ!もうこれ以上!」


「前田様に逆らって、この地で生きて行けやしない!あの事件の時だって!」と恵子さんが前田様の代わりにお墓の管理として村の人たちを集会場に集め1人1人を回り口止めをしてまわり、不可解な事件も終息を迎えたと話は続いた。


この後、豊子婆ちゃんや斉藤さんや若菜さんの血縁関係を調べた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る