第2話 爆音響かせ黒の集団!激闘開始‼

 その地鳴りの様な音は徐々に重なる爆音となり集まって来ている様になって来た。


まるで蜂の大群の羽音の様に大分近くまで低音を響かせて来ていた。


その爆音と共に微かに黒い塊が見え始めて来た。


「ヴァンバァンヴァンバァンヴァーン」

「ヴァンバァンヴァンバァンヴァーン」

「ヴァンバァンヴァンバァンヴァーン」


大型のバイクに黒い革ジャンと黒い革パンツに黒ブーツ 、みんな黒のヘルメットで手袋まで黒の真っ黒い集団があっという間に公園の周りを囲み道路を占領した。


公園内の小さな子供を連れた母親達は慌てて避難して行った。


そこに意気がった学制服の高校生が3人近づいて来た 。


「オッさん達!うるさいんすよ!」


2人目が「皆さんお揃いの革ジャンで!今時流行んないすよ!」


後ろから三下格が「臭い!臭い!動物臭がしない?」


「誰かファブリーズ持ってない!ワッハッハ!ワッハッハ!」


「パッチン!」


誰かがクリッカーを響かせた!


大柄な1人がバイクから降りて着てその学生の前に立ち塞がった。


フルフェイスのヘルメットから口の部分が入りきれない2m位はあるのではないかと思うその男を学生は下から覗き込む様に睨み付け、次の瞬間サイドステップ1歩。


左足で飛び上がり横1回転で公園入口の鉄ポールに軽くピョンと左足1本、つま先立ちで飛び乗った。


「龍二!カッチョイイー!」


「パチ!パチ!パチ!」


町野だ!


オヤジが知ってる高校生なのか?


その制服を着た学生がピースサインで返事を返した。 


「何処見てんだうぉ!よそ見ひてんじゃぁねーぞぅっ!」とヘビー級の右ロングフックが顔面を捉えたかの様に見えた。


吹っ飛ばされた様に見えたが宙返りして体をひねり、隣の鉄ポールに左足つま先で飛び移った。


「おっとっと!・・・あっぶねぇー!思ったより俊敏じゃん!」


「次は逃げられないよ!」と蝶の様に舞い!蜂の様に刺す !モハメドアリの様な軽いステップでデモンストレーションを始めた。


ジャブを打ちながら距離を測り右ストレートが打たれた・・・・・


龍二は飛び上がりヘルメットの真上部分に右手を添えて、もう1回軽く跳ね上がるとその男の膝の裏に膝蹴りを入れ、地面に膝を付かせ後ろに倒れるのを抑える両腕の脇からワンステップで再び飛び付き、脚を差し込み固定すると身動きが取れなくなったところで背中に張り付き左腕を首に回し頸動脈を締め上げた。


時間にすると30秒と立たない出来事で大男は白眼を剥き締め落とされた。


ゆっくりと仰向けで寝かせヘルメットを外すと首筋の脈を確認した。


周りの者達も口をぽかっ―とあけたまま、あっけに取られていた。


「プィッピィープィッ!」指笛が吹かれ、また「パチパチパチ!」と町野だ!   


と言う事は黒のチームが俺たちの敵で、あの学生達が味方なのか?


「パッチン!」と今度は町野がクリッカーを鳴らした。


龍二はチラッと町野を見て後方の少し長めに髪を伸ばした仲間の1人とハイタッチをし、後ろに下がった。


黒い集団の後方から頭を下げてヘルメットを脱ぎ顔を上げるタイミングで真っ黒のサングラスを掛けリーゼントの髪をクシで整えた後、リーダーらしき1人が何かサインを送った 。


「ビリー!」

「Crush them(叩き潰せ)!」


先程の男よりは小さいが180cmはある奴が前に出て来た 。

革ジャンのチャックを下ろしヘルメットを外すと黒光りした肌に筋肉質の体にドレッドヘヤーの黒人だ!


「OK BOSS!」と高速のサイドステップで次にバトンタッチした奴の正面に立ちはだかった。


「京!そいつ速いゾ!気をつけろ!」と龍二からのアドバイスを受けうなずいた後、学ランを脱ぎ白い長袖のシャツがパンパンに見えるパンプアップされた上半身が透けてみえる。


ビリーは円を書く様に右にステップしスピードを早めて回り続けた。


やはりボクサーなのかガードが高い。

それと対象的に眼光鋭く下から飛び掛かられる雄猿の様に低い姿勢で動いている。


一瞬サウドステップの回転が止まり 、京と言われる方が前に手を伸ばし掴みかかった。


それを軽く左へかわし、今度は左へステップし回転し始めた。


間合いが少しだが縮まって見えた 。


ビリーの距離だろう。

ジャブの様に左腕を伸ばし始めた。


京も右に回りながらそれに合わせるかの様にバックステップしながら左腕を前に右手を顔の前でガードした。


2人とも3分以上は動きまわっている。


内側に居る京と言う学生は身体中から汗が吹き出して背中側のシャツに張り付き肌が写っている。


一方のビリーは流れる程の汗はかいていない。


京は頭から流れ落ちる汗を左手でぬぐった瞬間、ビリーの半歩踏み込んだ左ジャブが顔面を射抜いたと思った時、それをすり抜け低空タックルで前にある左膝へ掴みかかった。


一瞬で京は2m程後方へ吹っ飛ばされ倒れ、意識を無くしていた 。


「誘いに乗った京の負けだ!」

町野は急いで京に近づき口を開けさせ、呼吸を確認。


体を起こし背中に手刀を突き立てた。

目を開けたが意識が盲ろうとしている。


「あの低い姿勢と上半身の隆起した筋肉とあの擦り込まれた耳を見たらレスリング選手と分かった上でビリーは低空タックルを誘ったのだ。


半歩踏み込み、即座に一歩右足を引きドスンと膝を突き立てた。結果がこの状態。」と「学生相手にあまりにもマジになり過ぎだろ!」 


後ろから「オッサンは引っ込んでろよ!」


3番手で準備していた少年が前に出てくるとすかさず「シュッ!」と足元をすくわれ、顔面ギリギリで脚の甲が止まっていた。


見事な水面蹴りからのペナルティーキックをギリで止めた。

一瞬にして勝負ありだ!

「町野のオヤジ!なかなかやるじゃねーか!」


「ビリー!カモォーン!」と右手の指先で誘いを掛けた。 


「OK!MASTER !」と先程と同じ様にビリーは円を書く様に右にステップしスピードを早めて回り続けた。


町野は剣道の中段の構えの様に右手を前に左手を少し下げ、直立不動に近い構えで正対している。


ビリーは幾つかのフェイントを繰り出しながら相手の出方を伺っているのだろう。


対する町野は時が止まったかの様に全く動きを見せない。


先程と同じ様に左回りに切り替えて来たビリーに対して一歩下がって左手足を前に構え直した町野は拳を軽く握って第2関節まで折り曲げた形に戻した。


ビリーは左ジャブで距離を図るが届かないと分かると長い足を使い左のローキックを左足の内側へ当て始めた。


それに合わせる様に痛んだ左足でビリーの右膝へ踵を当てて行き、届かない左ジャブ気味のパンチをことごとく右肘でガードされていた。


明らかに町野にはダメージが見えて来た。


左足の内側へのローが効いている為ビリーのスピードに遅れ始め、体勢もいつの間にか前傾姿勢になって来ている。


次の瞬間、瞬きとともに最後の一撃が来た。


逃げられなかった。


右のハイキックが町野の左側頭部に綺麗に入った。


その場で倒れ込む町野を背に、十字をきり「Jesus Christ !(ジーザス・クライスト)神よ!信じられない事が起きた。

May God protect you!あなたに神のご加護がありますように。」と両手を組んだ。


「・・・ま・だ・・・終わりじゃない…!」と顔を上げ左腕で立ち上がって来た。


「オッサン!よくやったよ!やめておけよ!俺がやる!」と龍二が前に出て来た。


「止まれ!龍二!横取りするな!」と激しい口調で一喝し、右膝に手を付き立ち上がって身体についた汚れをパンパンとはたき落とした。


「ビリー!入りが浅いよ!ここに!この角度で膝蹴りの様に!後は腰を回転させ!弓なりにしならせたつま先までが一気に突き刺さる。」


「やってみるぞ!こうだ!」


一瞬、風が吹いた!


「この時のガードはこうだ!」と左ヒジを外側に開き、右手の甲を外向きに縦に左側頭部から首に掛けてをガードする。


その時、右肘は正面から右側の頭部をガードしていた。


戦闘体勢で

「OK !Understand!MASTER!」と再びビリーは円を書く様に右にステップしスピードを早めて回り続けた町野も中段の構え直立不動にて正対した。


瞬時に町野が右ハイキックを仕掛けるフェイントを入れ始めた。


がフェイクだからヒットしない。


それとは対象的にビリーの右ボディーフックが数発入っている。


サウスポースタイルは相手の出方をみるためなのだろう。


左にまた回り始めたビリーに合せまた一歩下がって左手足を前に構え直し町野は拳を軽く握って第2関節まで折り曲げた形に戻した 。


ビリーは左ジャブで距離を図り長い足を使い左のローキックを左足の痛んでいる内側に当て動きを止めに来た。


それでも町野は意地を張り続けるかの様に痛んだ左足でビリーの右膝へ踵を当て続けた。


ついにバランスを崩して前のめりになった町野は胴体タックル気味に掴みかかろうとした。


あの時の京と同じ形にそのまま膝が飛んでくる!

一瞬、町野のカラダが浮き上がった様に見えた。


2人は絡れ合う様に体が回転し、どちらかの右裏拳が側頭部にめり込んだ 。 


2人は絡まりながら倒れこんだ。


ビリーが膝を付き立ち上がろうとした。


「オッサンもよくやったよ!もう起き上がるな!」と思った時、ビリーが立ち上がって顔を上げた。


左頬がコブの様に腫れ上がり白目を向き動きが止まった。


ビリーは塞いだ口元から鮮血を吐き出し倒れ込んだ。


「オットっと!」と倒れ込むビリーの脇から腕を差し込む様に支えながら町野が立ち上がった。


「フゥー!」と一息をついて近づいて来た黒尽くめの仲間にビリーの体を渡した。


人を分けながら前に出て来たリーゼントのサングラスが町野の前に立った。


サングラスを外し険しい眼つきで一瞬睨み付けた。


「ガクッ!」バランスを崩し痛めた左膝が崩れかけた時、腕が伸びて来て、その男が町野を支え口を開いた。


「公平さん!あんたも歳を取りましたね!でも相変わらず強いや。」


「和也!お前らおっせーんだよ!・・集合掛けたら・・・10分で来いよな!」


「あいつら!・・・また集合場所間違ってんじゃねーだろうなって!」


「少しイラついてたらビリーのヤローが中途半端なハイキックなんか出すから!

また、イラッと来ていい奴一発入っちゃったよ!わり〜な !ビリー!」

「でも、あいつ身体しあがってんなー!背もだいぶ伸びたしな!」


「公平さん!あんたあの闘いの後なのに、よく喋るな!」


「あ!何だ!懐かしいな!和也!な!」

 

 

 「地元では有名な旧家で村はもちろんだが町の会社や市内の大手の企業は全てこの前田家一族の長!前田喜兵衛の息が掛かっている。この土地で前田に逆らっては生きて行けないのである。なんてな!」


「公平さん!この手の噂話は他にも効いた事があるけど、全て都市伝説的で今回の事件と何が関係しているのかはまだよく分からないよ!」


「和也!慌てるな!まだその話はこの後だ。それより、お前達全員そのサングラスと革ジャン何とかならないか?」

「他のお客さんみんな帰っちゃったよ!ただでさえ駐車場もあの柄の悪い単車が並んでるんだぜ!」


「いいじゃねぇか!オッサン!貸切!満員御礼だろ!」と龍二が言うと


「ガキはマナーを知らないから社会生活に適合出来ないんだよ!公平さん…!こいつら!龍二って言うガキ達何者だよ!」


「お前らこそ何なんだよ!真っ黒で熱苦しい!」


「何だと!このクソガキ!表に出ろ!タイマンだ!」


「やれんのかー!」 


「お前!誰に向かって言ってんだぁ!コラぁ〜」


「バァンッ!」と和也がテーブルを激しく叩いた。


奥から店員が慌てて駆け寄って来た。


「申し訳ありません。お客様!他のお客様もいらっしゃいますので、少しだけ声のボリュームを下げて頂けませんでしょうか?」 


ネームプレートを見た龍二が

「店長!新井!さん!他のお客はいないだろ!さっさとオーダー取れや!こっちはずっ〜と待ってんだよ!」


店長はその場で震えながら立ち尽くしていた。


「龍二!お前は黙ってろ!」と町野は立ち上がり足を引きずりながら前に出て来た。


そして店長の前に立ち顔をしかめながらテーブルに手を掛けて膝を付き、土下座をした。


「大変、申し訳ありません。」と謝罪をしたのだ。


そして

「大声を出すな!」

「革ジャンとサングラスを外せ!」

「喧嘩をするな!」と一喝した。


各自革ジャンを脱ぎ、サングラスを外しテーブルに座った。


店長と龍二達がクスクスと笑いをこらえながら肩を揺すっていた。


町野だけが「ワッハッハッハァッ!ワッハッハッハァッ!」と腹を抱え笑い出した。


「お前ら、みんななんて格好してんだよ!腹痛てぇっ!」


「町野さん!そりゃないっすよ!」


「こいつら!みんな、あんたが10分で集合なんて言うから無理して仕事抜け出して速攻で来たんだよ。」


「すまん!すまん!本当にすまない!笑ったりして!」


「でも鉄也が板前か?」 


「ハイッ!寿司膳修行中です。総長!」


「岳夫お前、床屋・・・実家継いだのか?」


「ハイッ!その通りです。総長!」


「順平エプロン!スーパー梅田?」


「ハイッ!店長っす。総長!」


「弘志分かったパチンコ屋だろ?」


「ハイッ!当たりです。総長!」


「その他のみんなも郵便屋・そば屋・ピザ屋・酒屋お前ら走ってるな毎日!」


「ハイッ!みんなカブですけど。総長!」


「ジャイは相変わらずデカイな!」


「ファイッ!引越しのバァイトゥっす 。総長!」


「ビリー!裏拳と肘!まともに入っちゃってごめんな!今も高校English Teacherか?」 


「Yes!and Japan Middle weight class ranks second !Master!」


「公平さん!ビリーの奴、来月日本タイトル戦があるんです。だからあんたに会って身体のキレを確かめたいって効かなかったんだよ」


「お前ら知ってたら止めろよ!」


「誰が止められるんでますか?」


みんなうなづき

「伝説の初代ブラックエンペラー総長「町野公平」別名「爆弾」の事を!


「元気にしてたか!みんな!」


「ハイ!」


「今日は俺の急な集合にこんなに集まってくれてありがとう!」

「承知の通り俺がいつも無理を言う時は決まってこいつに連絡をする。

初代ダークナイト総長 2代目ブラックエンペラー総長 現、警察庁足立交通機動隊、隊長 別名「稲妻」藤井和也だ!」


「和也からの集合連絡で、訳も分からずこんなに来てくれて本当に嬉しく思っている。

そして今から話す事はみんなもニュースで知っていると思うが「怪盗ゾロ女性連続殺人事件絡みの真相を追っている。」


「公平さん!その事件ならもう3ヶ月前に40代のフリーターが逮捕されて解決していますよ!」 


「和也!お前でさえ、40代フリーターまでの情報しか知らされていない?

あんなに大々的に報じられニュースも1年近く繰り返された事件だぞ!

おかしいと思わないか?

それにだ!

未だに少女や20代女性の行方不明者が続いついる。」


「それも含めて報道規制が惹かれている。

後は公安警察の活動がテロなみの体制で動き回っている。」


「今日もさっきまで俺たちを追っていた。あの公園にもだ!」


「だから、大げさに暴れてもらった。」

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