第18話 VRやってみよか



しまった、すっかり寝ててもた。


起きたらベッドの中。


そこでふと、思う。

あれ?寝てたのにベッド居る...?


途端にその可能性を思いつき、

顔が爆発しそうな位

赤くなってるのを自覚する。


ハルくんか晴美ちゃんか結衣ちゃんに

運ばれた可能性があるって事や。


は、恥ずかしい...! 


なんでぇよ...

起こしてくれたらよかったんに...


いや、

寝ぼけながらベッドについた可能性もある!


とはいえ寝ぼけてたんやったら、

着てた靴下を洗濯カゴに入れたり

上着を畳んだりすることはまず不可能や...


二段ベッドの下を覗けば、美幸が眠っとる。


少し安堵すると、時刻を確認。


「もう朝やなぁ、ご飯作ろっか」


乱れた髪を整え、エプロンをつける。


ぺたぺたとキッチンに向かい、

冷蔵庫から卵から何から食材を取り出し

フライパンを置いたコンロに火をつける。


ボウルに卵を溶き、その横で

牛乳や酒、砂糖、塩胡椒、醤油等の調味料を

取り出す。


にんじん、ピーマンと玉ねぎを取り出して

微塵切りにする。


ウインナーを焼き、先に皿に入れる。


その後ににんじん、ピーマンを投入して、

ウスターソースとケチャップで炒める。


軽く火を通して玉ねぎも入れる。


さっき取り出した調味料達を適量入れ、

完成したオムレツの中身の部分を一旦除ける。


溶いた卵をフライパンに注ぎ、満遍なく広げる。


ある程度形が整ったら、

さっき除けた具を卵の上に置いて、包む。


皿へ逆さに置けば、オムレツの完成。


食パンをトーストして、バターを添えれば

朝食の完成やね。


メニューはパン、オムレツ、ウインナー、

ポタージュってとこか。

ポタージュはレトルトで堪忍やな。


簡単なもんやけど、まぁええやろ。







「美幸〜」


部屋のドアを開けると、

丁度美幸はむくりと起き上がる所やった。


「自分で起きれとるやん。偉いなぁ」


「ん、おはよぅ」


「おはよ。さ、朝ごはんできたあるで。

 顔洗ってき」


「はぁ〜い...ふぁぁ」





「「いただきます」」


もぐもぐ。うん、中々良い出来やな。


「にぃに、美味しー」


「そっか、そらよかったわ」


食べ終えたら、食器を軽く紙で拭いて水で流し

食洗機に入れる。


カスとか取っとかんと

排水管つまってまうからな。


今日はハルくんに勧められた

VRゴーグルを使って動画撮るつもり。


「美幸、兄ちゃん仕事するけど一階で

 ゆっくりしててな」


「はーい」


今日やるソフトはホラゲ。

しかもVRゴーグルでさらに怖くなるとか。


はー、ホラー苦手やしな...


ものっそいやりたないけど

その分リアクションはとれる。


はぁ、やってこよ。




アバターにはVRゴーグルの

デザインを装着させる。


他にカメラや諸々の用意を済ませて、

立ち上がる。


手元のコントローラーで足は操るけど

VRやし危ないかなってことで立っとる。


マイクは近くに寄せてるけど。


「こんにちは、マユキです。今日は...

 ものすっごいやりたないんやけど...


 ホラゲ、をVRでやっていこうと思うよ。


 HOW TO DIEってやつやね。


 あー、ややぁぁ...やりたくない...


 因みに、ハルくんに勧められたので

 ちゃんとやります」


既に画面には最初の画面が現れとる。


「はー、ここだけでも超怖いんやけど

 ...助けて皆...」


スタートボタンを泣きそうになりながら押す。


途端に、

画面にこっっっわい血塗れの顔が張り付く。


ゲームスタートの文字が出てくるとともに、

動くことができる様になる。


「ん?でも、結構明るいしそんなに...?」


と疑問を持ちつつゲームを進める。

...



チュートリアルミッション最後の、

「お寺にある岩のお札を剥がす」というやつ。


「絶対やばいやつやんか!?途中脅かしあって

 画質が綺麗やから超怖いのにぃ...!!

 絶対これ原因でなんか始まるやろ!!」


けほっけほっと軽く咳き込みながら


渋々ゲームが進まないのでお札を剥がした、

その瞬間。


街が夜に包まれ、

一斉に虚空から現れた充血した目が覗く。


「ぃぃぃ...!!!もぅ...こわいって...!!

 なんやの...!」


もう泣いてる気がする。怖すぎてわからん。


急いで逃げようとするも周りを取り囲む目には

隙間がない。


その中でも一際大きい目の瞳が

そこだけくり抜かれた様に

失われていることに気づく。


その目は周りの目を取り込み

どんどん大きくなっていった。


大きい目の瞳の中に引きずり込まれていく。

抵抗するも、無駄やった。


「瞳の中、こわぁぁあ!」


瞳の中はトンネルの様になっとって、

そのトンネルらしきものの肉壁には、

夥しい数の目がついとった。


「うぁあぁあぁーーー」


そこからはもうぐだぐだやった。


物音がするだけでビクッとしたり

美幸の足音に悲鳴あげたり...


ようやく第一部を終えて、動画を締め括る。







「くっ、ちょっと恨むでハルくん...

 なんてもんやらさすねん」


まぁ、それはおいおいにして...

編集しやなあかんな。


俺と同じ動きやったマユキを画面の端に置いて、

カットやテロップを入れていく。


悲鳴とか涙声とか、消そうかなと

よっぽど思ったけど…


それしたらヤラセっぽいかなとか

受けへんかなとか

思ったんでそのまま載せた。


「ハルくんの阿保ーー!」

と叫んだ所も入れてある。


てへっ。

...自分でやってて寒気したわ。


せや、もう俺のチャンネルて34万人位

チャンネル登録者数居るねんな。


収益化とかいけるんちゃうんかな?


広告収入とか、

スパチャ...所謂投げ銭ライブとか。

今度調べてみよ。


まぁ、今後もVRは利用するやろうし

#VR でもつけとこ。


午後は配信やな。

告知は昨日店行く前にやった。


雑談枠で、コメントで愚痴聞いたり

喋ったり。普通に楽しそうやな〜って思てる。


土曜日やし、

人は結構くるんとちゃうやろうか。


楽しみやな。

喉薬をさして、引き続き編集作業する。


時間があるなら撮り溜めしとけばもしもの時

助かりそうやからなぁ。


因みに昨日、焼肉の時にこんな投稿したんや。


#灰白マユキ #オフ #焼肉 #甘鶴ハルキ 

#ハルくん

つ写真

今、ハルくんと友達と焼肉来てるねん。

皆が沢山見てくれてるお祝いなんよ。

つまり、皆のおかげ...ってことやね。

ありがと、皆。これからも、見てな?



はぁ、はずかし。


編集作業を続ける。


明日はVでもできそうなネタ探しに繰り出そうか。

まぁ電気量販店に行こかってことやね。





キャラクターファイル

No.21 杉本 杏

女性 12歳 杉本財閥の養子

紀郎が、跡継ぎをと迫られ養子を取った子。

しかし紀郎は蓮のことは諦めておらず、

未だ探している。

紀郎に親子としての愛情は注がれているし、

杏も紀郎に懐いてはいる。が、

紀郎が口から常々漏らす「兄」の存在に

嫉妬している。

親は過去に事故死している。

勉強は好きでも嫌いでもない。

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